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「妊娠しても大丈夫?」「そもそも妊娠できるの?」女性たちの不安や悩みに寄り添い、勇気を【専門家】

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現代の家でカップル
●写真はイメージです
miya227/gettyimages

生殖年齢にある男女の心身の健康、そして妊娠を支援する「プレコンセプションケア」が、自治体や一部の医療施設で始まっています。東京都世田谷区にある国立成育医療研究センターでは、ヘルスチェックとカウンセリングが受けられるプレコンセプションケアセンターが2015年に開設されています。
妊娠前の悩みについて詳しい出産ジャーナリストの河合蘭さんが、プレコンセプションケアセンターの外来を担当する母性内科医である三戸麻子先生(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター母性内科)に、プレコンセプションケアとは何かを聞きました。

プレコンセプションケアがめざすものは

――「プレコンセプションケア」の意味を教えてください。

三戸先生(以下敬称略)「プレ」は「前の」という意味、「コンセプション」は「妊娠」という意味ですから、直訳すると妊娠前のケアということになります。歴史的には、その名のとおり、妊娠の前の体に気をつかい、健康な赤ちゃんを産むための注意として始まりました。
親自身の健康管理が子どもにいい影響を与える可能性については、ヒポクラテスの昔から知られていたようです。でも、これを国家が国の健康政策として提唱したのは2006年の米国が最初で、約20年前のことです。
子どもを産むかどうかは本人が決めることだという「リプロダクティブ・ライツ」の考え方があります。生涯を独身で過ごす人や、結婚しても子どもをもたない人も増えました。ですから、今のプレコンセプションケアは、必ずしも妊娠をゴールとするわけではありません。

――その目的は何でしょうか。

三戸 生殖年齢にある人たちのウェルビーイングをめざすことが目的です。ウェルビーイングとは、その人が、すべてにおいて満ちたりているということです。体の病気がないということだけではなく、精神も健康で、社会生活も順調であるということです。
知識がないと、自分にとって有害な行動をとるかもしれないし、他人にそれをさせてしまうこともあるでしょう。ですからプレコンセプションケアは、だれもがすこやかに暮らせる社会を作る運動でもあります。

ただ、妊娠したい人が妊娠しやすく、無事に子どもを産むための知識は、プレコンセプションケアの中で今も大きなウェートを占めています。つまりプレコンセプションケアはすべての人の健康を支援することが基本的な目標で、妊娠したい人に対しては、妊娠しやすさ、すこやかな妊娠、健康を次世代にも引き継いでいくための情報、サービス、支援を提供すること、つまり「リプロダクティブ・ウェルビーイング」を実現することです。

――男性も対象になりますか。

三戸 はい、性別を問いません。妊娠を予定している方は、カップルで来ていただくのもいいと思います。「結婚したので、妊娠の準備としてプレコンセプションセンターに来ました」という方もいます。

自分に必要な検査を受け、結果についてじっくり話せる

――国立成育医療研究センターのプレコンセプションセンターでは、検査も受けられますか。

三戸 もちろん、受けられます。プレコンセプションケア外来では、検査とカウンセリングを受けられるコースをいくつか設けています。自費診療なので費用はかかりますが、まず検査を受けて現在の健康状態をチェックし、その結果にもとづいて、個別のアドバイスを行ないます。医師だけではなく、管理栄養士など複数の職種でかかわっていきます。
さまざまな検査ができますので目的に応じてコースを選んでもらいます。血圧測定、血液検査、尿検査などで生活習慣病や肝機能、腎機能の病気がないかを調べられますし、骨密度検査、子宮や卵巣、腹部の内臓を調べる超音波検査などたくさんの検査が選べます。

これから妊娠を希望している人は、子宮や卵巣の検査、卵巣に卵子がどの程度残っているかを調べる「AMH検査」などを受けることもできます。

――「ブライダルチェック」より幅広く、さまざまな病気を調べてもらえるのですね。「人間ドック」と似ています。

三戸 「生殖年齢の人を対象にした人間ドック」のようなものかもしれません。ただ、そこに健康教育がついているのです。

――それは、とてもわかりやすいです。外来にはどんな人が来ていますか。

三戸 先ほどお話したような妊娠を予定しているカップルはもちろんのこと、幅広くいろいろな方々が来ています。結婚予定がまだない方が、将来の妊娠に備えてヘルスチェックに来られることもあります。
中学生の女の子が、お母さんと一緒に来たこともありました。生理トラブルで産婦人科に来たとき、この外来があることを知ったそうです。

――一般の外来より、先生とゆっくり話せるのですね。

三戸 はい。診察室ではなかなかゆっくり話す時間がないことが多いと思いますが、ここプレコンセプションケアセンターは、医師と共に自分の体に向き合うことができる場です。カウンセリングを受けるようなものです。ご自身の今の健康状態を知り、必要な健康知識を得て、ライフプランにつなげていくというイメージです。

ハイリスク妊娠だった人が、次の妊娠の前に受診することも

――三戸先生は母性内科が専門です。高血圧や糖尿病、甲状腺疾患などの持病がある人は、とくに妊娠前の不安が大きいと思います。

三戸 そのとおりです。現在出産年齢が高くなっているので、持病があることで妊娠をためらったり、不安に思ったりする人は増えていますので、もっとこうした場を利用していただきたいです。
この病院の産科はハイリスク妊娠の妊婦さんが多いので、妊娠高血圧症候群になってしまって苦労した人もたくさんいます。そうした方が、もっと安全に次の子を産みたいと考え、プレコンセプションセンターに来てくれることもあります。

――出産を経験したことで、妊娠は、その前の準備も大切だと気づく人もいるのですね。

三戸 そうです。前回の妊娠、出産、産後に起きたことも参考にして、プレコンセプションケアになります。出産と、次の出産の間にいる人へのケアはインターコンセプションケア(妊娠と妊娠の間のケア)と呼ばれています。

――プレコンセプションケアは検査と、それをもとにしたカウンセリングだけではなく「健康教育がついている」ということですが、教育はどこでどのように行なわれるのでしょう。

三戸 プレコンセプションチェックプランでは、その人に知っておいていただきたい知識をテーラーメイドでお話させていただいています。
学校や自治体でもお話しています。セミナ―形式で、内容は、これから産むかもしれない年齢層の方々に、生涯健康でいるための知識や、妊娠したいなら知っておいてほしいことです。
高校生などのまだ妊娠・出産が先のことで自分事とはとらえられない世代にも、できる限り自分事として妊娠・出産に関する正しい知識を知ってもらいたいと、工夫しながらお話させていただいています。将来妊娠・出産することを選択しなかったとしても、妊娠・出産のことを正しく知っておくことは、自分や相手を守ることにもつながるからです。

お話・監修/三戸麻子先生 取材・文/河合 蘭 構成/たまひよONLINE編集部

今、自分の健康状態に自信がないために「私は妊娠しても大丈夫なのだろうか」「そもそも妊娠できるだろうか」と妊活のスタートをためらう人が増えていないでしょうか。プレコンセプション外来は、そんな人に勇気をくれるものかもしれません。
これからの自分や自分の体に向き合い、そしてだれかを助けることもあるプレコンセプションケア。全国に普及してほしいと思います。

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