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【小児科医リレーエッセイ 28】子どものお口の健康は5歳までで決まる。小児歯科で診るのは、歯だけじゃない

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母と彼女の子
※写真はイメージです
violet-blue/gettyimages

「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から、子育てに向き合っているお母さん・お父さんへの情報をお届けしている連載です。今回は、千葉県・とのぎ小児歯科院長の外木徳子先生からのメッセージです。外木先生は「小児歯科はむし歯になって通うところではなく、歯が生える前から赤ちゃん・子どもの健やかな成長を見守る役目がある」と言います。

小児歯科って?何をするところ?

小児歯科は、むし歯になったら来るところ?むし歯になる前に歯を予防するところ?実は小児歯科は、歯が生えてくる前からのお口の健康や、体の健康を育てる場所でもあるのです。

歯科は、病気でなくても長期にわたって定期的に通院する科です。とくに小児歯科は小さいころから定期的に2カ月から4カ月の間隔でその子の成長を診ていきます。それは口の中の成長、発育だけではなく、体全体の発育、心の発育、その子を取り巻く環境の変化をしっかり診ていきます。だからこそ、その時々に合ったアドバイスをしたり、適切な早期介入をしていくことができるのです。そうした意味でも、小児歯科と小児科が緊密に連携することはとても大きな意味を持っていると考えています。

歯が生えていない時から歯医者さんに行って何するの?と思われる人もいるかもしれません。ところが、歯が生えてくるまでにその後の健やかな成長に向けて知っておくべきこと、やっておいたほうがいいことがたくさんあるのです。たとえば、離乳食についても小児歯科では、その子の成長に合った進め方の指導をすることで、お口の機能(食べること・発音すること・鼻呼吸すること)をしっかり育てていくことができます。

今の世の中ですから、ネットで検索すればいろいろな情報が簡単に入ってきます。しかし、それがすべてわが子にとって有益な情報かどうかはまったくわかりません。その子、その子により状況が違うので、それを実際に診てアドバイスしてくれる場所を見つけておくことが大事です。

5歳までが肝心。子どものお口と歯とのつき合い方

5歳、という年齢が一つの区切りになるのは以下のような理由によります。

1つ目、歯の質について。乳歯の質は実はお母さんのおなかにいる間にほとんどが決まります。赤ちゃんが生まれる前からのお母さんの健康状態や生活状態もたいへん重要です。そして、5歳ごろには大切な永久歯の土台となる部分が骨の中でほとんど出来上がります。だからこそそれまでの栄養状態や、生活リズムを整えることが大切なのです。

2つ目、かみ合わせや歯並びの基礎について。3歳くらいで乳歯がすべて生えそろい、奥歯でしっかりかめるようになります。ここからしっかり奥歯を使ってかむことであごが発育してくるから5歳までが大切なのです。

3つ目、味覚の完成について。味覚の完成は5歳ごろだといわれています。早くから甘いものを覚えると味覚音痴になりやすいです。

4つ目、発音について。言葉の発音も5歳が重要です。それは舌や唇や頰などがしっかり動くようになるからです。

このように、5歳まででお口に関するいろいろなことがほぼ決まると言われているのです。そして最後にとても大切な心の発達について。5歳ごろには子どもの心も大人と同じくらいに成長していきます。社会生活を送る上でのルールを身につけたり、約束事も守れるようになります。ほとんどの歯科治療が一人で乗り越えられるようになります。

歯磨き嫌いにならないためのアドバイス

お口の中の感覚は、体全体で見ても最後まで敏感性が残りやすいところです。だから子どもの歯磨きは大変だと悩む保護者が多いのです。

そこで赤ちゃんのうちから少しずつ口の中の過敏性をなくしていくことが必要です。赤ちゃんのおもちゃしゃぶりや指しゃぶりはそういった意味があるのです。急に大人が指を口の中に入れると赤ちゃんはびっくりします。だから足や指のように中心から遠いところからゆっくり優しく触ってあげるようにします。少し圧をかけて、ゆっくりなでるようにして、触覚と圧覚の育成をしていきます。そうすると、お口の中に歯ブラシやお母さんの指が入っても嫌がらなくなります。このようなアプローチのしかたも小児歯科で教えてもらえるということ知っていましたか?

もちろん、小さな子どもの診療をあまりやっていない診療所では難しいかもしれません。日本小児歯科学会が認定している小児歯科専門医は日本小児歯科学会のホームページにも表記されていますので、自分の家の近くを第1選択にするといいでしょう。

小児歯科での体験が子どもを育てる

また、子どもの精神発達において、嫌だけれど、頑張って乗り越えなくてはならないものがたくさんあります。小児歯科での体験にはそれらのものがたくさん盛り込まれています。お母さんと離れて一人で頑張れる、いろいろな新しい器具・音・感触を学習する、自分で自分の体をきれいにすることの体験をする、歯科の予防処置を体験する、などです。歯科のむし歯処置を体験することもあるでしょう。最初は泣いていた子どもが、頑張ってそれを達成できた時の満足した顔、キラキラ輝く瞳、体じゅうで表現するうれしさ、私たちはそういった子どもの姿を見ることにこの上もない幸せを感じます。

私が大学勤務時代からずっと見てきた子が、今年3歳になる子どもを連れてクリニックにやってきました。中学生のころ、反抗期で親とも口をきかないころもありました。突然金髪になってやってきたこともありました。彼女と一緒に診療室を訪れてきたこともありました。結婚の報告を一緒に喜び、子どもの誕生を祝い、このような関係の子(?)たちがだんだん増えてきました。保護者の方としだいに心が通い合い、なんでも相談できる存在になれることに生きがいを感じています。

文/外木徳子先生(とのぎ小児歯科 院長)

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