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妊婦は先天性サイトメガロウイルス感染症を知って。患者の会の声

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先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会「トーチの会」の代表を務める渡邊智美さん。第一子妊娠中に、自身がトキソプラズマに感染したことで、おなかの中の赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症を発症。脳に障がいを持って生まれたお子さんを育てながら、一人でも多くの妊婦さんに妊娠中の感染症について正しい知識を持ってもらえるよう、活動をしています。
たまひよONLINEでは、前回の記事「妊婦は注意!たった一度の生肉で先天性トキソプラズマ感染症に?」で体験を語ってもらいました。今回は感染症が見落とされてしまうことがあるという現状や、誤った情報で偏見や差別があることなど、トーチの会が考えている今後の課題について教えてもらいました。

関連:妊婦は注意!たった一度の生肉で先天性トキソプラズマ感染症に?

先天性トキソプラズマ症と先天性サイトメガロウイルス感染症の症状や治療法について

トーチの会は、先天性サイトメガロウイルス感染症が生後すぐには見つけてもらえず、見逃されることが多いという現状を改善することも課題にしています。そこで、感染症を見逃さないために、妊婦さんや産後すぐのママに知っておいてほしいことを発信しています。
まずは、妊娠中に気をつけたい2つの感染症について、赤ちゃんが母体から感染して発症したときの症状や、治療法を簡単に紹介します。

先天性トキソプラズマ症とは?

●症状は?
代表的な症状に網脈絡膜炎など目の障がいがあり、しばしば再発します。水頭症など脳の障がいや、精神運動発達の遅れ、てんかん、自閉症なども多く、重症の場合は、流産・死産になってしまうことも。

●治療は?
妊娠中に早く気づくことができれば、胎児への感染予防、もしくは障がいの軽減に使用できる薬を妊娠中に投薬することができます。生まれてから赤ちゃんに使用できる保険適応の治療薬は国内で販売されていないため、熱帯病治療研究班に提供してもらうか、全額自費で輸入することに。そのほか、早期療育やリハビリなどの対症療法をします。

先天性サイトメガロウイルス感染症とは?

●症状は?
代表的な症状に難聴があり、しばしば遅発性や進行性になります。精神運動発達の遅れ、てんかん、視力障がい、自閉症なども多く、重症の場合は、流産・死産になってしまうこともあります。

●治療は?
妊娠中から、または生まれてすぐに異常に気づき、生後3週間までの間に新生児の尿検査による確定診断を行えれば、症状や赤ちゃんの状態にもよりますが、抗ウイルス薬で感染した赤ちゃんの治療ができる可能性があります。生後1カ月までに投薬をスタートできれば障がいの進行を止めたり、軽減させられる可能性があります。この薬は生後1カ月以降だと治療効果が定かではなく、使えないこともあるので、早期発見がとても大事。また、難聴にも早期介入で言語発達を促す必要があります。そのほかの症状には、対症療法しかなく、早期発見し、早期療育や早期リハビリを行うことが重要です。

渡邊智美さんが解説 早めの治療が大切なのに、見落とされてしまうことが残念

「サイトメガロウイルスの場合は、生後3週間までの間に発見できれば、生後1カ月までに投薬スタートする抗ウイルス薬で治療できる可能性があります。そのためには、生後すぐ、赤ちゃんの聴覚を調べる『新生児聴覚スクリーニング検査(聴スク)』がとても重要で、ここで要再検査となった場合、先天性サイトメガロウイルス感染症を疑って、確定診断用尿検査をすれば、もし本当にそうだった場合、すぐに治療をスタートできる可能性があるんです。ただし、この新生児聴覚スクリーニング検査をした時点では聞こえていたのに、遅発性の難聴にあとで気づく、ということもよくあります。それでも、せっかく新生児聴覚スクリーニング検査をするのであれば、そこまで考えて一人でも多く早期発見をしてあげてほしいのです。
でも、残念ながら、まだ医師の中でも広く周知されていないのが現状です。聴覚に異常が認められても、しばらく様子を見てから再検査とされてしまうと、生後1カ月以内に始めたい治療が間に合わないんです。『再検査は耳鼻科で』となって、耳鼻科の予約がなかなか取れずに難聴の確定が遅れてしまい、尿検査も治療も間に合わないという残念なケースも本当に多いんです」

トーチの会メンバー〈茨城県/なおママさん〉の、先天性サイトメガロウイルス感染症体験談

トーチの会のメンバーでも、新生児聴覚スクリーニング検査で異常があったにもかかわらず、感染症の診断が遅れてしまった親子がいます。茨城県のなおママさんの体験談を紹介します。


●生後すぐ、新生児聴覚スクリーニング検査で異常が認められる

お産まではなんの問題もなく、第2子だったこともあり、第1子よりお産も軽く無事に出産。生後2日目に受けた新生児聴覚スクリーニング検査で両耳とも要再検査となりましたが、医師から
「羊水(ようすい)が耳に残っているのだろう」と言われました。退院日まで何回も検査を受けても毎回同じ結果になったものの、様子を見るように言われ、そこまで重大なことではないのだと思って退院しました。

●1カ月健診でも聴覚に異常が認められる

里帰りをした都合で、生後2カ月のときに受けた1カ月健診でも、聴覚検査に引っかかったので、医師に相談すると「耳鼻科でちゃんと検査したら問題ないことが多い」と言われ耳鼻科を紹介されました。耳鼻科の検査を受けた生後3カ月のとき、右耳が重度の難聴、左耳が軽度の難聴と診断が。「成長に伴いよくなることは?」と耳鼻科の医師に聞くと、「それはない」とひと言で終了し、あまりにも簡単に難聴の診断を告げられたことにショックを受けました。

●4カ月健診で発達の遅れを指摘され、感染症がわかる

4カ月健診で、そのとき健診を担当した医師に初めて発達の遅れを指摘され、その医師が「念のため脳の検査もしたほうがいい」と言うので、生後5カ月のときにCT検査をすると、脳に異常が認められました。画像の判断から、「おそらくサイトメガロウイルス感染症が原因なのでは」という説明があり、このとき、初めて先天性サイトメガロウイルス感染症であることがわかりました。

※内容は、「トーチの会」HPより抜粋して再編集しています。

渡邊智美さんが解説 急いで再検査をすれば治療が間に合うことも

「なおママさんのように、医師の中でも、難聴があっても『しばらく様子を見て再検査を』と提案する医師が多いのが現状なんです。また再検査まで時間がかかってしまうケースも本当に多いんです。遅れてしまうと、もしかしたらできていたかもしれない治療ができないことも。医師が言うことに意見をするのはとても勇気がいることですが、少しでも『本当にそれでいいのかな?』と思ったときや、何かおかしいと感じたときは、一度、医師に相談をしてみてください。私たち、『トーチの会』は、今後、新生児聴覚スクリーニング検査で要再検査になった赤ちゃんの中から、先天性サイトメガロウイルス感染症を早期発見してあげられるよう、さまざまな学会に出て、医療関係者に向けても啓発活動をしていきたいと思っています」

最後に渡邊さんが伝えたいこと… 感染者を隔離する必要はないんです! 誤解から、差別をしないで

先天性トキソプラズマ症や先天性サイトメガロウイルス感染症の子どもたちが、誤った情報や誤解から隔離をされたり、差別を受けてしまうことがあるそう。「とても悲しいことなので、本当のことを知ってほしい」と渡邊さんが、隔離の必要がないことを教えてくれました。

感染者を隔離しても無意味だということを知ってほしい

「先天性トキソプラズマ症や先天性サイトメガロウイルス感染症の子どもたちが、『感染症』という病名のせいで、『保育園の入園を拒否された』『保育園や幼稚園で隔離をされた』という事例がトーチの会のメンバーから寄せられることがあるのですが、これは本当に残念なこと。サイトメガロウイルスは普通に生活していているうえでどこにでもいるものですし、健常な子どもたちの多くがこのウイルスを唾液(だえき)や尿から排せつしているんです」

手洗いなどの基本的なことで 感染リスクが下がります

妊娠中の人は「感染したらどうしよう」と不安になるかもしれませんが、怖がらなくても大丈夫。サイトメガロウイルスは、子どもの食べ残しを食べたり、食器を共用したりすることを避け、おむつ替えのあとなどに手洗いをきちんと行うことで感染リスクをかなり下げられます。トキソプラズマも、感染した人から外に排出されることはないので、感染症の子からうつることは絶対ありません。猫のトイレの処理をしたあとや土いじりをしたあとにしっかり手を洗う、土がついた野菜はよく水で洗い流す、非加熱のお肉を食べないことで予防になります。「トーチの会」では、妊婦さんに向けてあらゆる病原体に対しての「妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条」を発信しています。ぜひ読んでください。

関連:トキソプラズマ? リステリア菌?妊娠中に避けたい&注意したい食べ物

妊娠中に気をつけたい、先天性トキソプラズマ症や先天性サイトメガロウイルス感染症について、妊婦さんたちに知っておいてほしいことを紹介しました。「一人でも多くの妊婦さんに正しい情報を知ってもらいたい」という渡邊さんの思いが、全国の妊婦さんたちに届いたらうれしいです。

(取材・文/渡辺有紀子、ひよこクラブ編集部)

■取材協力/渡邊智美さん
先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症の患者会「トーチの会」の代表、歯科医師。妊娠30週のころ、健診の超音波検査で赤ちゃんの脳に異常が見つかったことを告げられ、その後妊娠中に母体が「トキソプラズマ」に感染したことで起こる、先天性トキソプラズマ症を発症していることが判明。出産後、闘病のための情報が少ないこと、正しい知識を持つ医師が少ないことに困り自ら患者会を立ち上げる。
トーチの会


★渡邊さんが写真で着ているTシャツは、トーチの会の活動を広く知ってもらうことと活動資金を集めることを目的に作られたチャリティーTシャツ。トキソプラズマが三日月の形をしているため、三日月のデザインを採用。三日月のまわりに光る小さいモチーフは、サイトメガロウイルスの芯の部分をイメージ。月明かりの中を導いてくれるフクロウのように、正しい知識を伝えていくことで、暗闇の中を照らしていくトーチの会の活動を表現したそう。


■監修/森内浩幸先生
(長崎大学医学部小児科学教室 主任教授)

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