「仕事と育児の両立は、できて当たり前じゃない!」妊活エピソードも話題のスイス在住ケイコモエナさんインタビュー
スイス人の夫と結婚し、スイスのアルプスの麓に住んでイラストレーターとして活躍されているケイコモエナさんは、たまひよONLINEで妊活エピソードを漫画にした【ケイコモエナのスイス妊娠日記】を連載中です。今回は、そんなケイコモエナさんに仕事と育児の両立の仕方や、スイスでの生活、スイスと日本の育児の違いなどについてお話を聞きました。まずはインタビュー前編をお届けします。
<Profile>
ケイコモエナ
スイスの小さな山村に住む二児の母です。育児の日常の幸せや葛藤などをマンガに描いています。
漫画の編集長は長男!?
――――家族構成とみなさんのキャラクターについてご紹介いただけますか?
ケイコモエナさん(以下敬称略) コテコテの関西人の私に、スイス人なのに心は武士な夫、優しく繊細ボーイな長男イチと、魂のおもむくままに生きる姉御肌な末っ子ゆあの4人家族です。
――――ケイコモエナさんの現在のお仕事についてお教えください。
ケイコモエナ 本職はイラストレーターです。自宅の片隅で地味に働いています。お仕事は不定期なので、何もないときや締め切りが重なってヒーヒー泣いているときなど、波があります。
NYにあるエージェンシーに所属しており、アメリカ発信の育児雑誌、ライフスタイル雑誌、大手デパートの広告、国際経済雑誌の表紙やコラムイラストなど色々やっています。SNS上にあげているマンガのスタイルとは全然違う、真面目な感じのスタイルで描いています(笑)。
――――ご自宅でお仕事されているんですね!
ケイコモエナ 子どもたちが家にいないときは「仕事をやるぞ!」と思ってはいるのに、ついボーっとしてしまったり、洗濯や家の片づけをしたり、おやつを食べたり、お茶を飲んで、またおやつを食べたり……(笑)。集中するまでに凄く時間がかかってしまい、気がついたら、もう子どもたちが帰ってくる時間になっていることがほとんどで……。夜に「ぎょえーっ!」となりながら仕事をすることが多いんです。
夜遅くまで仕事をしているときは、朝はゾンビのように徘徊しています(笑)夫が朝型で、超ハイスピードで色々やってくれているので、助かっています。
――――頼もしい旦那さんですね!ケイコモエナさんはご自身の育児にまつわる漫画をSNSにあげていらっしゃいますね。
ケイコモエナ はい。イラストレーターは15年間やり続けているお仕事なのですが、人様が書いた文章にイラストを描くだけではなく、自分の話の絵を描きたい!何かを語りたい!という思いが出てきて、自分の家族の話を描きインスタに投稿するようになりました。
――――ご自身の漫画を公開するにあたり、気を付けている点、工夫している点などがあれば教えてください。
ケイコモエナ 子どもたちが大きくなったときの思い出になるように描いているので、現実に忠実にアルバムを作っているような感覚で描いています。
ふとした子どもたちの言動を、そのとき私がどう感じたのかを描き、子どもたちに「このときママはこう思っていたんだよ~」という感じで大きくなったときに読んでもらいたいですね。
あとは、なんでもない日常に幸せを見つけて感謝の気持ちを描いたり、腹がたったことも妄想を加えて笑い話に変えてみたり……。私が描いていて「楽しい!」と思うことを描くようにしています。
私のマンガの編集長は長男のイチなんです。お話のラフを見せてイチが読んで無反応なものはボツ、イチが笑ってくれたら清書するようにしています。ボツになったお話は数知れずです……(笑)
仕事と育児の両立は、できて当たり前なわけではない!
――――旦那さんとは育児や家事の分担などはされていますか?
ケイコモエナ 家事分担は、洗濯は私、力仕事と庭仕事は夫。それ以外はハッキリとは決めていないのですが、相手が弱っている時に多めに家事をするという感じです。
夫婦としてはお互い申したいことが色々とありますが(笑)、親としてはお互い認め合っています。特に子どもの相談事をすると、夫は解決策がみつかるまでずっと一緒に考えてくれるので心強いです。
――――仕事と育児を両立させるうえで大変だったことや、工夫している点などについて教えてください。
ケイコモエナ 一人目だけのときは余裕をもって仕事と育児両立ができていました。しかし、二人目が生まれてからの両立はまったく無理でした。
子どもが二人になることは育児が二倍大変になると思っていたけれど、そうじゃない。私的には、10倍~くらい育児が大変になった気がしました。
それまでと同じ量のお仕事は到底無理なはずなのに、「私だったらできるはず」、という自負から頑張りすぎて過労寸前になってしまったことがあり、一旦ご依頼を全てお断りしました。
その頃は両立できない自分を責めたり、「一度依頼を断るとまた依頼して頂けないかもしれない」「休んでいる間に若くて新鮮で斬新で、しかもギャラが安いイラストレーターが沢山出てきているかも」などと考え、とても焦りを感じていました。
――――そんな不安のなかから、どのように気持ちを立て直したんですか?
ケイコモエナ 「妊娠出産できただけで奇跡!」「今日も子どもたちにご飯を食べさせられた!」「十分頑張っている!」と、寝る前に今日自分ができた小さなことを思い返して、自分を自画自賛して安心させてあげることで気持ちに少し余裕ができるようになりました。
今のお母さんたちは本当に大変で、仕事と育児の両立が当たり前な世の中になりつつあると感じます。
だけど全て全然当たり前じゃない!今の時代のお母さんはすごいことをしている!それに気づかずに自分を責めてしまうお母さんが私を含め、周りにもとても多いように私は感じます。
――――育児で特に大変だと感じることはどんなことですか?
ケイコモエナ 私には「人と比べない」ことが一番大変でした。
子どもたちが小さいときは、あの子はもうオムツがとれている、もうハイハイしている、卒乳できている……。それに比べて、うちの子は……、という感じで、毎日一喜一憂していてすごく疲れていました。
長男のイチは心身ともに育児本に書いてある通りの成長ぶりだったので、それほどではなかったのですが、末っ子のゆあは、成長がとてもゆっくりで、体の成長グラフからどんどん下にはみ出ていく日々。小さくて小さくて、もう毎日心配でなりませんでした。
特に私の親友の子どもがゆあと同じ月に生まれて、最初は喜んでいたのですが、親友の赤ちゃんの成長が目まぐるしくて、その子とどうしても比べてしまっている自分がいて……。
だけどある日、ゆあの1ヶ月前の写真を見て、すごく成長していることに気がついたんです!それまで育児本や、成長グラフ、親友の子や周りの子と比べていた愚かな自分に気がついて、思いっきり自分に往復ビンタを食らわしてやりたくなりました。
「比べなくていい。我が子は我が子。もし比べるとしたら、昨日の我が子、この子は昨日より確実に成長している。私もお母さんとして昨日より成長している。私たちは大丈夫。」それを呪文のように唱えて、だんだんと育児が楽になっていきました。
比べることをやめたら、気持ちが楽になれたというケイコモエナさん。たしかに妊娠、出産すること自体が奇跡的なことですよね。まずは自分自身を、その子自身を認めてあげること。シンプルながら忘れがちなことかもしれません。後編では、スイスと日本の育児の違い、スイス生活で驚いたことなどについてもお聞きします。
取材・文/女子部JAPAN(おぜきめぐみ)