発達心理学の専門家に聞く妊娠から2歳までの1000日間に大切にしたい4つのこと
妊娠してから子どもが2歳になるまで、約1000日間。この期間はママの心身は大きな変化があり、戸惑うことも多くなりがちです。一方で、この時期を楽しく過ごすことで子どもにとって良い環境をつくることができるという研究もあり、発達心理学を専門にされているお茶の水大学教授の菅原ますみ先生に、1000日間の上手な過ごし方についてお聞きしました。
子どもの今に集中する、子ども目線で考えることで 毎日をもっとHAPPYに
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出産育児は、ハードな仕事。不安や焦りを前向きな気持ちに変えるには
質問
ママにとって心身の変化が大きい、妊娠してから子どもが2歳になるまでの子育て初期の過ごし方や考え方についてアドバイスお願いします
菅原先生
妊娠中もふくめ、2歳までの赤ちゃん期は、初産の人はとくに、心身の変化や、育児のことで戸惑うことも多いと思います。恋愛や結婚に比較して、出産育児ははるかにハードな仕事なのでそのギャップに驚くという声もよく聞きます。現代は、少子社会なので、子どもに触れる機会が少なく、リアルにかかわる経験が世の中の人全般にあまりないことも、そうしたギャップの要因でもあると思います。
一方で、乳幼児期に、育児や家事を大変と感じる人ほど子育てへの自信が低い傾向があるという研究データもあります(*1)。保護者の育児への前向きな気持ちや自信は子どもの成育にとって、とても大切です。
育児や家事の負担感を減らすために、妊娠中から外部のサポートも含めたチーム育児の体制を計画的につくることが理想的ですが、周囲のサポートを得るのが難しい人もたくさんいるかと思います。そうした場合は、住んでいる地域にある公的な子育て支援を利用しつつ、子育てに対する不安や焦りに上手に向い合うための、4つの考え方を意識することをお勧めします。
*1 ベネッセ教育総合研究所(2011年) 第1回妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(妊娠期~2歳児期) http://berd.benesse.jp/jisedai/
目の前の子どもとの時間を楽しむことで、HAPPYになれる
菅原先生
もし、不安や大変に感じることがあれば、それを心の中だけでかかえず、リストアップして解決方法を探してみるということも一つの手です。簡単に解決できないこともあると思いますが、客観的に把握し、解決方法を考えるということでも、気持ちの負担が減ることになります。また、子どもにイライラする、つい怒ってしまい自己嫌悪になるという人は
1 小さな子どもとはこういうものであると思う
2 自分の考えや行動を、他人から見たらどうか考えてみる
3 子どもの気持ちを子どもの目線で考えてみる
4 子どもとかかわる時間は、集中して一緒に楽しむ
などの考え方を意識してみることもお勧めします。
特に子どもとのかかわりかたについては、子どもと遊ぶときには、思い切って集中的にかかわって、家事をやる時間とメリハリをつけるといいと思います。子どもは大人と一緒に遊ぶことが大好きなので、しっかり大人が関わってくれる時間があることがわかれば、子どもは、ひとりで安心して雑念なく遊びに集中することができるようにもなります。大人になって心身ともに健康に育った人は、子ども時代にひとつひとつの経験に不安を感じず、のびのび取り組んでいる傾向があります。目の前にいる子どもとの時間に集中することで、大人も情緒が安定し、子どもに良い影響を与えることができます。子どもとの“今”を大切に過ごすことが、親子ともにプラスになるのです。
2歳までの期間は、かけがいのない赤ちゃん期でもあり、将来思い出すたびに笑顔になれる時期でもあります。できるだけ外部に助けを求めながら、子育てを楽しめる環境をつくること、そして、大切な次世代を育んでいる家族にもっとあたたかな眼差しやサポートを社会がそそぐことによって、親としての自信を育んでいけたらと思います
菅原ますみ(すがわら・ますみ)
お茶の水女子大学基幹研究院 人間科学系教授。同人間発達教育科学研究所 所長。文学博士。湘北短期大学幼児教育科、国立精神・神経センター精神保健研究所地域・家庭研究室長を経て、2006年より現職。専門は発達心理学で、パーソナリティの発達に影響する環境のあり方について、乳児期からの追跡調査を行っている
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