お産のときに「赤ちゃんが出てこない」場合に行われる医療処置って?
子宮口が開いて、赤ちゃんの頭がすぐそこまで下りきているのに、赤ちゃんが出てこない。あともうひと押しで出産、というときに赤ちゃんが出るのを手助けしてくれる医療処置について、帝京大学医学部附属病院の中川一平先生に教えてもらいました。
「会陰切開(えいんせっかい)」ってどんな処置?
赤ちゃんが出にくいときなどに、会陰を切開する処置です。会陰は、腟口と肛門の間の部分です。お産のときここが伸びて赤ちゃんが出てきます。“会陰切開”とは、赤ちゃんが出てきにくいときや、赤ちゃんの心音が下がって早く出してあげる必要があるときなどに、会陰を1~3cm切開する処置です。また、会陰の伸びが悪く、会陰が裂けてしまいそうなときにも行われます。
会陰切開は、「麻酔をする」→「切開する」→「縫合する」という流れで行われます。
1 麻酔 切開をする周辺に局所麻酔をします。一瞬チクッとしますが、陣痛の痛みでわからない人がほとんどです。
2 切開 医療用の先が丸いはさみで会陰を切開します。すると腟口が広がって赤ちゃんの頭が出やすくなります。
3 縫合 出産後、胎盤が出たら切開部を縫合。麻酔が切れた場合、再度、局所麻酔をするので医師に伝えましょう。
「会陰切開」をするケース
会陰切開を行うのは、以下のようなケースがあります。赤ちゃんに何らかのトラブルがあり、早く出す必要があるときのほか、ママの傷を深くしないために行うこともあります。
・心音が低下するなど、赤ちゃんを急いで出す必要があるとき
・吸引分娩や鉗子分娩(後述)をするとき
・会陰が伸びず、避けてしまいそうなとき
・初産の場合(産院の方針によります)
「吸引分娩」「鉗子分娩」ってどんな処置?
赤ちゃんが下りてきて頭も見ているのに、なかなか出られないときや、心音が低下するなど早く誕生させたほうがいいときに行う処置です。「吸引分娩(きゅういんぶんべん)」は丸いカップを赤ちゃんの頭に密着させて、「鉗子分娩(かんしぶんべん)」は金属製の2枚のヘラで赤ちゃんの頭を挟んで、ママの陣痛とともに、いきむタイミングに合わせて引き出します。
「吸引分娩」「鉗子分娩」の補助として医療者がおなかを押すことも
赤ちゃんを急いで出す必要がある場合に、吸引・鉗子分娩の補助として、医師や助産師などの医療者がママのおなかの上をまたぐようにして、または医療者がママの横に立って、おなかの上から赤ちゃんを産道に向かって押し出すようにすることもあります。この場合は、ママのいきむタイミングに合わせて押します。
監修/中川一平先生 取材・文/樋口由夏、たまごクラブ編集部
出産まであと一息というときに赤ちゃんが出てこなかったり、ママ自身が体力を消耗してしまったりするときは、ここで紹介したような処置が行われることがあります。また、最終的に医療処置を施しても赤ちゃんが出てこない、赤ちゃんの心音が下がるなどトラブルが生じた場合は、ママや家族の同意を得て帝王切開が選択されることもあります。
参考/『たまごクラブ』2021年1月号「ママもパパもあわてないために今から予習! 陣痛〜出産までのいざというときの医療処置シミュレーション」
中川一平先生
Profile
帝京大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科 助手。帝京大学医学部卒業。医学部入学前は、別大学で農学を専攻し、進学塾講師を務めるなど、異色の経歴の持ち主。塾講師時代に身につけたわかりやすい説明が、妊婦さんに好評。