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第一人者に聞く、子どもの発達障害は、年齢とともに軽症化する可能性が【専門医】

幼稚園で遊んでいる子供たち
写真はイメージです
maroke/gettyimages

「発達障害は遺伝子が関与する障害で、遺伝子は変えられないのだから、発達障害は治らない」と聞きますが、発達障害研究の第一人者である榊原洋一先生は「必ずしもそうではない」と言います。発達障害は治ることがあるのでしょうか。30年にわたって発達障害の子どもの診察・診断、治療を行ってきた榊原先生に教えてもらいました。

発達障害の症状は、年齢とともによくなっていく可能性がある

「発達障害」は「注意欠陥多動性障害」「自閉症スペクトラム障害」「学習障害」の3つの障害の総称です。それぞれについて簡単に説明します。

【注意欠陥多動性障害】
集中する能力が低くて気が散りやすく、席にじっと座っていることができないなどの多動行動や、衝動的な行動が頻繁に見られる。

【自閉症スペクトラム障害】
言語やコミュニケーションの発達や、対人関係を築く能力に障害があり、感情をうまくコントロールできない。

【学習障害】
知的な発達に遅れはないけれど、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のどれかを習得したり、使いこなしたりするのが困難。

――発達障害の3つの障害は、どれも遺伝子が関与しているといわれています。遺伝子を変えることはできないので、発達障害を治すのは無理なのでしょうか。

榊原先生 遺伝子は持って生まれたもので、その子が持っている遺伝子を変えることはできません。そのため、「発達障害は治らない」というのが常識になっていますが、それは必ずしも正しくないと私は考えています。

私が診察した子どもの中に、2~3才の時点では自閉症スペクトラム障害の症状があったけれど、5才になったときには症状が消えてしまった、というケースが複数ありました。
この子たちは、社会性や情動(感情)をコントロールする力をもともと備えていたけれど、発達の速度が遅く、2才の時点では自閉症スペクトラム障害の症状が現れていたんです。でも、徐々に発達が追いついていくことで、自閉症スペクトラム障害の特徴的な症状が消えたのだと考えられます。

――自閉症スペクトラム障害と診断されても、症状が消えていくことがあるというのは、発達障害の子どもを持つお母さんやお父さんにも、子ども本人にも、希望が持てる話です。注意欠陥多動性障害や学習障害についても、同じようなことが言えるでしょうか。

榊原先生 何かに集中する力や、あちこち動き回る自分を律したりする力は、幼児から学童期にかけて発達していきます。そのため、注意欠陥多様性障害の症状は、小学校高学年くらいまでに目立たなくなっていく子が多いです。「席に座っていられない」という多動行動が、小学校中学年以降まで続く子のほうがまれ。注意欠陥多動性障害は年齢とともに軽快していくことが多いのです。

自閉症スペクトラム障害と注意欠陥多動性障害は、それぞれの障害に関係する脳機能が低下していることで起こります。しかし、脳機能が「低下」しているだけで、「停止」しているわけではありません。そのため、成長するにつれて脳機能が発達していき、社会生活を送るのに困らないレベルまで障害が軽快する可能性はだれにでもあるのです。

一方、学習障害は根本的な原因がわかっていないのですが、学習障害の子どもは集中力、対人関係、集団活動などに問題はありません。そのため、読み書き、計算などその子が困難に感じる部分をサポートする教材を使ったり、授業のしかたを工夫したりすることによって、障害を乗り越えていくことができます。
学習障害の子どもに必要なのは、医学的なアプローチではなく、教育的なアプローチなのです。

――中には、年齢が上がっても症状が軽快していかない子どももいると思います。症状が軽快するかしないかの違いは、どのようなところにあるのでしょうか。

榊原 残念ながら現代の医学では解明されていません。今後の研究に期待したいところです。

健常児にも障害児にも有意義な「インクルーシブ教育」

――発達障害と診断された子どもは、「早期に療育を始めることが症状の改善につながる」といわれることがあります。その点について、榊原先生はどう思われますか。

榊原 療育を受けることで、多くの人とかかわりを持ち、専門家からさまざまなアプローチをされることは、子どもにとって悪いことではありません。でも、療育を受けることで、本人の基本的な障害が治るわけではないんです。「早く始めないと子どもに不利益を与えてしまう」とあせる必要はないですよ。
それに、療育にはさまざまな方法があり、やることにばらつきがあるのも問題。改善すべき課題です。

――発達障害と診断された子どもが、特別支援学級(学校)に移るのではなく、健常児と一緒に学ぶことができる「インクルーシブ教育」について教えてください。

榊原 インクルーシブ教育は「すべての子どもを、できるだけ地元の普通の学校で教育しよう」という考えに基づいており、健常児、障害児の区別なく、すべての子どもが同じ教室で学びます。共生社会のミニチュア版を教室内に作るイメージです。

障害児は専門家が指導やサポートするよりも、同年代の子どもとかかわるほうがより多くのことを学べ、症状の改善につながることがわかっています。
一方、健常児は自分のまわりにはいろいろな人がいることを理解し、相手の気持ちに寄り添って考える共感力を養うことができます。
インクルーシブ教育を実現するには、教師のほかにさまざまな障害に対応できる専門家を教室に配置しなければならず、設備を整える必要があります。お金も手間も非常にかかりますが、インクルーシブ教育はすべての子どもの成長にとってメリットのある教育法と言えます。日本で実現することを願っています。

お母さんやお父さんは子どもの代弁者として、正しい知識を身につけよう

――「発達障害は治らない」という見解が認知されているように、発達障害に関する見解は、さまざまなものが混在して広まっているように思います。子どもが発達障害と診断されたお母さんやお父さんは、どのようにして正しい知識を得ればいいでしょうか。

榊原 お母さんやお父さんは子どもの代弁者ですから、医師の診察・診断を受けた際や、療育で指導を受けたときなどに、疑問に思ったことはそのままにせず、解決してから帰るようにすることが大切です。

また、インターネットなどで調べる場合は、個人が発信している情報や意見をうのみにするのはNG。発達障害を専門にしている医師が書いているものなど、確かな知見に基づくものを探しましょう。日本小児神経学会のホームページでも、発達障害について解説していますので、参考にしてみてください。
そして、子どもが抱えている困難を減らしてあげるにはどうしたらいいか、専門家と相談しながら、一緒に取り組んでいきましょう。

お話・監修/榊原洋一先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

発達障害の症状が完全になくなるのは難しいとしても、子どもが社会生活で感じる生きづらさは、徐々に減っていく可能性があるということのようです。お母さんやお父さんは発達障害に関する正しい知識を身につけ、適切な対応ができるようにすることが大切です。

榊原洋一先生(さかきはらよういち)

Profile 
東京大学医学部卒。お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長・発達障害研究の第一人者であり、現在も子どもの発達に関する診察、診断、診療を行う。「子どもの発達障害 誤診の危機」(ポプラ社)など、発達障害に関する著書多数

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