その行動、しつけじゃなくて体罰かも!?子どもが受ける脳とココロのダメージとは
2020年4月に法改正が行われ、児童に関する法律に“子どもへの体罰禁止”と明記されたことをご存じでしょうか。「体罰なんて人ごと」と思うかもしれませんが、たとえば“子どもの手の甲をたたくこと”も体罰に含まれるのです。
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、体罰について2021年に最新のアンケート結果を発表しました。今回、そのアンケート結果をもとに、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに体罰について話を聞きました。
「しつけ」と「体罰」の違いって?
「しつけのために、子どものおしりをたたいた」といった声をたまに聞くことがあります。そもそも、しつけと体罰は何が違うのでしょうか? 厚生労働省は、下記のように定義しています。
【しつけ】子どもが社会で自立できるようにサポートする
【体罰等】身体に苦痛や意図的な不快感を与える行為、こころを傷つける行為
つまり、おしりをたたいたことで子どもが痛みや不快な思いをした時点で、体罰となるのです。
数字から「体罰への容認」の変化を見てみましょう
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、2017年に2万人を対象にした調査(※1)によると、「しつけのために子どもに体罰をすることを容認する親」は、全体の約60%を占めていました。
それが2021年の最新調査(※1)によると、約40%に減少しています。
※1) 2017年、2021年調査ともに、対象は全国20歳以上の男女(子どもあり男性5,000人、子どもあり女性5,000人、子どもなし男性5,000人、子どもなし女性5,000人)
その主な理由(※2)として、「虐待など痛ましいニュースを見聞きしたから」「体罰等が子どもに与える影響を知ったから」という回答が多数見られました。「体罰等が子どもに与える影響」とは、どんなものがあるのでしょうか。
※2) 1年前は体罰を容認していたが、今は容認しなくなったという回答者2666人にその理由を聞いた結果
うつ病につながる!? 体罰が脳に与える影響
最近の研究で、体罰が脳に与える影響がわかってきています。福井大学・友田明美先生の発表によると、体罰によって、子どもの前頭前野の一部の容積が19.1%も小さくなっていたことが判明。この前頭前野は、感情や思考をコントロールして、犯罪抑制力にかかわっている部分です。
また、集中力・意思決定・共感などにかかわる脳の部位にも影響が出ていることが明らかになりました。
つまり、体罰は、うつ病のひとつである感情障害や非行を繰り返す素行障害につながることがわかったのです。
言葉の暴力も脳に大きな影響を与えます
言葉の暴力によっても、脳にダメージを与えることがわかっています。物心ついたころから、暴言による虐待を受けた人たちの脳を調べた結果、聴覚野という部分が変形していました。
聴覚野は、言語やコミュニケーションに重要な役割を果たす部分。つまり、他人の言葉を理解する、会話をすることなど、コミュニケーションに影響する恐れがあるのです。言葉の暴力は、心や脳を傷つけていることを忘れてはいけません。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、体罰と“子どもの権利”について情報を発信しています。詳細は下記へアクセスを。
https://www.savechildren.or.jp/lp/banningphphub/
取材協力・資料提供/公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 取材・文/ひよこクラブ編集部
よく「私が小さいころは、親にたたかれていたけれど、悪影響なんてない」といった声がありますが、時代は変わっています。思い通りにならない育児にイライラし、つい手をあげてしまうこともあるかもしれません。けれど、「しつけ」と「体罰」はまったく違うものであり、体罰は子どもの体だけでなく、心や脳を傷つけていることを認識し、子どもと向き合っていきたいですね。
Profile
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
セーブ・ザ・チルドレンは、子ども支援活動を行う、民間・非営利の国際組織です。日本では、1986年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが設立され、国内外で、行政や地域社会などと連携し、子どもたちとともに活動を行っています。国内では、子どもの貧困問題解決や子ども虐待の予防などに向けた事業のほか、大規模災害における緊急・復興支援を通して、子どもの権利を実現する活動を行っています。