「え?赤ちゃんっておっぱい飲むものじゃないの?」妊娠中から知りたい、「母乳育児」の理想と現実
母乳育児の理想と現実から見えてきた落とし穴と、先輩ママたちが実際に困ったことを元に、スムーズに母乳育児を軌道に乗せるポイントをご紹介します。ママだけではなく、パパも一緒にぜひチェックしましょう!
授乳の理想と現実あるある①赤ちゃんはおっぱいを出せば勝手にゴクゴク飲む…訳じゃない!
出産前の授乳イメージでありがちなのが、おっぱいを出せば赤ちゃんが自ら吸ってくれて元気に飲んでくれるというもの。これは、母乳育児が軌道に乗った数カ月先の姿と思っておきましょう。
授乳はママと赤ちゃん、お互いにゼロからのスタートなので、最初から理想通りにはなかなかいきません。赤ちゃんの抱き方やおっぱいの支え方、乳首のくわえさせ方などの基本を守り、頻回授乳あるいは、さく乳を正しく続けることで、母乳の分泌が増え、赤ちゃんも上手に飲めるようになるでしょう。
授乳の理想と現実あるある②甘いものを控えれば母乳は詰まらない…訳じゃない!
授乳中は、甘いものやジャンクフードを控えていれば母乳は詰まらないと思っているママも多いようですが、母乳の詰まりや乳房の痛みの原因は、食べ物だけではありません。
むしろ、疲れやストレスから授乳回数が減ったり、授乳時間が短くなったり、吸わせ方が浅かったりすると、母乳が乳房内にとどまったままに。すると、おっぱいが張って痛みが出てしまうのです。
授乳中は食べ物を気にするのではなく、正しい授乳姿勢や、授乳ペースをなるべく崩さないことを心がけましょう。“カラダとココロは休めて、おっぱいは休ませず”が鉄則です。
授乳の理想と現実あるある③母乳は産後すぐからシャーシャー出る…訳じゃない!
母乳の出には個人差がありますが、最初の2〜3日は少なくて当然。また“母乳量が少ないから赤ちゃんがうまく吸えない”と思うのもよくある誤解です。
最初は母乳の出が少なくても、頻回授乳あるいはさく乳の併用により、母乳の分泌量が増えてきます。そして、自然と赤ちゃんとの扱いにも慣れるため、母乳育児はスムーズに進んでいきます。母乳が出る・出ないの原因のほとんどは体質ではなく、正しい抱き方や痛くならない飲ませ方にあると思って。
母乳育児のための体づくりなどは、無理のない範囲で取り組めばOK。あまり気負わず、できる範囲で取り組みましょう。
授乳の理想と現実あるある④産後1週間もすれば授乳の合間に家事もできる…訳じゃない!
これは、ママの周囲の人たちが描きがちな理想像。ママは入院中に母乳育児をマスターしてきて、退院したら授乳も家事も両立できると思っているパパは意外と多いようです。
母乳育児の大変さの理解のズレはママのストレスにつながり、ストレスは母乳の出にも影響します。そうならないためにも、母乳育児の知識は、ママだけでなくパパにも必要。
妊娠中から家事やお世話の分担を具体的に話し合い、母乳育児をスムーズに乗り越える態勢を2人で作っておきましょう。
正しい母乳の飲ませ方とうまくいくコツを先取りチェック!
おっぱいの支え方
【3本の指でおっぱいの下側を支え2本の指で乳輪に圧を加える】
授乳は、赤ちゃんが乳首を深くくわえられればスムーズに進み、乳首トラブルも防げます。そのためには、「Cホールド」と呼ばれる乳房の支え方がポイントに。小指、薬指、中指の3本でろっ骨のほうから乳房を持ち上げるように支え、親指と人さし指で乳輪周辺をつかむように圧を加え、吸いやすい形にします。
赤ちゃんの支え方
【赤ちゃんは耳の後ろを支える】
含ませている乳房の反対側の手で、赤ちゃんの耳からうなじ辺りをやさしくしっかり支えます。母乳を吸わせようと必死になると、赤ちゃんの後頭部を持って乳房に引き寄せがちに。そうなると、赤ちゃんはあごが引いた状態になってしまい上手に吸えないので要注意。
赤ちゃんの口元の高さ
【赤ちゃんの口元は乳首の高さに調整】
授乳中、赤ちゃんのおなかはママのおなかとしっかり密着させ、口元がママの乳首の高さに近くなるように高さを調整します。ママの腕や肩、背中などに負担がかかるなら、授乳クッションなどを使うとやりやすくなります。赤ちゃんに、覆いかぶさるような姿勢はNGです。
乳輪まで深く含ませる
【赤ちゃんの下あごを支点にして深く含ませる】
授乳は、乳首を深くくわえさせて行うのが基本です。“吸う”というより、“ハムハム”しながらおっぱいを食べてもらうイメージを持つといいでしょう。そのためには口を大きく開けてもらうことが必須。下記の2つの手順を押さえておきましょう。
(1)
赤ちゃんの下あごを乳房につけ、そこを支点に下唇を下げて口を大きく開かせる。
(2)
赤ちゃんを引き寄せるようにして、乳輪部が見えなくなるくらい、深く含ませる。
母乳育児のありがちピンチ Q&A 乗りきりテクを先取りチェック!
Q 母乳育児でこんなに寝不足に なるなんて…。とにかく眠い〜
A
赤ちゃんが寝たときは家事ではなく眠るor 休憩を!
新生児期は授乳回数が多く、夜間も続くので多くのママが睡眠不足に陥ります。産後1カ月くらいまでは、赤ちゃんが寝たらママも休む態勢にして家事は最低限に。さく乳したものをパパが赤ちゃんにあげてママはその間休むなど、パパも巻き込んで一緒に子育てすることも忘れずに。
Q ちゃんと飲めているか、 母乳がたりているか、めっちゃ不安
A
母乳がたりているかは赤ちゃんの
うんちやおしっこの量で判断できます
母乳やミルクがたりているかは、うんちやおしっこの量と回数で判断できます。新生児期のうんちは1日に3回、Mサイズの卵大ほどの量が出てればOK。おしっこは、紙おむつの前後がぬれる量が5〜6回出ていれば○。1日の量と回数に大きな隔たりがなければ、十分に飲めているはずです。
Q 乳首が切れて痛すぎる。 …母乳育児、挫折しそうです(泣)
A
乳頭保護器やさく乳器など
サポートグッズを賢く使おう
乳首に傷ができて授乳がつらいときは、一度さく乳したものを赤ちゃんにあげてみましょう。傷が落ち着くまで乳首を休ませられるし、さく乳で母乳の分泌を促すことも可能。さく乳したものは、パパがあげられるメリットも。さく乳で母乳の分泌量が増えてきたら、乳頭保護器を使って授乳してもOKです。
産後、授乳が始まって理想のイメージと違って戸惑ったり、授乳トラブルに直面して痛みやツラさに悩むママは多いです。妊娠中に正しく母乳育児のことを知っておけば、悩みに直面したときの助けになり、スムーズに乗り越えられるでしょう。
(イラスト・上田惣子 文・早田佳代、たまごクラブ編集部)
参考:『たまごクラブ2021年2月号』「「母乳育児」で先輩ママが困ったこと先取り解決」
監修/鳥越敦子さん
Profile
芥川バースクリニック助産師。 助産師歴11年。妊婦健診やお産の現場、産後の育児指導にあたる。