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幼児期のインクルーシブな教育が将来の日本を支える?メリットは?【専門家監修】

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廊下で手をつないで小学校子供の実行をクローズ アップ
※写真はイメージです
monkeybusinessimages/gettyimages

インクルーシブ教育システムとは、多様な子どもたちが可能な限り、同じ場でともに学ぶことをめざす考え方で、今後の日本の教育において重要な考え方です。
インクルーシブ教育システムに詳しい、独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 インクルーシブ教育システム推進センター上席総括研究員 久保山茂樹先生に、幼児期のインクルーシブな教育について聞きました。

多様な子どもたちに対応するインクルーシブ教育システムとは!?

「インクルーシブ教育システム」という言葉を聞いたことはありますか。国連の「障害者の権利に関する条約」の中に記されています。多様な子どもたちが可能な限り、同じ場でともに学ぶことをめざす考え方で、その構築に向けて、日本でもさまざまな教育実践が行われています。同じ場でともに学ぶことをめざすと同時に、一人一人の子どもの教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供するための、多様な学びの場を用意することも必要だと考えられています。

保育所・認定こども園・幼稚園の中にも「インクルーシブ教育システム」の考え方による保育を実践する園が増えてきました。そうした保育は「インクルーシブな保育」と呼ばれたりします。

――「インクルーシブな保育」とは、どういう保育でしょうか。

久保山先生(以下敬称略) 多様な子どもの人格や個性を尊重し、支え合い、ともに活動し、学びあう保育です。

――「インクルーシブな保育」において、多様な子どもとは、どういう子どもを指すのでしょうか。

久保山 今、幼稚園などで子どもを取り巻く環境は実に多様化しています。障害がある子、海外から来て日本語が話せない子、LGBTQ(性的マイノリティー)の子、貧困家庭の子などさまざまです。多様な人々とは、そうしたすべての子どもが含まれます。
ただインクルーシブな保育というと、障害の有無だけを考える人もいて、本来の意味でのインクルーシブな保育が、まだ浸透していない現状もあります。そのため私は、さまざまな機会に啓発をするようにしています。

「いろんな子がいる」ということがわかることで、子どもたちは成長する

久保山先生は、インクルーシブな保育を実践している園を訪問しています。そうした園で見てきた子どもたちの姿について聞きました。

――幼稚園などでインクルーシブな保育の中で活動すると、子どもはどのように成長するのでしょうか。

久保山 私が知っている園の一例を紹介します。発達に特性がある子の中には、運動会などの行事が苦手な子がいます。年長児のAくんは、リレーで走るのを嫌がっていました。担任の先生が「みんなは、どうするのかな?」と見守っていると、クラスの子が口々に「僕が、Aくんの分も走るよ」「○○ちゃんがバトンをわたすといいよ」と言い出し、子どもたちからどんどんアイデアが出たそうです。Aくんを責める子は、だれもいません。
まわりの子どもたちがAくんとともに生活する中で、Aくんの特性を理解しており「Aくんに合ったかかわり方をしよう」としているのです。

――発達に特性がある子は、どのように成長していくのでしょうか。

久保山 これも実際にあった園の一例ですが、発達に特性がある子の中には、朝のしたくなどが苦手な子がいます。担任の先生は、絵カードを見せて「帽子をとろうね」など行動を促しており、その子はしだいに自分から朝のしたくができるようになりました。
担任の先生は「絵カードがよかったんだ」と思っていました。しかし、その子が「絵カードはいらない」と言ったので、どうしてかな!?と思い、よくその子の様子を見てみたら、この1年間で大好きになった友だちの様子を見て行動していたことがわかりました。困った時は誰かのまねをしたらいいということを知ったのですね。これは障害の有無にかかわらず、どの子にも言えることですが、年上の子や友だちがお手本だと、自分でできることが増えていきます。

日本は超高齢化社会へ。多様な人とのかかわりが、さらに求められる時代に

子どもたちの10年後、20年後…を見すえると、インクルーシブ教育システムの必要性が見えてくると、久保山先生は言います。

――自分とはちょっと違う子を、子どもたちはどのように見ているのでしょうか。

久保山 幼いときから、自分とはちょっと違う子がそばにいると、それが日常になります。
たとえば、まわりの子よりも音に敏感で、急に大きな音がするとパニックになる子もいますが、子どもたちは「〇〇ちゃんは、急に大きな音がすると怖がるから、不用意に大きな音を立てないほうがいいよね」と考えるようになります。

「障害の社会モデル」という考え方がありますが、これは社会の側が環境を変えることで生きにくさを感じている人たちが困らなくなる、障害にならなくてすむという発想です。前述の「不用意に音を立てないことで、音に敏感な子どもも困らないようになる」なども、社会モデルの1つです。子どもたちは、経験によってそうしたことを理解しています。

今の子どもたちが、大人になって社会に出るころには日本は超高齢化社会です。多様な人とかかわる機会がさらに増えるでしょう。
日本の教育は、インクルーシブ教育システムによって共生社会の担い手を育てることをめざしています。共生社会とは、だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。近い、日本の将来の姿です。

――ママやパパが、心がけたほうがいいことはありますか。

久保山 私自身、幼稚園児から学んだことがあります。その男の子は、ちょっとこだわりが強くて、電車に詳しい子でした。私が「特急『しなの号』好き? しなの号書ける?」と聞いたら、男の子は「書ける!」と言って書き始めたのですが、途中で「おじさん、ごめんね。僕“な”が書けないんだ」と言うのです。私は勝手に「絵で書ける?」と思って聞いていたのですが、その子は「ひらがなで書く」と思っていたんですよね。
発達に特性がある子の中には、あいまいな表現や行間を読むのが苦手な子がいます。しかし、その子がひらがなで書こうとしたことは間違いではありません。私のほうが思いこんでいたんです。

子どもたちの発想は本当に自由です。ママやパパには大人の考えと違っていても、それを否定せずに、その子の考えを受け入れてほしいと思います。

お話・監修/久保山茂樹(くぼやま しげき)先生

取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

インクルーシブ教育システムは、構築の途中ですが、インクルーシブな保育を実践している園は増えており、理解も深まっています。久保山先生は、「インクルーシブな保育を実践することで保育そのものの質が向上し、保育者の発想の幅が広がる」と言います。

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