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【医師監修】妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の症状と対策

妊娠中に起こる気をつけたいトラブルのひとつが妊娠高血圧症候群。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていた病気です。重症化すると母子共に危険を伴いますが、きちんと妊婦健診を受け、血圧や尿検査から早期に発見できれば対策を立てられます。万が一に備えて、妊娠高血圧症候群とはどんな病気なのか、原因や症状を知っておきましょう。

【記事監修】

日本赤十字医療センター 周産母子・小児センター顧問
東都文京病院 院長

杉本充弘 先生

Profile

1973年東京大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター周産・母子小児医療センター長、副院長などを経て、2013年より日本赤十字社医療センター周産母子・小児センター顧問。現在は、東都文京病院 院長。日本母乳の会理事など兼務。「おなかの赤ちゃんと毎日対話して、明日の力にしましょう。」

妊娠高血圧症候群の定義

妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降に高血圧が見られる、または高血圧が見られ尿タンパクを伴うときのいずれかの場合に診断されます。この病気は全身の血管に、れん縮といってけいれんのような収縮が起こります。血管がれん縮して血圧が上がったり、腎臓で血管のれん縮が起きて尿タンパクがあらわれたりします。毎回の妊婦健診では血圧を測り、妊娠高血圧症候群の兆候がないかをチェックしています。早期発見のためにも、妊婦健診をきちんと受けることが大切です。

どんな検査結果だと妊娠高血圧症候群と診断される?

①高血圧

妊娠20週以降に最高血圧が140㎜Hg以上、最低血圧が90㎜Hg以上の場合。最高血圧が160㎜Hg以上で最低血圧が110㎜Hg以上の場合は重症と診断されます。

②高血圧に尿タンパクも見られる

上記の高血圧の症状に加えて、尿検査でタンパクが+や++になった場合。

妊娠中毒症との違い

妊娠中毒症とは過去に妊娠高血圧症候群のことを指していた診断名で、妊娠中毒症の場合は「むくみ」「タンパク尿」「高血圧」の3要素が重視されていましたが、妊娠高血圧症候群ではより厳密に症状や診断基準が定義され、「高血圧」に注目して診断がなされるようになりました。現在、医師から妊娠中毒症と診断されることはありませんが、もしスタッフなどに言われた場合は妊娠高血圧症候群を意味していると考えましょう。

赤ちゃんへの影響はある? 妊娠高血圧症候群は引き起こす問題

妊娠高血圧症候群は妊娠32週以降に発症することが多いですが、それよりも早く発症した場合、重症化する傾向があります。重症になると、ママが子癇(しかん)と呼ばれるけいれん発作を起こしたり、脳出血を起こしたりすることがあります。またおなかの赤ちゃんの発育や健康状態が悪くなったり(胎児発育不全)、場合によっては赤ちゃんが危険な状態になるケースもあるため、注意が必要です。

妊娠高血圧症候群になりやすいのはどんな人? 病気が起こる原因

妊娠高血圧症候群は妊娠によって血管に対する負荷が大きくなるために発症すると考えらえています。また、妊娠初期に胎盤がうまく形成されなかったため、血管に障害を起こす物質が放出されて引き起こされるとも考えられています。この病気は妊娠という負荷が体にかかっている限り、治りません。出産するまでは完全に治らないのです。なぜ起こるのかははっきりとわかっていませんが、もともと高血圧や腎臓病などの持病がある人は発症しやすいため、注意が必要です。

塩分のとりすぎは関係がある?

一般的に、過度にカロリーや塩分をとりすぎると妊娠高血圧症候群になりやすくなることは知られていますが、直接的な原因とはいえず、極端なカロリー制限や減塩が危険なこともわかっています。発症の予防としてすすめられているのは、1日当たり10g以下の塩分制限ですが、主治医や通っている産院の栄養士さんとよく相談しましょう。

妊娠高血圧症候群になりやすいタイプ

○高血圧、腎臓病、糖尿病などの持病がある
○高血圧の家系
○もともと肥満である
○妊娠してから急激に体重が増えた
○高年妊娠
○多胎妊娠
○過去の妊娠で妊娠高血圧症候群を発症した

減塩と適切な体重増加で妊娠高血圧症候群を予防

妊娠高血圧症候群の予防は、バランスのいい食事が基本です。減塩、低カロリー、高タンパクな食事を心がけ、急激に体重が増加しすぎないように気をつけましょう。塩分の摂取量の目安は1日7~8g。守るのは難しいものですが、味つけに薬味やレモンなどを取り入れ塩分を減らす工夫を。また、味の濃い汁物は全部飲み干さないようにしましょう。また、規則正しい生活も大切です。過度のストレスや睡眠不足、疲れが症状を引き起こすといわれています。ストレスの多い生活をしている場合は、できる範囲で生活を見直しましょう。

診断されたらどうすればいい?妊娠高血圧症候群の治療

妊娠高血圧症候群の治療はとにかく安静にすることです。少しでも兆候が見られ、自宅安静を指示されたらできるだけ横になる生活をしましょう。また、予防と同様に過度な塩分の摂取は控え、自宅でも1日3回食事前に血圧を測りましょう。自宅で安静が保たれ、血圧が安定して妊娠経過が順調であれば赤ちゃんにあまり影響はありませんが、症状が悪化すると赤ちゃんに十分な酸素と栄養が送れなくなり、赤ちゃんが育ちにくくなる場合も。自宅安静では改善しない、自宅安静中に血圧が急に高くなる、といった場合は入院します。さらに安静を保つようにして、母体と胎児の状態を厳重に観察します。

妊娠高血圧症候群の場合の出産

妊娠高血圧症候群の場合、母子の安全のため、帝王切開分娩になることが多く、妊娠の継続が母子にとって危険と判断された場合は正期産(せいきさん)を待たずに帝王切開術で赤ちゃんを娩出(べんしゅつ)します。血圧がコントロールできて、胎児の状態もよく、子宮口が十分やわらかくなっていれば、分娩を誘発して経腟(けいちつ)分娩をすることも可能です。ですが、分娩中に急に状態が悪化することも考えられ、経腟分娩で出産するかどうかは慎重に検討されます。経腟分娩を試みても、母体や胎児の状態によって緊急帝王切開術に切り替わることもあります。出産後は症状が改善していきますが、状態によって分娩後12週までは定期的に受診をして経過をチェックするケースも。医師から詳しい説明があるので、不安な場合はよく相談をしましょう。

まとめ

妊娠中に思いがけないトラブルが起こる可能性はだれにもあります。病気の兆候を早期に発見して適切な処置、治療をするためにも、妊婦健診をきちんと受けることが大切です。そして、わからないことや気になることは医師やスタッフに相談し、不安を解消しましょう。
(文/たまごクラブ編集部)

初回公開日 2017/8/18

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