「産後8週間で復帰するよな?」「上司が妊娠を言いふらした」等。妊娠したことで職場でイヤな思いをしたことある?【対処法を専門家が解説】
あなたは妊娠中に職場でイヤな思いをしたことはありますか?
「たまひよ」アプリユーザーに聞くとともに、産業カウンセラーの川村佳子さんに「もしもの時」の対処法などをお聞きしました。
「イヤな思いをした」は約34%
どんなイヤな思いをしたことがあるのか、みんなのコメントを見てみると、
「重いものを持ってもらいたいとお願いすると、すごく嫌な顔をされた」(はな)
「つわりがひどくて傷病手当をもらいながら休んでいたら、社長夫人に電話の1本くらいしなさいよと怒られた。怖すぎて泣いた…」(ヨメチャン)
「産休・育休を取ってそのまま辞めると思われていたようで、『私物は一切残すな。全て持って帰れ』と言われ、モヤッとした」(ask)
「立ち仕事で体調が悪く、座ろうと椅子を持った時に落としてしまった。その時に、気遣うより笑われたことがある」(すー)
「女性の労務管理担当者に、『職場に迷惑だ』とか『何を考えてるんだとか』と嫌味を言われました。悲しかったです」(たこわさ)
「妊娠前までは座ってやる仕事をしていたのに、妊娠してから産休に入るまでは、ずっと体を動かす仕事をさせられました」(mille)
「妊娠報告の際、『今の時期にかぁ』とボソッと言われた」(のん)
「『つわりは病気じゃない』と言われたり、妊娠中、腹痛で早退したら、その分、他の日に出勤を求められたりした。有休もなかなか使わせてもらえないのはおかしいと思った」(いちご)
「妊娠報告を上司にした際、『おめでとう』よりも先に自然妊娠か聞かれ、同僚に勝手に報告をされました。すごく嫌な気持ちでした。
また切迫早産となり休職して早めの産休に入りましたが、自宅安静と伝えているのに仕事の連絡が多く、心が休まりませんでした」(さわちゃん)
「法律での休みは産後8週まで。で、『それで戻ってくるよな?』との言葉。保育園事情を話したら『復帰後は子ども二の次で、仕事優先するよな?』と言われ、さらに産休前に母健連絡カードを使って2ヶ月休職したことを、『多大なる迷惑をかけたことを自覚しろ。休んでいる間大変だった。社会人失格』と言われた。人事に相談するか悩み中」(さな)
悪気はないのかもしれないけれど、こんな体験談も。
「社長に妊娠のことを言いふらされた。『妊娠初期だから内密にして欲しい』と伝えたのにも関わらず、『おめでたいことなんだから』と取り合ってもらえず、対処のしようがなかった」(めぐむ)
「私がいつから産休に入るか、上司が把握しておらず、産休に入る1週間前に『いつから?』と聞かれた。母子手帳をもらった時点ですでに伝えていたのに忘れられていたのでモヤモヤしてしまった」(Mint)
「立ったりしゃがんだりの多い職場で、妊娠後期は股関節の痛みで歩くのもツラかったので、少し早く産休には入らせてもらいました。先輩に個人的に挨拶した際、予定日を聞かれて、『まだまだ働けるじゃん!』と言われ…。申し訳なく思っていたので更にツラくなりました」(すずーき)
また、女性の妊娠や妊娠期と出産後の制度について、あまりに知られていなかったゆえのモヤモヤも。
「その職場で初めての妊娠出産となり、会社の対応が決まってなくて曖昧だった。出産手当や育休の話などは会社から一つもなく、全て自分で調べて行っているが、ちゃんと手当がもらえるのか今でも不安」(もっちょ)
「雇用保険に入っているのに、『産休育休取れるか分からない』と言われた」(さちよーん、)
職場の対応に、どのように対処すればいいのでしょうか。産業カウンセラーの川村佳子さんにアドバイスをいただきました。
自分の気持ちを的確に伝え、ネガティブ感情は手放す
「妊娠中の悩みは、知識や経験のある人でなければ理解してもらえなかったり、誰にでも簡単に話すことができなかったりする悩みですよね。
私は普段、行政機関や企業の相談室、自分で運営しているカウンセリングオフィスにいるのですが、妊娠中に職場で心ない言葉を言われ、イヤな思いをしたという女性たちに出会います。
妊娠の報告をしたら嫌味を言われたり、出産後も働くつもりでいたのに辞めると思われていたり。チクっと胸が痛んだり、モヤモヤしたりすることにたくさん遭遇しているように思います。
今回は、職場でイヤな思いをした時の対処法を2つご提案したいと思います。
相手を尊重しつつ意見を主張するスキルを
まず1つ目は、「自分の気持ちや考えを、的確に相手に伝える」ことです。
嫌な対応をされて悲しい思いやモヤモヤした時、自分の本当の気持ちを率直に相手に伝えることはできていますか?
自分の気持ちや考えを言えない時は、自分を大切にできていない状態ですし、ストレスを溜めやすい状態です。
自己主張するためのコミュニケーションスキルに「アサーション」というものがあります。アサーションは簡単に言うと「自分と相手を大切にする会話」です。相手の気持ちもしっかり考えながら、その場にふさわしい形で自分の気持ちや考えを表現することで、上司などとも対等な立場で会話を行えるようになり、トラブルを避けるのにも役立ちます。
例を挙げてみましょう。
×「なんでそんなひどいこと言うんですか!」
○「私は、今の言葉でとても傷つきました」
ポイントは、「私は○○と感じました」「私は○○したいと考えています」といったように、自己主張をする時は主語を必ず「私」にし、コミュニケーションを始めることです。
そして、ちょっとの勇気を持つことが大切です。
アサーションを身に付けると、職場はもちろん、プライベートでも役立ちます。自分の現状を率直に相手に伝えたり、必要な時には、助けを求めたりすることができるようになります。
言いづらいと思う方は、嬉しかったことからでも良いです。ぜひ、自分の本当の気持ちを、率直に相手に伝えてみましょう。
また、あまりにおかしいと思った時は、会社のハラスメント相談室や、私たちのような心理支援者(臨床心理士やカウンセラー)、または弁護士や社会保険労務士などにも相談をしてみてください。1人で抱え込まないことが大切です。
モヤモヤしたら心がけたい、自分への声がけ
2つ目にご提案したいことは、優しく自分に声をかけることです。
「疲れたよね」「悲しかったよね」「でも、すごく頑張っているよね」というように、心の中で良いので、声をかけます。
これは私も日々実践していますが、本当に効果的です! 気持ちに余裕がある時は、ノートやメモに書くとより効果的です。「○○って言われたからモヤモヤしたんだ」「あの時は、一番大変だったよね」といったように1つずつ受け止め、自分に優しい気持ちを向けるのです。そうなったプロセスも書いておくと、わかりやすいですね。
また私は実際に、使わなくなった紙や毛糸をハサミでチョキチョキと切ったり、グルグルとボールペンで殴り書きをしたり、ぐちゃぐちゃに丸めてゴミ箱に捨てたりしながら、自分のストレスを開放しています。
「こんな事で?」と思われるかもしれませんが、効果は抜群です。
私は、子どもや大人にも効果的で心を癒す「表現アートセラピー」を専門的に学びました。その際に、自分の中から何かを出すと気持ちが落ち着くこと、ネガティブな感情やストレスから解放されることなどを体験しました。
子どもと一緒の時でも良いです。紙をぐちゃぐちゃにしたり、殴り書きをしながら、自分自身をぜひ解放してみてください。殴り書きは聞き手と逆の手で書くと、さらに効果的です。
確かに、大きな声を出したり、誰かに話を聞いてもらうだけで、気持ちがラクになることってありますね。それは自分の中からネガティブ感情を放出させているのですね。
(取材・文/メディア・ビュー 橋本真理子)
川村佳子さん
PROFILE)
日本産業カウンセラー協会認定「産業カウンセラー」。日本人間性心理学会会員。上智大学グリーフケア研究所在籍。防衛省、国土交通省、財務省をはじめ、国立機関や一般企業にて産業カウンセラーとして臨床経験を積み、現在航空自衛隊外部カウンセラー。亡母が闘病中に書き記していた日記を見つけ、職場での人間関係の悩みやストレスを驚くほど抱えていたことを知り、職場のストレスや人間関係の悩みを抱えている人たちの力になりたいと強く思い、産業カウンセラーを志す。心理臨床オフィス「サクラメント函館東京カウンセリングオフィス」代表。著書に『嫉妬のお作法』『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)がある。
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2023年1月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数298人)
※記事の内容は2023年5月の情報で、現在と異なる場合があります。