出産のとき「陣痛が始まらない」「陣痛が強くならない」場合に行われる医療処置って?【医師監修】
予定日が近くなると自然に陣痛が起こることが多いものの、陣痛が始まらない、始まっても強くならないという場合に、行われる可能性がある処置にはどんなものがあるのか、帝京大学医学部附属病院の中川一平先生に教えてもらいました。
「陣痛促進剤」の投与ってどんな処置?
子宮口が3cm以上開いていて、お産につながる有効な陣痛にならず、お産が長引いて母子ともに危険な状態になってしまうことを予防するため、陣痛を強くしたいときに使用します。また、予定日を過ぎても陣痛が来ないときなどに、お産を進めるためにも使われます。いずれも医師が判断し、ママの同意を得てから使用します。
「陣痛促進剤」の投与ってどんなことをするの?
主に点滴で投与されます。医療者が分娩監視装置で赤ちゃんの様子と薬の効き具合を見守りながら行います。なお、同じ内容の薬ですが、陣痛を起こすために使用する場合は「陣痛誘発剤」、陣痛を強くしたいときに使用する場合は「陣痛促進剤」と、使うタイミングや目的で呼び分けられています。
「人工破膜(じんこうはまく)」ってどんな処置?
赤ちゃんと羊水を包んでいる卵膜を指や器具を使って破り、人為的に破水を起こす処置のことを“人工破膜”といいます。破水すると赤ちゃんが下りてきて、赤ちゃんの頭が子宮口を刺激してお産が進み、陣痛が強くなります。子宮口が全開大になったにもかかわらず、有効な陣痛が来ないときなどに行われます。
「人工破膜」ってどんなことをするの?
赤ちゃんを包んでいる卵膜を指や器具を使って破ります。人工破膜によって、ママが痛みを感じることはまずありません。人工破膜の処置をされたとき、ママ自身にも羊水が出た感覚がはっきりとわかるようです。
また、医療者は分娩台の上でぬれないようにガードをして行いますが、羊水が勢いよく飛び散るので、ぬれてしまうこともあります。羊水が出ることで、一気に赤ちゃんが下りてきて、お産が進むことが多いです。
監修/中川一平先生 取材・文/樋口由夏、たまごクラブ編集部
予定日が近づいたり、予定日を過ぎたりしても、陣痛が来ない、あるいは、陣痛が来ても、陣痛が強くならない、途中で弱まってしまう、ということもよくあります。陣痛促進剤などの処置をするときは、必ず妊婦さんや家族の同意を得てから行うので、心配しないでくださいね。
参考/『たまごクラブ』2021年1月号「ママもパパもあわてないために今から予習! 陣痛〜出産までのいざというときの医療処置シミュレーション」
中川一平先生
Profile
帝京大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科 助手。帝京大学医学部卒業。医学部入学前は、別大学で農学を専攻し、進学塾講師を務めるなど、異色の経歴の持ち主。塾講師時代に身につけたわかりやすい説明が、妊婦さんに好評。