子どもの花粉症は何才から?低年齢化しているってホント?【専門家】
環境省は2023年春の花粉の飛散量について、関東、北陸、中国地方などで過去10年で最も多くなると発表しています。そして2022年よりもスギ花粉の飛散開始日が6~20日ほど遅くなるという見込みだそうです(東京都の場合、2022年が2月12日、2023年が2月26日予想)。ママやパパの中にも花粉症に悩まされている人は多いと思いますが、近年、子どもの花粉症が増えているといいます。そこで、子どものアレルギーに詳しい、国立病院機構相模原病院の佐藤さくら先生に子どもの花粉症が低年齢化していることについて聞きました。
子どもの花粉症は年々増え、近年では幼児も発症
子どものスギ花粉症は年々増えているといいますが、なぜ、子どもの花粉症が増えているのでしょうか?
「子どもには限りませんが、花粉症全体が増えている原因としては、戦後に植えられたスギの木が成長し、潜在的な花粉生産能力が高い状態になっていること、温暖化の影響で花粉が多く産生されることがあげられます。また、食生活や生活習慣の変化、環境汚染など人間側の環境変化も花粉症増加の原因の一つとして指摘されています。
もともと花粉症は思春期以降に発症することが多かったのですが、近年、学童はもちろん幼児期の患者さんも増えています。なかには2~3才といった、低年齢の子どもでも症状が見られます」(佐藤先生)。
子どもの花粉症有症率推移
1983年から2015年のスギ花粉症有症率の推移。0~14才と幅は広いものの、こちらのデータからも約30年で2.4%から40.3%と、大幅に増加しているのがわかります。
(第1回調査:昭和58年度から昭和62年度 第2回調査:平成8年度 第3回調査:平成18年度 第4回調査:平成28年度 ※各回の調査では有病判定の基準や推計方法に一部変更点があるため、推定有病率の変化を単純に比較することはできない)
春生まれの赤ちゃんは、その後花粉症を発症するリスクが高い
2~3才という小さな子どもまでもが花粉症になる理由はまだ明らかではありません。しかし、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの子どもが増えていることや、花粉に触れる機会が増えてきていることが関係していると考えられています。
「花粉症はアレルギー反応の一種で、体内に入った花粉が異物とみなされ抗体が作られ、その抗体と抗原(花粉)が反応してくしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が出ます。花粉に接触すればするほど、発症のリスクは高まっていきます。
また、春生まれの赤ちゃんは、その後花粉症を発症するリスクが高いと言われています。赤ちゃんのときにたくさんのスギ花粉を浴びると花粉症発症のリスクは高くなる可能性がある、ということです。
今のところ花粉症を予防する方法は見つかっていませんが、アトピー性皮膚炎などすでにアレルギー症状がある、親が花粉症など、花粉症が心配な赤ちゃん、子どもの対策としては花粉に接触する機会をなるべく減らすことで発症予防につながる可能性はあります」(佐藤先生)。
佐藤先生によれば、子どもの花粉症で圧倒的に多いのがスギだということです。
「スギ以外にもブタクサやカモガヤなどの花粉症もあります。また、最近増えている、りんごや桃を食べると口の中がかゆくなるといった口腔アレルギーは、カバノキ科花粉症と関係しています」(佐藤先生)
スギは2月下旬~5月初めまで、シラカンバやハンノキは4月~6月ごろが多いので注意が必要です。
花粉が多い時期は2~3カ月と長期ですが、ずっと接触しないようにするべきなのでしょうか?
「スギ花粉は、飛散が始まってから4週間程度がとくに花粉の多い時期になります。この期間内の
1:晴れて気温が高い日
2:空気が乾燥して風が強い日
3:雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いたあと
といった日はとくに注意が必要です」(佐藤先生)。
ずっと注意するというのではなく花粉飛散が多い日はとくに注意が必要、ということのようです。花粉飛散が多いとき具体的に注意したほうがいいことはどのようなことなのか、佐藤先生にポイントを聞きました。
・外遊びやお散歩の時間は、花粉が少ない時間帯を選ぶ
・外出するときは、帽子をかぶる(2才以上はできるだけマスクをする)
・目のかゆみが強いときはゴーグルタイプのめがねをかける
・洗濯物、ふとんは外に干さない
・室内の掃除をまめにおこない、換気も午前中までに短時間おこなう
・外出から帰宅したときは衣類などについて花粉を払って室内に入る
・うがい、手洗いを習慣づける
などだそうです。
「花粉は昼前後と夕方に増えるので、その時間帯の外出はなるべく控えたほうがいいでしょう。また、基本的なことですが睡眠をよくとること、規則正しい生活を送ることで免疫機能を保つことも大切です」(佐藤先生)。
花粉症と風邪との違いはどこにある?
くしゃみや鼻水は風邪の症状でもありますが、花粉症と風邪の見分け方について聞きました。
「花粉症の場合は発熱がありません。鼻水も透明で水っぽいのが特徴です。くしゃみは連続して出ることが多く、目をかゆがる、という症状もあります。また、花粉が多い春先に症状が出るのも特徴です。
子どもは鼻水が出てもすすってしまい、悪化すると中耳炎になることもあります。鼻水を頻繁にすすっているようなら、受診するといいでしょう」(佐藤先生)
お話・監修/佐藤さくら先生 取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部
5月ごろまで花粉シーズンは続きますが、花粉症は大人もつらいもの。くしゃみや鼻水などつらい症状があっても子どもはうまく伝えられないことが多いので、「花粉症かな?」という様子が見られたら、早めに対処してあげられると安心です。
※参考資料/環境省「花粉症環境保健マニュアル2019」
●この記事は、再監修のうえ、内容を一部更新しました(2023年2月)