強い薬が飲めない「妊娠中の花粉症」乗り切り方を医師に聞く
妊娠中は、花粉症の症状が悪化しやすい傾向に…。環境省は2023年春の花粉の飛散量について、関東、北陸、中国地方などで過去10年で最も多くなると発表しています。強い薬が飲めない妊娠中だからこそ、早め早めの対策が必要です。花粉症治療のエキスパートである大久保公裕先生にお聞きました。
妊娠中は症状が悪化しがち。でも強い薬はNG
妊娠中は女性ホルモンの分泌量が変化するので、白血球の一種である‟好酸球”が増えるといわれています。‟好酸球”が多いと、アレルギー反応を起こしたり、アレルギー症状が強くなったりするので、花粉症も悪化しやすくなります。
また、妊娠すると循環血液量が増えるので、鼻粘膜が充血したり腫れたりして、鼻が詰まりやすくなることも、症状悪化の一因に。妊娠中は強い薬が使えないので、日常生活でしっかりと対策をとることが重要になります。
外出は、花粉症が多い天気や時間帯を避けて
花粉が飛散する時期は、できるだけ外出を避けたほうが賢明です。とくに、前日が雨だった晴れの日や、南風が強くて気温の高い日は花粉量が多いといわれています。
また、地域差はありますが、11時~15時は花粉飛散の多い時間帯です。
花粉を撃退! 外出時の対策
どうしても外出しなければならないときは、花粉を撃退するアイテムを上手に活用しましょう。
●帽子
つばの広い帽子で頭をすっぽり覆って。髪はコンパクトにまとめて、帽子の中に。
●めがね
フレームと顔にすき間がない花粉症用が、おすすめ。マスクをしてもくもりにくいタイプだと快適。
●マスク
不織布マスクのほうが、ガーゼタイプよりも花粉を通しにくいといわれています。
●メイク
保湿して、しっかりベースメイクをすると、地肌に花粉がつきにくくなります。マスカラは、目のまわりに花粉が付着しやすくなるので、控えたほうが無難。
●服
花粉が付着しにくいのは、綿やポリエステル素材。生地表面がサラサラした上着で花粉をガードして。
家の中に花粉を入れない暮らし方を実践!
花粉対策に役立つ空気清浄機や加湿器などの家電は、置き場所なども考えて効果的に使いましょう。また、掃除・洗濯などの家事も、花粉を寄せつけない工夫が必要です。
空気清浄機を玄関からの動線に
空気清浄機は玄関からリビングに向かう廊下などに置くと、室内に花粉が侵入するのを防ぐことができます。加湿機能つきなら花粉の舞上がりを抑制できるので、より効果的。
寝室に加湿器を。寝る際もひと工夫
室内を加湿すると、花粉が水分を含んで重くなるので、舞上がりが抑制されます。また、鼻粘膜やのどの乾燥を防ぐ効果も期待できます。
洗濯・掃除でも、花粉を撃退!
洗濯物を外に干すと、花粉が付着してしまいます。花粉が飛散する時季は、部屋干しするか、乾燥機を使うのがおすすめです。
掃除機は、排気がきれいなタイプが理想的。掃除機をかけたあとは、水ぶきして床に残っている花粉をしっかり除去しましょう。
気軽に実践できる、花粉症の緩和対策
「帰宅したら、うがい」は基本ですが、症状に合わせて、目洗浄や鼻洗浄も行うと、症状の緩和に役立ちます。
目がかゆいときは目洗浄
目がかゆくなる人は、洗眼用の洗浄薬を使うのもいいでしょう。水道水には塩素が含まれているので、頻繁に水道水で洗うと目の粘膜を傷めることがあります。
鼻炎症状には鼻洗浄
鼻洗浄の方法はいろいろなので、自分に合った方法を見つけましょう。初心者でもやりやすいのは、市販の洗浄液つき鼻洗浄器具かもしれません。洗浄液がセットでない場合は、市販の生理食塩水を使うといいでしょう。
監修/大久保公裕先生 取材・文/栗本和佳子、たまごクラブ編集部
妊娠中は薬に頼らなくても済むように、花粉を寄せつけない生活を実践しましょう。それでも、花粉症の症状がつらい場合は、耳鼻科に相談を。妊娠中でも行える治療があります。受診の際には、妊娠していることを医師に伝えてください。
●参考:『たまごクラブ2020年3月号』「妊娠中の花粉症コレで乗りきる!ガイド」
●この記事は、再監修のうえ、内容を一部更新しました(2023年2月)
大久保公裕先生
PROFILE
日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部感覚器科学分野 教授。日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科 部長。日本アレルギー協会 理事。花粉症治療に詳しく、花粉症に関する著書も多数。