推定体重、胎児発育曲線etc. おなかの赤ちゃんの大きい・小さいって? 産婦人科医にきくQ&A
妊婦健診のときにチェックされる赤ちゃんの大きさ。先生から「大きめ」「小さめ」と言われたり、大きさのことは何も言われなかったりすることもあって、とても気になります。先生の言葉には、いったいどんな意味があるのでしょうか? みんなの知りたい赤ちゃんの大きさのことを聞いてきました。モヤモヤを解消して、スッキリしましょう!
赤ちゃんの大きさ、なぜ測る?
医師が言う赤ちゃんの大きさは、多くの場合、赤ちゃんの「推定体重」のことを指しています。妊婦健診のときに推定体重をチェックするのは、赤ちゃんが順調に発育しているのかを診断していくため。もしも発育の状態に異変があるときは、何らかのトラブルが起きている可能性があります。その場合、赤ちゃんの各器官や、子宮や胎盤の状態などを、より精密に診ていくことに。それにより、トラブルを早期に発見できたり、必要な治療をすぐに受けることができ、大事には至らずにすむことがあります。おなかの赤ちゃんの大きさをチェックするのは、母子の健康を守るために、とても有効な検査なのです。
赤ちゃんの推定体重って?
子宮の中にいる赤ちゃんの実際の体重を測定することはできません。そのため、超音波検査によって、赤ちゃんの体の特定の部位を測定し、その値を決められた計算式に当てはめて算出したものが推定体重です。推定なので、実際には多少の誤差が生じます。目安と考えてください。
医師から言われる「大きめ」「小さめ」には、どんな意味があるの?
健診のときに言われる赤ちゃんの「大きめ」「小さめ」「標準」は、胎児発育曲線(※)に照らし合わせた言葉であることが多いです。「胎児発育曲線」とは、妊娠週数により推移する胎児の推定体重の範囲を示したものです。この推定体重の範囲を超えて、大きい場合を「大きめ」、小さい場合を「小さめ」と伝えています。ただし、この言葉の中には、心配のないケースと、注意したいケースがあります。
※胎児発育曲線は、母子健康手帳に載っていることが多いです。ただし、母子健康手帳の内容は自治体によって違うので、載っていない場合もあります。
心配ないケース① 標準範囲内だけど、大きめ・小さめ
健診時に、赤ちゃんの成長を妊婦さんに説明するとき、「標準範囲内」という意味で、「大きめ・小さめ」という意味で伝えている場合があります。
心配ないケース② 一回言われただけ
一度の測定で、「大きめ」「小さめ」だったとしても、次の健診で順調に育っていれば問題ありません。たとえば、大きさの説明が“標準範囲内のこと”だったり、推定体重なので計算上の誤差が生じただけの可能性もあります。成長の度合いは経過をチェックすることで診断しますから、一度言われただけなら、そう心配しなくて大丈夫でしょう。
注意したいケース① 標準範囲と明らかに差がある
標準範囲から明らかに差があることが連続した場合は、トラブルの可能性があるため、原因を探っていきます。胎盤の状態や赤ちゃんの心拍など、さまざまな点から診断し、近いうちに再度受診してもらって経過を観察したり、すぐに原因がわかるようなら治療を始めていきます。
注意したいケース② 平均値からしだいに離れていく
標準範囲からはみ出し始め、その差が少しずつであっても、しだいに差が出てきた場合、大きくても小さくても、注意深くチェックしていきます。おなかの赤ちゃんや母体に、何らかのトラブルが隠れていたり、その予兆だったりすることが! そのため、さまざまな角度から見ていき、場合によっては精密な検査をしていくことになります。
赤ちゃんが大きくなりやすい、小さくなりやすい傾向や原因ってあるの?
おなかの赤ちゃんの大きさは、両親の体格に影響している場合があります。親が大きければ大きめ、小さければ小さめに。両親の現在の体格でなく、出生時の大きさと関係している場合も。たとえば、親が今は小さめでも、出生時に大きかった場合は、その影響が出ることもあります。また、経産婦(けいさんぷ)は、上の子のときより赤ちゃんが大きめになる傾向に。多胎妊娠の赤ちゃんは、子宮の中が狭くなるため、小さめになることが多いです。大きさが標準範囲を超えた場合は、トラブルの可能性があります。
<標準範囲を超えた場合のトラブルの可能性>
●赤ちゃんが小さい
血圧が高い、妊娠高血圧症候群、胎盤機能の低下、感染症、染色体異常や器官トラブルの影響など
●赤ちゃんが大きい
カロリーのとりすぎ、血糖値が高め、妊娠糖尿病など
赤ちゃんの大きさ! 気がかりQ&A 「大きめ」編
Q 赤ちゃんが大きめだと、腰痛や尿もれを起こしやすい?
A 妊娠中の腰痛は、大きくなったおなかを支えるために姿勢が変化することや、骨盤の形、出産回数などが主な原因で、赤ちゃんの大きさはあまり関係ありません。尿もれの原因は、膀胱(ぼうこう)を支えている骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)のゆるみであることが多いもの。赤ちゃんの大きさによって、尿もれをするかしないかに分かれるわけではありません。
Q赤ちゃんが大きいと難産になる? 出産時、会陰(えいん)が切れやすい?
A お産の進行は、赤ちゃんの大きさだけでなく、陣痛の強弱、子宮口の開き具合、赤ちゃんの回旋(産道を体を回転させながら下りてくること)、母体の体力など、さまざまな要因によって変化するもの。ただし、ママの骨盤が狭く、赤ちゃんがかなり大きい場合は難産傾向に。会陰が切れる、切れないについては、よほど大きい赤ちゃんでない限り、あまり関係ありません。会陰の伸びやすさや、いきみ逃しがうまくできるかどうかや、赤ちゃんの下りてくる向きによるところが大きいです。
Q赤ちゃんが大きめの場合、妊娠生活で気をつけることは?
A 標準の範囲内での「大きめ」なら、両親の体格の影響や、赤ちゃんの個性なので気にする必要はありません。範囲を超えて「大きい」場合は、妊婦さん自身の体重増加が気になるところ。もしも大幅に増えているなら、産院で指導されている適正体重になるようコントロールを。体重が増えすぎていないのに赤ちゃんが大きいなら、甘いものなど糖質のとり過ぎの可能性も。栄養バランスが整った食事を心がけて。
赤ちゃんの大きさ 気がかりQ&A「小さめ」編
Q 吐きづわりがひどいです。赤ちゃんは小さめになる?
A 一般的なつわりの時期である妊娠初期は、母体の食事の影響をほとんど受けない時期。おなかの赤ちゃんの成長は、つわりの時期を過ぎてからが重要です。バランスのよい食事をし、適正な体重増加をしていけば赤ちゃんは成長していきます。
Q 太りたくない!と食事をセーブしていたら、赤ちゃんが小さめみたい。小さめならお産が楽?
A 赤ちゃんが小さければお産が楽という考えはやめましょう。胎児のころに栄養が不足して極端に小さく生まれると、将来的に、肥満や糖尿病、心臓病などのリスクが高まるという報告があります。ただし、赤ちゃんが小さめだからといって、急激に食事量を増やしたりするのはダメ。バランスよい食事と、適正な体重増加が赤ちゃんの健康につながります。
おなかの赤ちゃんの大きさのチェックは、赤ちゃんが順調に育っていくかを診ていくために必要です。トラブルの可能性があるときは、医師から何らかのアクションがあります。精密検査することになったり、「経過を見ていきましょう」などの言葉が伝えられるでしょう。また、赤ちゃんの大きさは、推定体重によるもので、実際の体重ではなく、多少の誤差が生じるもの。毎回の検査のたびに一喜一憂する必要はありません。医師としっかりコミュニケーションをとりながら、ゆったりおおらかな気持ちで妊娠生活を過ごしてください。(文/たまごクラブ編集部)
参考文献:たまごクラブ2019年5月号「おなかの赤ちゃんの大きさ気がかりQ&A」