「語彙力の高い子どもの親」には共通点があった!専門家にきく赤ちゃんの言語習得の過程
子どもの言語獲得能力は高く、耳からも、目からもスポンジのようにどんどん吸収していきます。日本語と同様に、第二言語となる英語教育も早いほど良いとも言われています。
佐藤久美子先生
そこで、玉川大学にて乳幼児の言語獲得・発達研究を行い、NHK番組「えいごであそぼwirh Orton」の総合指導もされている佐藤久美子先生に幼少期からの英語教育のすすめ方を聞きました。
赤ちゃんはこうして言葉を習得していく
赤ちゃんは5〜6ヶ月くらいになると「ア~」「ク~」といった喃語を話すようになりますよね。そこでママ・パパが「ア~」「ク~」と同じ言葉を反復してあげることで赤ちゃんも少しずつ言葉を真似して言葉を反復できるようになります。喃語以外にも話しかけを続けるうち、1歳になる頃には母語を理解していく上で必要な音を獲得し終えます。
2歳頃には、まねっこが上手になり、ママ・パパの言葉や単語と同じ言葉を繰り返せるようになってきます。初めて聞いた言葉を繰り返すことができるというのは、単語を構成する音の配列が脳の記憶の中に貯められるようになっているということです。さらに、文構造や意味もかなり理解できているという証拠です。
3歳頃になると、言葉を単に繰り返すのではなく、他の単語もプラスされ言葉が発展していきます。
4歳にはさらに、自分の意思を自分の言葉で自発的に発するようになります。
言葉の発達に差が出るワーキングメモリーと反復練習
言葉の習得に欠かせないのは、聞いた言葉を瞬時に記憶して反復するワーキングメモリー(短期記憶)です。この反復がとっても大事。ワーキングメモリーは、ママ・パパがたくさん話し掛け、子どもに反復(アウトプット)の機会をたくさん与え、積み重ねることで鍛えられていきます。言葉を赤ちゃんにインプットし、コミュニケーションを通して音の反復を促し、言葉をアウトプットとして出せるようにしてあげることが大事になってきます。
この反復練習は、英語に関しても同じ効果があると言えます。日本語の言葉の獲得と同じように、知っている単語やフレーズだけでもいいので、ママ・パパが繰り返し話しかけてあげてください。言葉の音をどんどん吸収する赤ちゃんの頃から英語の音をインプットし、音の反復を促すことが大切です。習得には個人差がありますが、続けていくうちに語彙力が上がり、単語を繰り返せるようになったり、文のまねっこもできるように。英語教育というとハードルが高く感じるかもしれませんが、赤ちゃん世代だからこそ、お勉強ではなく言葉の発達と同時進行で英語もインプットしてあげると、のちの英語学習が楽にスタートできるようになることでしょう。
語彙力の高い子どもの親に共通する3つのこと
3歳〜6歳の子どもたち約200名を対象に実施した調査で、日本語の語彙力が高い子どもは、日本語の反復が上手にでき、さらに英語の反復も上手にできるという結果が出ました。
日本語の語彙力を高めることで、英語にも良い効果が期待できることがわかったのです。
その日本語の発話量を高めるポイントは3つ。
・応答は速く。
・短い言葉で返す。聞き役に回る。
・ゆっくり、はっきり話しかける。
子どもが話しかけてきたときにすぐに反復して応答するママ・パパの子は発話量が多く、語彙力が高い傾向にあります。
子どもに話すセンテンスが長いと子どもの発話が短くなってしまうので、ママ・パパの発言は短く、子どもに話させる時間を与えること。
子どもに話しかける時、ママ・パパは子どもが聞き取りやすいようにゆっくり、はっきり返答しましょう。聞き取りやすければ、子どもの発話を促すことができます。
その繰り返しの中で、人とのコミュニケーション力も高まり、語彙力も高くなっていきます。
英語を勉強することで日本語力もアップする
さらに、英語の反復量が上がることはもちろん、英語を勉強している子どもたちの日本語の反復量も上がりますので、ママ・パパとのコミュニケーションはとても大切です。
日本語に悪影響が出るのでは…?
よく、早い段階の英語教育は、日本語の発達に悪い影響が出るのではと心配する声が聞こえますが、むしろよい影響があるんですよ。コミュニケーションで日本語の語彙力を上げ、同時に英語教育も始めることで互いの言語に良い影響が生まれるのです。
幼少期の英語教育、伸ばし方のコツは?
語り掛けによるコミュニケーションのほかに、英語の絵本や英語のブロックなどで楽しく遊べると英語力が伸びていきます。ただ、ここで大切なのは“一緒に”楽しく遊ぶことです。英語力が伸びる子は、ママ・パパも英語に興味を示し、一緒に楽しく学べる(遊べる)ご家庭の子です。「ママ・パパがつきあってあげている風」だと、子どももわかってしまうんですよね(笑)。英語が苦手でも、子どもの簡単な絵本ならきっと一緒に楽しめると思いますよ。子ども向け教材でも、歌のDVDやアニメなど選択肢の多い教材を選べば、子どもと一緒に楽しめるものがあるかもしれません。
たとえ短い時間でも、子どもは英語を介してママ・パパと一緒に楽しい時間を過ごすことで楽しかった英語の記憶が残り、のちの英語学習への自信にもつながっていくはずです。
ただし、肝心の子どもが興味を示さないことも…。そんな時、無理は禁物。ママ・パパがひとりで英語の絵本を読んだり、DVDを観ていてもいいんです。楽しそうにしている姿を見ると、子どもはきっと寄ってきますから。そのチャンスを逃さず英語遊びに誘ってみましょう。
子どもの英語教育は、“無理せず、期待せず、長期的に”。焦らず、楽しく英語に慣れ親しんでいきましょう。
(取材・文/井上裕紀子)