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「これって教育虐待なの?」子どもの成長を妨げるボーダーラインとは【専門家】

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台所で描く女の子
maruco/gettyimages

コロナ禍でマスクや手洗いなど、子どもも気をつけなければいけないことが増えました。しかし、子どもがルールを守ろうとして親や周囲の空気を読みすぎると、自己肯定感が低くなってしまう恐れも。子どもの自己肯定感をはぐくむために親はどんな接し方をするべきか、青山学院大学教授で小児精神科医の古荘純一先生に話を聞きました。

自己肯定感が低くならないルール作りのポイント

――子どもの成長とともにルールを守るようにしつけなければいけない場面も増えます。自己肯定感が低くならないよう注意をするにはどうすればいいでしょうか?

古荘先生(以下敬称略) 子どもが空気を読みすぎてしまう理由の一つに、ルールの多さがあります。園でも家庭でもあれこれダメと言われ、興味や言動を否定され続ければ、どうしたらいいかわからなくなり、自己肯定感が下がってしまうことにつながります。ルールをきちんと守ろうとする「よい子」ほど注意が必要です。

まず、3才前くらいの子どもには、しからなくてもすむように環境をできるだけ安全に整え、危険な場面を最小限にする工夫が必要です。3〜4才くらいになると、過去の行動を反省したり、未来のことを計画したりできるようになってくるので、少しずつルールをわかるようになってくるでしょう。

家庭内ルールを作るときは、親が一方的に決めないことが大事。子ども本人がルール作りに参加して、親子で一緒に「これならできそうだね」と相談して内容を決めましょう。いきなり難しいルールにせず、少しずつ目標に近づけるような“スモールステップ”にすることがポイントです。

ただ、一度ルールを決めても、次の日から毎日必ず守れるわけではありません。そこでしかってしまうのは逆効果。ルールを守れたときにはほめて、守れなかったら「次はうまくいくようにしようね」と声かけをするといいでしょう。

――子どもと一緒に決めたルールでうまくいかなければ、考え直してもいいですか?

古荘 そうですね、やってみてハードルが高すぎた場合は、「これならできそうかな?」と子どもと相談して変更しましょう。一度決めたことは必ず守らないといけないのではなく、実現可能な“スモールステップ”にすることはとても有効です。

たとえば「帰宅したら上着をフックにかけよう」と決めてもなかなかうまくいかないなら、「上着を脱いだらカゴに入れよう」という形に変えてみる。いつも上着をカゴに入れられるようになったら、「今度はこのフックにかけられるともっといいね」という次の指示にもつながります。

教育虐待にならないために、気をつけたい接し方

――子どものために早期教育をさせたい場合、“教育虐待”にならないよう、どんな注意が必要ですか?

古荘 幼児期からの習い事はたくさんありますね。子どもが興味を持っていることを取り組ませるのはいいとは思いますが、だからといってあまり急いでハードルを上げすぎる必要はないと思います。なぜなら、2〜4才の子どもは、発達段階として興味関心がどんどん移り変わる時期。集中力もないしすぐに飽きてしまうことは当然です。

たとえばスイミングに飽きてサッカーに興味がうつっても、しばらくしてまたスイミングをやりたいということもあります。そのとき「自分でやめると言ったんだからもうダメだよ」「自分でやると決めたことは簡単にやめてはいけない」などと言うのではなく、2〜4才の子どもはそういうこともありうるという認識を持っているといいと思います。

一方で、習い事にすごく興味を持っているからと、親が期待をして、どんどんハードルを上げてしまうのは考えもの。ハードルを上げて、その目標が達成できないと厳しく怒ってしまうことは、“教育虐待”という心理的虐待の一つです。「子どものために」と思うと親は気づきにくいですが、教育を押し付けていないか意識する必要があると思います。
子どもが楽しんで取り組んでいるなら、自主的に次のステップにいくことを見守るくらいの姿勢がいいでしょう。

――子どものこととなると、親はついあせったり、熱心になったりしてしまいがちですが…

古荘 幼児期に一つのことを徹底して極めるよりも、多くのことを体験した子どものほうが、後の技能の習熟がむしろ高いのではないかという考えもあります。早期教育を行うとしたら注意したいですね。

将来子どもが社会的に生きていくためには、自己肯定感や愛情のベースがあることが重要です。まずは親子関係の基本がしっかりした上で、習い事をさせるなら、長い目で見て、ゆとりを持つことが大事です。それが、子どもに過度のプレッシャーをかけないことになります。

夫婦でほめ合うことが子どもの自己肯定感につながる

――社会が子育てに寛容でなく、親も周囲の目を気にしすぎてしまうことも。親が自信を持って子育てをするにはどうすればいいでしょうか?

古荘 子どもの自己肯定感には、親の自己肯定感が影響します。親が自己肯定感を高めるためには、夫婦でほめ合うといいですよ。恥ずかしかったら、まずは「ありがとう」と感謝の言葉を伝えることから始めましょう。

コロナ禍ということもあり、注意される機会が多い世の中ですが、少なくとも家庭という安心安全な環境の中では、お互いを高め合い、ポジティブな面を認め合っていきましょう。お互いほめ合うことが自己肯定感をはぐくみますし、一緒に子育ての喜びを感じることができるようになると思います。

基本的に、子どもは子ども、親は親です。親も子も、自分のやりたいことを自分で決めて実行する権利を持っています。子どもの困りごとは、親の自分にすべて責任があると感じて自分を責めることもあるかもしれません。けれど、子どもは自分で道を切りひらく権利を持っているし、成長するにつれ自分で社会性を身につけるもの。親は子どもの意思や選択を信じて、あたたかく見守ってあげれば十分だと思います。

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/古荘純一先生

社会的なルールを守ることは大事ですが、親が責任を感じすぎ、子どもに一方的に注意してばかりでは逆効果です。子どもが前向きに生きる力をはぐくむために、親も子もほめ合って、ポジティブな気持ちを共有しましょう。

空気を読みすぎる子どもたち

自分より空気を大事にし続けていると、つらさを内面に抱え込み心の病になることも。子どもの本音を図解しながら自己肯定感を育てるコツ、上手な見守り方やしかり方なども紹介。(講談社)

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