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「不妊治療」約33%が経験。不妊治療保険適用の現状を専門家に聞く。「ネットの情報に惑わされないで」などエールの声も続々

更新

女性の健康、生殖器系の概念。
Elena Nechaeva/gettyimages

妊娠中及びお子さんがいる「たまひよ」アプリユーザに「病院で不妊治療をしたことがありますか?」と、質問。すると「はい」が約33%となり、3人に1人が不妊治療経験者とわかりました。お悩みでは「どのタイミングで治療を始めた方がいいのかわからなかった」「病院と相性が合わなかった」などの声が届きました。不妊治療が保険適用となった現状などを含めて、 “行動派産科医”竹内正人先生に聞きました。

病院で不妊治療をしたことがありますか?

治療期間はどのくらいですか?

1年未満は46.9%。一方で2年以上は29.4%。不妊治療を経験した3人にひとりは、治療のために長く通院しているようです。

不妊治療で一番ツラかったこと、悩んだことは何ですか?

1位 治療の効果が出ないとき 53.5%
2位 仕事との両立 18.9%
3位 費用 9.4%
4位 その他 8.7%
5位 自分の体調 4.7%
となり、「その他」には「治療の痛みや辛さ」「友人からの妊娠報告」「終わりが見えないこと」等がありました。

現在不妊治療をしている方、考えている方にアドバイスがあるとすると何と声をかけますか?

アンケートでは費用、時間に関わらず「辛かった」という声が集まりました。
治療中の気持ちの切り替え方や夫とのすれ違いの克服方法など、メンタル面のアドバイスを抜粋して紹介します。
※ペンネームのあとの数字は、不妊治療に要した期間、治療にかかった費用の概算となります。

「ネットを含めて周りの意見はほどほどに」

「アドバイスは正直ありません。不妊治療を開始した当初は、同じような境遇の方の意見などを参考にしていましたが、ひとりひとり環境や体質が違います。自分に合った方法を自分で探し出さないといけない…それもまた試練でした」(やな 2~5年未満 保険適用&適用外あわせて400万円)

「成功した人は『今を楽しんで』とか『気負いしないで』とか、言いますが、ゴールが見えない人にとっては辛いことは辛い。苛立つことも多いです。
そんな中で自分なりにどうしたいか考え、少しずつこなしていくしかない。自分なりにプラスに考えられることが出来れば気持ちは楽になるし、結果もいい方に向くと思います。難しいですが、いかにストレスを排除するかがカギかなと思います」(りんご 半年~1年未満 費用回答は無し)

「不妊治療は長期戦。無理はしない」

「私は治療中、生理がきたらリセットを兼ねてお酒を嗜みました。赤ちゃんのための身体づくりも大事ですが、好きなものをやめるってかなりストレスです。こんなに頑張っているのに!って思ってしまうから。
不妊治療は長期戦です。ネットの情報に惑わされず、身体にいいこと&好きなことをバランスよく取り入れたほうがきっと乗り越えられます」(ゆきにゃん 半年~1年未満 保険適用で約8万円)

「病院が遠く受診のタイミングが頻繁なため、仕事を退職しました。正直辛かったけど、無理はしないほうがいい。心の健康も大切です。今は一番何を大切にしたいのか、何に専念したいのか考えて退職を決意しました」(かんち 2年~5年未満 費用回答無し)

「周りが妊娠しているのに、自分だけ取り残されているような気分になり辛かったです。
なので知りたくない情報は見ない。家族や知り合いからの連絡が辛ければ距離を置いて自分の気持ちを一番に考えて、余計なストレスを溜めないようにしました」(きき 1年~2年未満 保険適外で75万円)

「無理はしないこと。ただ年齢とか残された時間とかを考えると、無理をしてしまうのはとっても良くわかる…でもやっぱり無理はしないでほしい」(momo 1年~2年未満 保険適用外で80万円)

「夫婦でよーーく話し合う」

「期限(年齢)や金額を夫婦で先に決めておくこと。気分転換やご褒美を上手く活用することが大切です」(すけぴっぴ 10年以上 保険適用&適用外あわせて約400万円)

「諦めずに!と言いたいけれど、夫婦でよく話し合うことがとにかく大事。正解やゴールがないからこそ、夫婦で話し合って自分たちなりの正解やゴールを見つけていくことです」(そら 2年~5年未満 保険適用&適用外あわせて200万円以上)

「気持ちがすれ違う夫対策」

「私は持病があり、排卵は薬を飲まないとおきません。いくつかの薬を試しながら仕事との両立も大変で、時間も労力もかけているのに夫からは『今日は疲れているから…』と断られることもあり、本当に苦しかったです。
たまたまインスタで同じような不妊治療をしている方のレポ漫画を見つけ、それを夫と一緒に読み、ようやく私の状況を理解してもらえました」(ぴ 1~2年未満 保険適用で5万円)

「4年ほど治療しました。最初の頃、夫はなかなか結果が出ないことを“自分のせいじゃない”って遠回しに言ってきて。『じゃぁ、私のせい?』って聞くと、そういう訳じゃないってゴニョゴニョ。今思えばそれが一番辛かったなぁ。
先生に相談したら『では夫の精子の検査をしましょうと、僕が言っていると伝えて』と、先生が言ってくださったことをキッカケに、ようやく精子検査を受けてくれました。夫が不妊治療に協力的ではなかったら、担当の先生から言ってもらう方が喧嘩にならないかも」(たらちゃん 2~5年未満 費用の回答なし)

「夫に理解してもらうことが一番大事。本当に夫婦で子どもが欲しいと思わない限り、妻ばかりが空回りして女性側にストレスが溜まることになります。不妊治療を始める際は、必ず夫と一緒に病院へ行きましょう。そこで女性の負担がどれだけ大変かを知ってもらいましょう」(むい 半年以内 費用の回答無し)

不妊治療が保険適用になって約1年、不妊治療を開始するタイミングなどを含めて、竹内正人先生に聞きました。

「不妊治療開始は“1年妊活して、妊娠できなかった”が目安」と、竹内先生

「以前は、『20代~30代前半ならば2年間妊活して妊娠できなかったら検査を』と、言われていました。でも昨今の晩婚化などの事情を考えると、日本産科婦人科学会も推奨している1年間が目安かなぁと感じています。35歳以上は半年でしょうか。

近年、不妊治療を始める女性が増えていると感じます。でも患者さんのお話をよくよく聞くと、性交は排卵期に合わせて月1~2回と言う。医者の立場で言うならば、その回数での自然妊娠は難しいかもしれません。 妊活は週1~2回以上が理想だからです。

以前は、回数を減らして精子を貯めた方がいい、と言われていましたが、最近の研究では回数を増やしたほうが妊娠の確率が高まるとわかっています。ちなみに鮮度が良い精子ほどクオリティが高いのではないか、など、諸説ありますが真意はわかっていません。

現代の若い夫婦はとにかく忙しく、疲れているので週1~2回は難しいようですが、まずは妊活から見直し、それでも半年~1年妊娠しなかったら不妊治療を考えてみましょう」

「保険適用による金銭的メリットの一方で注意点も」と、竹内先生

「不妊治療が保険適用になったことで、金銭面でメリットが出ています。しかし注意すべきは“不妊治療のすべてが保険適用ではない”という点です。

とくに高度な技術を要する治療は、これまで通りに実費です。
また、クリニックによっては時には治療を組み合わせたりしますが、治療法Aは保険適用だけど、組み合わせたい治療法Bは保険適用外、というケースも出てきました。

保険適用が実施されて約1年。保険適用の枠も今後変わっていく可能性もありますので、注視する必要があると思います」

「不妊治療は節目節目で、夫婦で話し合いを」と、竹内先生

「コメントに『不妊治療では夫婦でよく話し合う』と、ありましたが、実はこれが意外と難しいことなのです。

大半が『妊娠できる』と希望を抱いて、クリニックの門戸を叩いているわけで、『妊娠できない』と考えている人はほとんどいません。
アンケートの『一番つらかったこと』が『治療の成果が出ないとき』と、答えている方が多いことも、うなずけます。

せめて治療開始から3ヶ月なり、半年なり、1年なり、“節目、節目に夫婦で話し合う”と、ルールを設けましょう。

辛い時は、受精卵を凍結して治療を少しの間お休みしてもいいし、セカンドオピニオンを考えてもいい。どんなに評判の良いクリニックでも、やはり相性ってありますから。
ときどき『医師に色々相談したいけどできない』と、不満を言う方がいます。最近はメンタルケアの部署を設けているクリニックもありますが、合わないなと感じたら無理せずに転院もありだと思います。

そして終結についての話し合いも大切です。お金も時間もかけたのに、という喪失感があると思いますが、迷ったら立ち止まることも大事なのです」

竹内正人

産科医、医学博士。日本医科大学大学院修了。米国ロマリンダ大学で周産期生物学、日本医科大学大学院で産婦人科学と免疫学を学び、葛飾赤十字産院などに勤務。学生時代から世界諸国を放浪し、JICA(国際協力機構)母子保健専門家として、ベトナム、アルメニア、ニカラグア、パレスチナ、マダガスカル、カンボジアの母子医療にも関わるなど、国や地域、医療の枠を超える“行動派産科医”として活動中。より優しい「生まれる・生きる」をめざし、サポートし、著書・監修書も多数です。

竹内正人監修及び書籍 Amazon 

竹内正人HP takeuchimasato.com

文/和兎 尊美

※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2022年12月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数410人)
※記事の内容は2023年2月の情報で、現在と異なる場合があります。

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