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近年増えている、帝王切開でのお産。帝王切開で使う麻酔ってどんなもの?【麻酔科医に聞く】

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妊娠と出産
blueshot/gettyimages

帝王切開はおなかと子宮を切開して赤ちゃんを取り出す手術。そこには必ず「麻酔」が伴います。帝王切開で使う麻酔はどのようなものなのか、麻酔をしたらママの体はどうなるのか、赤ちゃんへの影響は? 気になることを、産科麻酔を専門としている麻酔科医の先生に聞きました。

帝王切開で用いられる麻酔の方法は、どんなもの?

帝王切開での麻酔の方法は、大きく分けて「局所麻酔」と「全身麻酔」の2種類があります。

「局所麻酔」には、「脊髄くも膜下麻酔」または硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔を併用した「硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔」が行われます。硬膜外麻酔とは、無痛分娩にも使われる麻酔のやり方で、背中から、硬膜の外にカテーテルと呼ばれる管を入れて麻酔薬を注入します。脊髄くも膜下麻酔とは、硬膜の中に直接、麻酔薬を注入する方法で、より早く麻酔の効果が得られます。カテーテルを挿入するのではなく、痛み止めの注射のように1回だけ投与します。「硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔」は、硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔を組み合わせて行う麻酔です。

一方、「全身麻酔」は、マスクを顔にあてて酸素を十分に吸ってから、点滴によって麻酔薬を投与します。ママの意識がなくなり眠ったあとすぐに、口から息の通り道に管を入れます。手術は眠っている間に行われるため、ママが目覚めたときには、手術は終わっています。全身麻酔は、赤ちゃんの脈拍が落ちるなど、急いでお産をしなければならない場合や、さまざまな理由で背中から局所麻酔をすることができない場合などに選択されます。

局所麻酔をしたら、体の感覚はどうなる? 痛みは感じるの?

局所麻酔をするときは、ママの体に氷などで触れ、麻酔の効果を判断します。麻酔が効いている部分は、熱さや冷たさがわからなくなるためです。ただ、触ったり押されたりする感覚はわかるため、出産時におなかを引っ張られる感覚や、赤ちゃんを出すときにおなかを押される感覚は、鈍いながらもわかります。帝王切開で麻酔が効く範囲は、胸から下になるため、首や手を動かしたり、話したりすることもできます。

人によってはなんらかの痛みや不快感を訴える場合があります。もし痛みや不快を感じたら、痛み止めを追加するなどして対応できるので、遠慮なく伝えましょう。

局所麻酔で起こる副作用

麻酔を担当する医師は、細心の注意を払って麻酔を行っています。ただ、麻酔の効果とともに、以下のような副作用(期待される効果を得るために起こってしまう他の作用)が起こります。

・低血圧

背中の神経の中には、血圧を調節する神経があります。麻酔をすることによって血管の緊張がとれ、血圧が下がることも。そのため、局所麻酔を行う際は、血圧は注意深くチェックされ、下がった場合は速やかに対応します。

・足の力が入らなくなる

胸から足先までの痛みを感じる神経をブロックすると、同時に足の運動神経もブロックされてしまいます。そのため、足を動かすことができなくなりますが、麻酔が切れれば足の力は元に戻ります。

・尿をしたい感じが弱い、尿が出しにくくなる

背中の神経には、尿意を脳に伝える神経や、尿を出すための神経も含まれています。そのため、麻酔が効き始めると、尿意を感じにくくなったり、尿を出しにくくなったりします。そこで、麻酔の効果が現れてから、尿道に細い管を入れて尿を外に出せるような処置を行います。

これ以外にも、吐きけや頭痛、足のしびれなどが起こる場合があります。これらも適切な処置をすることで治まるので、必ず伝えるようにしてください。

帝王切開後は産後の痛みがひどいって本当?

麻酔が切れたあと、術後48時間くらいは、産後の痛みを強く感じます。一般的に高齢の人よりも若いママのほうが術後の痛みを感じやすいといわれています。我慢せずに定期的に痛み止めを使用しましょう。一般的な外科手術をした患者さんと違って、ママは術後すぐに授乳などの育児が始まります。体を動かしたほうが回復も早いため、しっかり痛みをとっておくことが重要です。なお、産後に使われる痛み止めは、授乳をしても赤ちゃんには影響しないものなので、心配しないでください。

帝王切開について、麻酔科医から妊婦さんに知っておいてほしいこと

だれにでも帝王切開になる可能性はあり、麻酔をされるのは特殊なことではありません。いざというときにあわてないように、妊娠中から帝王切開の知識、麻酔の知識をつけておきましょう。

麻酔科医は産科医や助産師と違って、健診などで妊婦さんと接することはまずなく、対面するのは基本的に帝王切開や無痛分娩のときです。だからといって私たち麻酔科医が遠い存在というわけではありません。帝王切開の手術のとき、私たちは妊婦さんの頭の近くにいます。手術の最中にどんなことがあっても、いつでも話ができる距離にいるのです。不安なことがあったらなんでも尋ねてください。麻酔科医がいない産院であっても、近くにいる医療スタッフをどんどん頼ってください。不安はできるだけ解消しておき、納得できるお産ができるように望んでいます。

監修/日本産科麻酔学会 取材・文/樋口由夏、たまごクラブ編集部

近年、帝王切開でのお産が増えています。妊娠経過が順調で、なんの問題もなかった妊婦さんでも帝王切開になる可能性はあります。ぜひ妊娠中から、パパも一緒に正しい知識をつけておきたいですね。

監修 一般社団法人 日本産科麻酔学会
1961年に妊娠・出産に関わる麻酔の研究会として発足。麻酔科医と産科医と助産師とが力を合わせて,妊婦さんと赤ちゃんを守るため、様々な情報発信も行っている。

松田祐典先生
PROFILE
埼玉医科大学総合医療センター 産科麻酔科 診療部長・准教授、医学博士・日本専門医機構認定麻酔科専門医、日本産科麻酔学会 広報委員長・ツイッター部部長

日向俊輔先生
PROFILE
北里大学病院周産母子成育医療センター産科麻酔部門、医学博士・日本専門医機構認定麻酔科専門医

田辺瀬良美先生
PROFILE
東京都立多摩総合医療センター麻酔科、医学博士・日本専門医機構認定麻酔科専門医

一般社団法人 日本産科麻酔学会

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