「保育園での感染対策が不安…」親ができることとは?
春、新生活がスタートして進級したり、新入園という家庭も多いことでしょう。子どもが保育園生活をスタートさせたママやパパは、家事・育児と仕事の両立に向けて、緊張したり不安に感じていることも多いかもしれません。今年はさらに新型コロナの感染リスクも心配ごとの一つ。保育園の感染対策に不安や疑問を感じたとき、親にはどのようなことができるのでしょうか。保育園を考える親の会の代表、普光院亜紀さんに聞きました。
集団生活での感染が心配…園の対策と保護者が考えるべきこと
――保育園ではどのように新型コロナ対策が採られているのでしょうか?
普光院先生(以下敬称略) 保育園では新型コロナウイルスに限らず、厚生労働省の感染症ガイドラインを基本としています。また、全国保育園保健師看護師連絡会による「保育現場のための新型コロナウイルス感染症対応ガイドブック」では、保育園の事情を踏まえながら、最大限の安全をめざした対応策が提示されていて、これらを参考に適切に対策を採っているところが多いと思います。
手洗いの回数やタイミング、室温を保ちながらの換気、保育室やおもちゃの消毒などの対策をきちんと行うことは大事ですが、保育園の新型コロナ対策は地域の感染者数の状況、保育園の状況によって判断が変わる部分もあるので、一律に決められるものではありません。
また、子どもの集団生活で完全な無菌状態をめざすのは無理があります。さらに、子どもは保育士と向き合い、かかわり合うことで心が育っていくものです。子ども同士のかかわりも社会性のはぐくみに欠かせないものです。そういった育ちに不可欠な環境の提供と感染防止対策のバランスを考えながら、各園で悩みながら保育をしているのが現状です。
――保育園が行っている対策について、保護者はどのように知る手段がありますか?
普光院 お便りや連絡アプリ、ホームページなどですでにお知らせしているところもありますが、できれば保育園側は、どういう理由からどのような対応をしているのかを、オンラインなどで保護者全体に説明する機会を設けたほうがいいでしょう。
なぜなら、衛生感覚や危機意識は保護者によって、あるいは子どもの年齢によっても全然違うからです。たとえば行事を中止にする判断をしたときに「そうですよね」と理解を示す人もいれば「行事をやらせてあげたいのに」と難色を示す人もいます。
コロナ禍こそ、保育園と保護者の協力、そして信頼関係が必要な時期なのに、意思疎通がうまくいかずその関係が崩れてしまうのは避けたいことです。
そのためにも保育園側は保護者の不安や疑問は聞き取り、子どもの安全面からどこまでどのように対応できるかなど、十分な説明をしたほうがいいでしょう。
保護者側も、保育園の方針を理解しようとする必要があります。もし説明不足と感じるならば、保護者の側から働きかけてもいいでしょう。感情的に責めるのではなく、「もう少し対応について理解して協力したいので説明会を開いてくれませんか」などと、ていねいにお願いをしてみるといいと思います。
保護者同士も声をかけ合い、工夫してこの時期を乗り越えよう
――保育参観の機会も減少する中で、子どもの様子を知るためにどんな方法がありますか?
普光院 新型コロナ以降、施設内に保護者が立ち入りをしないよう、送迎は玄関で子どもと荷物を預ける、という対応をしている保育園も少なくないようです。
コロナ以前は、お迎えのときに保育室をのぞくのを楽しみにしていた保護者も多かったでしょうから、保育の様子がわからず、不安やストレスも感じるでしょう。
保育園によっては、スマートフォンの連絡アプリなどで、写真とコメントを一斉配信できるようなしくみを取り入れているところも。ホームページで子どもたちの様子がわかる写真を掲載して知らせているところも見られます。このような工夫をしてもらうことも一つですね。
あとは、保護者会をオンラインで開催するなら、担任の先生から説明を聞きながら、画像や動画で子どもの様子を知らせてもらうこともできるでしょう。
コロナ禍こそITの力を大いに活用し、みんなで工夫してこの時期を乗り越えていきたいですね。
――保護者同士のつながりが希薄になっていることで、より不安に感じる面もあるのでしょうか。
普光院 2021年度春入園の保護者同士は、変異株の感染拡大などもあり、もしかしたら連絡先の交換ができていないかもしれませんね。それはちょっと心配です。
コロナ以前は、送迎時に声をかけ合ったり、少し立ち話をして仲よくなったりしましたけれど、今は門で子どもを預けたり、迎えたりしたら親はすぐに帰らなければならず、あいさつすらできない状態です。それでは、保護者同士の信頼関係が作りにくいですよね。
0〜1才の時期は、子ども同士のかかわりで、ひっかきやかみつきといったトラブルもある時期。顔も知らない同士でトラブルがあると、関係が悪化してしまうことがあります。
たとえばオンライン保護者会があったら、誰かが幹事になりクラスのグループLINEを作りましょうと提案するとか、保護者同士のつながりを作ってもらうように保育園にお願いしてみるのもいいと思います。直接は会えないかもしれませんが、保護者同士の連絡先がわかれば、オンラインでランチ会をしたり、感染リスクの低い公園で集まってみたり、などと工夫して情報交換の機会を作ることもできるでしょう。
お話・監修/普光院亜紀さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
新型コロナウイルスの状況は日に日に変わり、保育園でも保健所の指導のもと対策を採っています。先の見えないコロナ禍こそ、保育園と保護者が協力して健やかな子どもの育ちを見守りたいものです。