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「2歳児がタバコが浸っていた液体を誤飲…」タバコの誤飲は、なぜなくらないのか?【専門家】

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※写真はイメージです
ilkercelik/gettyimages

健康増進法が改正され、2020年4月から分煙が義務化されました。社会の禁煙化は進んでいるものの、子どものタバコの誤飲事故はゼロになりません。40年にわたり禁煙活動に取り組む、十文字学園女子大学教授健康管理センター長 齋藤麗子先生に、日本で禁煙が進まない理由について話を聞きました。

喫煙する家庭の子からは、尿からニコチンの代謝産物が検出されることも!

齋藤先生が禁煙活動を始めたきっかけは、小児科臨床医時代や保健所長としての経験からだと言います。

「約40年前のことですが、タバコの誤飲で救急外来に運ばれた子どもの胃をよく洗浄しました。その後、保健所長として保健所でも勤務したのですが、タバコを吸っている家庭の子からは、尿中コチニンが検出されます。

コチニンとは、ニコチンが体内に吸収されるとできる代謝産物です。尿内に排出されたコチニン(尿中コチニン)を測定することで、どれだけタバコの煙が体内に入っているかわかります。尿中コチニンは、喫煙者本人はもちろんですが、受動喫煙によっても検出されます」(齋藤先生)

齋藤先生は平成15年度、保護者の同意を得て、乳幼児健診で子どもの受動喫煙の実態について調査をしました。

「4カ月の子のママは、妊娠前から喫煙者で、産後も喫煙を継続。夫婦ともに1日5本、家庭内の換気扇の下などで喫煙していたところ、子どもの尿中コチニンは168μg/mgクレアチンでした。4カ月の子の数値としては深刻です。このままの状態では肺炎、気管支炎、ぜんそく、中耳炎などのリスクが高まります。

喫煙による健康被害を防ぐため、私は約40年にわたって禁煙活動を続けていますが、タバコの誤飲事故はゼロにならないのが現状です」(齋藤先生)

タバコの誤飲事故の起こりやすい年齢と事故事例

消費者庁が2021年1月に行ったインターネット調査(※1)では、保護者が喫煙する家庭の2割で「乳幼児がタバコや吸い殻を口に入れた」または「入れそうになった」ことがわかっています。
※1有効回答者数500人・全国の20~60歳代を対象に、0~6歳の子どもと同居しており、現在、タバコを喫煙する人を抽出した調査。

タバコを誤飲しそうになった年齢は0~2歳が多い

誤飲しそうになった年齢(複数回答)
消費者庁の調べでは、タバコを誤飲しそうになった年齢は0~2歳が多いことがわかりました。
誤飲しそうになったタバコの置き場所はそれぞれ。「テーブルの上」「大人の衣類のポケット」「棚の上」「灰皿」などが多いようです。

またタバコの誤飲事故として、医療機関ネットワーク事業(※2)を通じて寄せられた事故事例を紹介します。

【使用前の紙巻きタバコを誤飲/1歳男児】

保護者が家事で目を離した2~3分の間に、年上の子と別室で遊んでいた子どもが、保護者のかばんからタバコを箱ごと取り出し、中身を出して口に1本くわえていた。床にはタバコの葉が散乱。指を入れて1回嘔吐させ、心配で救急を受診した。

【タバコが浸っていた液体を誤飲/2歳男児】

玄関に置いているタバコの吸い殻入れに使用していたコーヒー缶を飲んだと、子どもが話した。保護者や上の子は、別の部屋にいて見ていない。タバコのにおいがして、吐き気があるため受診。胃の洗浄後、牛乳を飲ませて3時間経過観察を行う。ニコチン中毒の症状がないため帰宅。

※2 医療機関ネットワーク事業は、消費者庁と国民生活センターとの共同事業。消費生活において生命または身体に被害が生じた事故情報を、事業に参画する医療機関から収集するもので、2010年12月から運用を開始。

乳幼児がいる家庭で喫煙が続くのは、ニコチン依存症が原因

齋藤先生によると、タバコの誤飲事故のリスクなどがあるにも関わらず、乳幼児がいる家庭で喫煙が続くのは、ニコチン依存症が原因と言います。

「タバコを吸うと、ニコチンが数秒で脳に達し、快感を得るドパミンという神経伝達物質が放出されます。同時に‟また、もう1本吸いたい‟という欲求が生まれ、やめることができなくなります。今、日本ではニコチンを含む加熱式タバコのシェアが伸びています。しかし、ニコチンを含まない電子タバコは、あまり普及していません。これもニコチン依存症が根深い証拠です」(齋藤先生)

また日本は、タバコに対して寛容すぎるとも。

「日本のタバコのパッケージは、小さな文字で健康被害について少し触れている程度ですが、海外は写真つきのパッケージで健康被害を警告しています。たとえばペルーのタバコのパッケージには“タバコはぜんそくを誘発する”と酸素マスクをつけた子どもの写真が使われているものもあります。シンガポールでは“喫煙は早産の原因になる“と胎児の写真が使われているものもあります。オーストラリアでは、紙巻きタバコは1箱3000円以上します。日本もこのぐらいの取り組みをすると、喫煙率は下がると思います」(齋藤先生)

乳幼児ファミリーは、サードハンド・スモークにも要注意

喫煙が周囲に与える害というと受動喫煙(喫煙者がそばにいることで、有害物質を含むタバコの煙を吸わされてしまうこと。タバコを吸わない人でも、継続的な受動喫煙で健康に影響が出ることがわかっています)がよく知られていますが、サードハンド・スモーク(3次喫煙・タバコを消したあとに、残留する化学物質を吸入すること)というのもあるそうです。

「サードハンド・スモークとは、たとえばベランダに出て喫煙していたパパ(ママ)が部屋に戻ってくると、髪の毛や衣類などについた、目に見えないタバコの有害成分が与える影響のことです。サードハンド・スモークは、加熱式タバコでも同様です。

赤ちゃんがいる家庭では、有害成分がついた服のまま、赤ちゃんを抱っこしたりすることもあるでしょう。また有害成分は、時間とともに下に落ちて行きます。とくに赤ちゃんは、はいはいなどで床を触ったり、床に置いているおもちゃをなめたりすることも多いので健康への影響が心配されます。

新型コロナウイルスに感染すると喫煙者は重症化する傾向があります。アメリカの文献調査でも明らかになっています。喫煙者はタバコにより気管支や肺胞にダメージがあるうえ、免疫も低下していることが要因です。またイギリスでは5万3000人を対象に調査したところ、非喫煙者に比べて喫煙者は、新型コロナウイルスに2倍も感染していました。
自分自身の命だけでなく、大切な家族を守るためにも、禁煙を真剣に考える時期に来ていると思います」(齋藤先生)


データ提供/消費者庁・国民生活センター 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

お話・監修/齋藤麗子先生

小児科の中には、タバコの誤飲事故を2回繰り返した家庭は、保健所に報告することもあるようです。齋藤先生も「子どもの近くでタバコを吸ったり、手の届く場所にタバコを置くなど誤飲事故が起きるような環境で育てるのは虐待と同じ。喫煙する人には、そのぐらいの意識を持ってほしい」と言います。

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