陣痛開始から出産まで、「子宮口がかたい」「子宮口が開かない」ときに行われる医療処置って?
お産が近づくと、多くの場合、子宮口はやわらかくなってきますが、子宮口がかたいままだったり、子宮口があまり開いていなかったりする場合に医療処置を行うことがあります。どんな処置があるのか、帝京大学医学部附属病院の中川一平先生に教えてもらいました。
「卵膜剝離」ってどんな処置?
出産予定日近くなっても子宮口がかたく、お産が遅くなりそうだと医師が判断した場合や、お産が始まったあとに進まなくなった場合などに、医師が子宮口から指を入れて刺激をすることがあります。これが「卵膜剝離(らんまくはくり)」で、赤ちゃんを包んでいる卵膜と子宮の間を指ではがします。妊婦さんたちの間では“グリグリ内診”といわれることもあります。
「卵膜剝離」ってどんなことをするの?
医師が内診で子宮口に指を入れて卵膜をぐるりとなぞるように刺激します。予定日直前の最後の妊婦健診の内診のときに行われることも多いようですが、子宮口がかたく、お産が進まない場合には、お産入院してから行われることもあります。実際、卵膜剝離の処置を受けた妊婦さんでは、「一瞬のことなので、痛みを感じなかった」という声も。
「ラミナリア」ってどんな処置?
子宮口開大が3cm未満のとき、子宮口に棒状の器具(ラミナリア)を挿入すると、腟分泌物などの水分を吸収して膨張します。そのふくらむ力を利用して、子宮口を開かせる方法です。子宮口の開き具合により1本ずつ挿入し、5~10本入れ、24時間以内に抜きます。「ダイラパン」と呼ばれるものも。このあと、陣痛誘発剤を投与することが多いでしょう。実際は、違和感がある程度で、痛みを感じなかったという声がほとんど。挿入後も、歩いたり、トイレに行ったりしても構いません。
「ミニメトロ」ってどんな処置?
しぼんだ風船のような器具(ミニメトロ)を腟に挿入し、注射器で滅菌された生理食塩水を注入して、風船をふくらませることで子宮口を押し広げていく方法。風船は、子宮口が開く過程で自然に抜けるか、分娩時に赤ちゃんの頭に押されて抜けます。その形状から“バルーン”と呼ばれたり、“メトロ”と略したりすることもあります。40mlの生理食塩水を入れると直径3cmくらいの風船ができ、子宮口が広がります。痛みはほとんどありません。歩行やトイレもOKです。
監修/中川一平先生 取材・文/樋口由夏、たまごクラブ編集部
出産予定日が近づいても、子宮口がやわらかくならないことは珍しくありません。いざというときあわてないために、どんな処置があるのか知っておくと安心ですね。
参考/『たまごクラブ』2021年1月号「ママもパパもあわてないために今から予習! 陣痛〜出産までのいざというときの医療処置シミュレーション」
中川一平先生
Profile
帝京大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科 助手。帝京大学医学部卒業。医学部入学前は、別大学で農学を専攻し、進学塾講師を務めるなど、異色の経歴の持ち主。塾講師時代に身につけたわかりやすい説明が、妊婦さんに好評。