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27週で558gの赤ちゃんを出産。小さすぎて泣かないと言われていたわが子から「ふにゃ」と産声が…思わず涙があふれた【体験談・医師監修】

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島根県に住む小林祥子さん(34才・会社員)は、夫の照聖さん(33才・会社員)、時生(ときお)くん(2才)、樹生(いつき)くん(8カ月)の4人家族。次男の樹生くんは、2021年11月2日(妊娠27週)に558gで生まれました。
妊娠24週のころから、羊水がたりなくなってしまった羊水過少症のために、人工羊水注入の処置を行ったそうです。出産のときのことについて、祥子さんに詳しく聞きました。
(上の写真は生後12日、パパの照聖さんと樹生くんが手を初めてつないだときのものです)

羊水がたりず24週で急きょ入院。私のせい…?と自分を責めた

――妊娠中の経過について教えてください。いつごろに体調の変化があったのでしょうか?

祥子さん(以下敬称略) 長男の時生は予定日の2日前の夕方に陣痛が来て日が変わる前に出産、とかなり安産だったので、2人目も早いかもよ、とは言われていました。樹生の妊娠中は、つわりがひどくて6kgくらい体重が落ちてしまったり、体調が安定せず出勤日数を減らしてもらったりしましたが、それ以外は、妊婦健診でも赤ちゃんは順調に育っていると言われ、おなかの中でとってもよく動く子だったので安心していたんです。
ところが、24週の妊婦健診で「羊水が少なくなっていて赤ちゃんが小さいのですぐに大きい病院に行ってほしい」と言われました。翌日、島根大学医学部附属病院を受診するとそのまますぐに入院となりました。

――島根大学医学部附属病院では医師からどのような説明がありましたか?

祥子 先生からは、赤ちゃんは推定400gでかなり小さいこと、今生まれると予後が厳しいこと、おなかの羊水が少なく、このままだと赤ちゃんはどんどん元気がなくなってしまうことなどを説明されました。「いつ産むのがいいか、タイミングの判断は慎重にしたほうがいい。そのためにも今なぜ羊水が少なくて赤ちゃんが小さいのか原因を調べたい」と言われました。

聞きなれない内容ばかりでそのときはわからないことも多かったですが、先生はとてもていねいに説明してくれました。その中で『予後が厳しい』『産む判断は慎重にしたほうがいい』という言葉が心に重く響き、今起こっていることが現実なのかわからない状態の中で、ただ赤ちゃんの命が危ないということははっきりわかりました。
私の体重が落ちたことや、体調が安定しなかったことがいけなかったんだろうか…という思いから、一気に涙があふれ、「私のせいですか?」と先生に問いかけていました。先生は「お母さんのせいではないです」と言ってくれました。

赤ちゃんの状態については、羊水が少ないためにエコーがとても見えづらく、診断が難しかったようです。腎臓は見えるが機能しているかわからない、先天性異常の可能性もあるが断定しきれない、ということでした。

――照聖さんにはどのように説明したのでしょうか?

祥子 コロナ禍で入院中は家族とはいっさい面会ができなかったので、その日の夜に先生と私と夫で携帯電話をスピーカーホンにして3人で話しました。そのとき、赤ちゃんと私の状態の説明と合わせ、先生が人工羊水注入の提案をしてくれました。
羊水がないまま待つと、赤ちゃんの体が拘縮(こうしゅく:関節が動きにくくなる)してしまい、肺も育たないし、どんどん元気がなくなってしまうので、羊水を子宮に注入する方法をしてみてはどうかと説明がありました。

人工羊水注入の治療は日本ではまだ十分に根拠が認められておらず、島根大学ではまだ経験がないけれど、子宮に針を刺す羊水穿刺(せんし)という処置はよく行うことで、難しいことではないそうです。日本では岐阜など何カ所か羊水注入をやっている病院があるから、転院して治療するか島根大学でするか考えてほしいということ、もし転院するならその日に決めて、翌日の朝には向かってほしいという話をしてくれました。

――照聖さんと2人で相談して、どのように決断したのでしょうか。

祥子 その後2人だけで電話で話し合い、赤ちゃんのために羊水を入れたい、1日でも長く私のおなかで大きく育ってほしいと、すぐに決まりました。重くのしかかっていた現実に、光が見えた感じがして、ありがたかったです。この先生の判断が、樹生の命をつないでくれたと今も感謝しています。

4回の羊水注入を行い、2週間後の妊娠27週に出産

――入院中の祥子さんの状態、おなかの赤ちゃんの状態はどんな様子だったか教えてください。

祥子 出産まではMFICU(母体胎児集中治療室)で24時間管理体制の元での入院でした。毎日採血や体温測定、エコー、朝昼晩のモニターで赤ちゃんの様子を確認しました。
私のおなかが張ると、ただでさえ羊水が少なく狭い空間がさらに圧迫されて心拍が落ちるため、張り止めの点滴をしていました。それにくわえ、赤ちゃんの肺機能の成長を進める注射や、頭を守る点滴をしてくれました。基本的には寝たきりの生活を送り、毎日毎日「1日でも長くおなかにいてくれますように」祈ることしかできませんでした。コロナ禍で面会禁止で家族にも会えずさびしかったですが、夫と上の子と朝・晩にビデオ通話をしていました。

――人工羊水注入についてはどのように行ったか教えてください。

祥子 妊娠中期以降の羊水の成分のほとんどは赤ちゃんのおしっこということで、その羊水を赤ちゃんが飲んで、またおしっこをして羊水の量が保たれるらしいんですが、私の場合は何らかの事情で羊水が減っていってしまったらしいです。入院してから2週間で合計4回、人工羊水の注入を行いました。人工羊水は点滴のような袋に入っていて、1回240〜250ミリリットルずつ、合計1000ミリリットルを入れました。
腹部エコーで羊水が入りそうなスペースを慎重に探し、場所が決まったら局所麻酔をして針を刺します。見ていなかったのでどれくらいの長さの針かはわかりませんが、おそらく子宮に刺さるときにはぐっと押されるような痛みがありました。

赤ちゃんのへその緒に針が当たると容体が悪くなってしまうらしく、注入中は、赤ちゃんが動いて針がへその緒に当たってしまうんじゃないかとひやひやし、気が気ではありませんでした。不安で泣きそうになったけれど、泣いたらおなかが張ってしまうし、おなかが張ると赤ちゃんが苦しくなってしまうので必死でがまんしました。おなかが張りそうになったら、なるべく大きく深呼吸をしてリラックスするようにしていました。


――帝王切開での出産が決まったのはいつごろですか?

祥子 3回目の羊水注入の3日後(11月1日)です。朝のエコーで羊水がほぼなくなっているため、このままおなかにいて腎機能が落ちるよりは、おなかの外で育ててあげたほうがいいのでは、と先生から提案されました。翌日にでも帝王切開をする提案をされ、それに向けてもう一度羊水を注入することに。このとき赤ちゃんの推定体重は500gでした。
入院中の2週間で何度も心拍が落ちることがあり、次に赤ちゃんの心拍が落ちたときに緊急帝王切開となるよりは、病院側の準備が万端の状態で予定帝王切開で産んであげたほうがいいのでは、という話があり、私も夫もそれがベストだと思い、出産の日を決めました。

小さすぎて産声は上がらないかも、と言われていたけれど、「ふにゃ」と

生まれた直後の樹生くんの様子

――帝王切開手術をして、樹生くんが生まれたときの様子はどうでしたか?

祥子 手術台に上がると、これがベストな方法だと決めたはずなのに、「おなかで育ててあげられなくてごめんね」という思いで涙が止まりませんでした。そんな中、部分麻酔をかけられ、あっという間に赤ちゃんが生まれました。先生たちが「今、ふにゃって泣いたの聞こえた??」と興奮気味に教えてくれました。残念ながら私には聞こえなかったんですが、泣かないだろうと言われていた赤ちゃんが産声を上げたと聞いて、また涙があふれました。

保育器に入ってNICU(新生児集中治療室)へ運ばれていくとき、スタッフの方が赤ちゃんを私の横まで連れてきてくれ、1.5メートルくらいの距離があって少し遠かったけど、かわいい姿をしっかり見ることができました。小さいけどちゃんと生まれてくれ、力強く生きている姿に感動しました。長男が生まれたときにそっくりな赤ちゃん。「ママのところに来てくれてありがとう」という気持ちでまた涙が出ました。

――名前にはどんな意味を込めましたか?

祥子 名前は樹木のようにすくすく成長し、長く健康で生きてほしいという願いを込め、樹生(いつき) と名づけました。
私が産後7日で退院したあとは、コロナ禍のため、面会は週1回15分だけと、リモート面会が週2回15分ずつに制限され、なかなかそばにいてあげられないのはさびしかったです。けれど、私たちがそばにいられないぶん、樹生はNICUとGCU(新生児回復室)でスタッフの皆さんに愛情たっぷりに育ててもらいました。

生後5カ月で無事退院し、今、樹生は生後8カ月。今も在宅酸素などの医療ケアは必要ですが、ずっと樹生と一緒にいられることがうれしすぎて、毎日幸せを感じています。

【島根大学産科婦人科 皆本先生より】重度の羊水過少症。人工羊水注入で妊娠期間を延ばすことができた

生後5カ月のとき、自宅で撮影したニューボーンフォト

来院されたときはかなり重度の羊水過少症と、推定体重は407gの胎児発育不全を発症しておられ、血流障害もありました。羊水注入は医学的な根拠も十分とは言えませんでしたが、最低26週、できれば28週、そして体重は500gあれば少しは予後がよくなるのではないかと考えました。原医師、野々村医師とともに治療を行いました。幸い治療がうまくいって少しは妊娠期間や体重を伸ばすことができました。小林さんは心細いだけでなくコロナで面会もできない入院生活でしたが一生懸命笑顔で私たちに接してくださいましたし、精神的にもつらい中、本当によく頑張られました。お父さんもお電話で支えていらっしゃったから、この2人のところで生まれたい! と樹生くんも頑張ったのかもしれません。赤ちゃんを守ろうとしているお母さんと生きて生まれて来ようと必死に頑張ってくれた樹生くんの2人の頑張りに私たちも助けていただいて一緒に治療をすることができました。




お話・写真提供/小林祥子さん 監修/皆本敏子先生 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

人工羊水注入はまだ日本で十分に根拠が認められていないものの、その選択によって助かった樹生くんの命。「たくさんの方々に見守られ、愛されてここまで育ってきた樹生は幸せです」と祥子さんは言います。


●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

皆本敏子先生(みなもととしこ)

PROFILE
島根医科大学医学部医学科卒業。島根大学医学部大学院単位取得退学。県内、関西などの産婦人科で勤務ののち、2015年より島根大学医学部産科婦人科学教室 助教、2021年より講師を務める。周産期専門医指導医、産婦人科指導医。

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