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「妊婦は注意!上の子のお世話で先天性サイトメガロウイルス感染症に?

妊娠中の母親の腹を見て新しい親
※写真はイメージです
AntonioGuillem/gettyimages

妊娠期に気をつけたい母子感染症に、先天性サイトメガロウイルス感染症と先天性トキソプラズマ症という病気があります。妊娠中に感染するとおなかの赤ちゃんに影響が出て、なかには障害を持って生まれたり、重症の場合には死産、流産につながったりすることもあります。自身も先天性トキソプラズマ症の10歳の女の子を育てており、患者会「トーチの会」代表を務める渡邊智美さんに話を聞きました。

生肉、加熱不足の肉料理などが感染源となるトキソプラズマ。妊婦さんが食べるのは危険

トキソプラズマとは、目には見えないほど小さな原虫です。感染したねこのおなかの中で増え、ふんの中に卵が出てきます。その卵が土や水の中などに入り込んで、ほかの動物や鳥に感染し、その筋肉の中に潜んでいます。

日本では、大人になってから感染することが多いです。健康な人が感染してもほとんど問題にならないのですが、妊婦さんが初めて感染すると、おなかの赤ちゃんも感染して流早産などが起こったり、てんかん、脳性まひや精神運動発達遅滞などの脳障害や網膜炎による視覚障害が起きたりする可能性があります。

主な感染経路は、生ハム、ローストビーフ、レアステーキなどの生や加熱不足の肉料理を食べることをはじめ、外飼いしているねこや野良ねこのふん、それらが混ざった土に触れた手を介して口に入ることなどです。

妊娠30週の妊婦健診で、おなかの赤ちゃんに脳の異常が見つかり、出産後、娘さんが先天性トキソプラズマ症と診断された渡邊さんも、原因は生肉だったのではないかと推測します。

「当時、私はこの病気のことをよく知りませんでした。知人らと焼き肉屋で妊娠のお祝いをして、当時はまだ飲食店での提供が認められていたユッケやレバ刺しなどをすすめられるがままに食べました。この病気が判明してから、原因となりそうなことを思い返しても、心当たりはこの1回の食事会だけです。
娘は生まれたとき、医師から“脳の障害があるから、おすわりなどはできないかもしれない”と言われました。10歳になった今は、脳性まひがあるため右足をひきずってはいますが、自分で歩いたり、自転車に乗ったりできています。また脳障害によるてんかんや学習障害もありますが、毎日楽しく学校生活を送っています」(渡邊さん)

先天性サイトメガロウイルス感染症の発症頻度は、ダウン症とほぼ同じ

母子感染症では、サイトメガロウイルスにも注意が必要です。サイトメガロウイルスは、決して珍しくないウイルスで、すでに感染していて抗体をもっている人も多いです。
しかし妊婦さんが感染すると、おなかの赤ちゃんも感染して、流早産したり、低体重で生まれたり、脳障害によるてんかんや脳性まひ、精神運動発達遅滞、進行性の感音性難聴が起きたりする可能性があります。

サイトメガロウイルスにおなかの中で感染する赤ちゃんは、全国で毎年2500人以上。そのうち何らかの症状が出る赤ちゃんは800人ほどと推定されています。これはダウン症とほぼ同じ頻度で、決してまれなことではありません。しかし、あまり知られていないのが現状だそうです。

「このウイルスは、専門家の間では研究が進んでいるのですが、医師であっても専門分野でないと詳しくない人もいます。というのも、健康な人であれば感染しても病気らしい症状が出ることは少なく、妊婦さん以外はほとんど問題がないためです。

しかし2018年から、先天性サイトメガロウイルス感染症を早期発見するための新生児の尿検査が保険適用になり、検査する施設も増えました。2021年にはスクリーニング尿検査の簡易キットも発売されています。また、生まれつきの難聴を早期発見するための新生児聴覚スクリーニング検査も全国的に広まってきていますが、これで難聴が疑われた場合、その原因として先天性サイトメガロウイルス感染症も同時に疑い、精密検査をすることで早期発見につなげられることも期待されています。こうした流れをくみつつ、母子感染症のことをもっと広く知ってほしいと思い、啓発活動をしています」(渡邊さん)

サイトメガロウイルスは、小さな子どもの唾液(だえき)や尿に含まれていることが多く、妊娠中、上の子のお世話をしていて感染する可能性も高いです。
しかしおむつ替えや唾液に触れたあとに手洗いを行い、子どもの食べ残しを食べない、食器を共有しないなど気をつければ、感染する可能性を下げられます。非常に大事なことなのに、こうした予防法について広く知られているとはいえない現状です。

「最近は、先天性サイトメガロウイルス感染症のことを聞いたことがあるママも増えていますが、なかには妊娠中、過剰に怖がって上の子との触れ合いを拒絶する人もいます。正しい知識があれば、そうした悲しいかかわり方はしないはずです。また、この病気のことを知らないために妊婦さんに“上の子が残したおやつ、もったいないから食べなよ!”などと言ってしまう人もいます。

このように知らないがために、よかれと思って妊婦さんに間違ったことを言ってしまうのは、先天性サイトメガロウイルス感染症だけでなく、先天性トキソプラズマ症にもいえることであり、そうしたことを防ぐためにも、多くの人に母子感染症についてもっと知ってほしいのです。

そこで昨年、絵本制作のプロジェクトを立ち上げました。絵本のタイトルは『もふもふライリーとちいさなエリザベス』です。この絵本を通して、ママやパパ、その周囲の人たちにも母子感染症に興味を持っていただき、正しい知識を得るきっかけにしてほしいと思っています」(渡邊さん)

母子感染症について興味を持ってほしくて、読みやすい絵本に

写真は、『もふもふライリーとちいさなエリザベス』より

『もふもふライリーとちいさなエリザベス』の原作は、先天性サイトメガロウイルス感染症により、重い障害を持って生まれ16歳で亡くなった、アメリカの女の子・エリザベスの半生を母がつづった、実話小説『エリザベスと奇跡の犬ライリー』(著者/リサ・ソーンダース)です。

「同小説は2017年1月に発行されました。しかし“小説だと読むのに時間がかかる”“情報量が多すぎる”などの声が聞かれたため、多くのママたちに母子感染症について興味を持ってもらうには、小説よりもっと気軽な絵本のほうがいいのではないかと考えました。
そして、できあがった『もふもふライリーとちいさなエリザベス』ですが、この絵本の目的は母子感染症について詳しい説明をすることではなく、あくまで興味を持ってもらうきっかけ作りです。

小さな子も楽しめるかわいいお話を読みながら、エリザベスのことをもっと知りたいと思ってくれた方には、ぜひ小説やトーチの会のホームページも読んでいただき、母子感染症の正しい知識を得てほしいと思います」(渡邊さん)

絵本『もふもふライリーとちいさなエリザベス』は、先天性サイトメガロウイルス感染症により、歩くことも、話すこともできない女の子・エリザベスのもとに、犬のライリーがやってきたことで、エリザベスや家族の心に灯りがともるストーリー。
この絵本はクラウドファンディングで医療関係者などの支援を得て制作されています。

お話・監修・写真提供/渡邊智美さん(トーチの会代表)、監修/森内浩幸先生(長崎大学医学部小児科教授)、取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

渡邊さんが代表を務める先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症
患者会「トーチの会」は、2012年9月に発足し、現在約100名の会員がいます(協力会員も含む)。病気に関する詳しい情報は、公式ホームページでも紹介されています。

先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症 患者会「トーチの会」

渡邊智美さん(わたなべ ともみ)

PROFILE:先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症 患者会「トーチの会」代表。歯科医師。わが子の病気の情報が少ないことに困った自身の経験から、自ら患者会を立ち上げる。

『もふもふライリーとちいさなエリザベス』

母子感染症で障害を持って生まれたエリザベスと、大きな犬ライリーの心温まる物語です。発売は2021年11月予定。ナカイサヤカ文。うよ高山絵。リサ・ソーンダース原作。(THOUSANDS OF BOOKS)

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