スイスでの出産・育児にカルチャーショックの嵐…!常識の違いにびっくり!? ケイコモエナさんインタビュー
スイス人夫と結婚し、スイスのアルプスの麓に住んでイラストレーターとして活躍されているケイコモエナさんは、たまひよONLINEで妊活エピソードを漫画にした【ケイコモエナのスイス妊娠日記】を連載中です。今回は、そんなケイコモエナさんにスイスと日本の育児の違いについて聞いたインタビュー後編をお届けします。
<Profile>
ケイコモエナ
スイスの小さな山村に住む二児の母です。育児の日常の幸せや葛藤などを描いています。
「好きな人と一緒にいたい!」その気持ちだけでスイス移住へ
――――ケイコモエナさんは現在スイスにお住まいですが、スイス移住生活のきっかけについて教えてください。
ケイコモエナさん(以下敬称略) 夫とはロンドンで出会い、交際2年ほどしたある日、彼がスイスに帰ると言い出しました。なぜかと聞いた答えが「山が恋しい」と(笑)。当時は爆笑と同時に、私より山をとる彼に憤慨していたのですが、実際スイスの山に住んでみて、自身の心の豊かさが町に住んでいる頃と全く違うことが分かるため、 今では夫の気持ちがよく分かります。
――――いきなりのスイス移住となったわけですが、不安はなかったのですか?
ケイコモエナ スイスへ移住した頃は若かったので、「好きな人と一緒にいたい」それだけで何も考えずに、イギリスで17年間築き上げてきたものを投げ捨てて、スイスに引っ越しました。
そのあと、初めて夫との同居生活、フランス語をゼロから習い、カルチャーの違いで荒々しい日々を送ったのですが……。今思うとよく離婚されなかったなという荒れぶりでした(笑)。
スイスでは無料の遊び場で遊び放題!
――――現在お住まいのスイスはどんなところですか?
ケイコモエナ 今は山にある小さな村に住んでいます。
子どもたちを出産した頃はまだ町に住んでいたのですが、子どもが二人になったことをきっかけに町のアパート暮らしから抜け出し、憧れの一軒家のために田舎へと移住しました。写真の通り、見渡す限り山、山、山、で、自然がいっぱいのところで暮らしています。
普段はいつもお弁当を持ってハイキングをしたり、川で焚き火をしてソーセージを焼いたり、雪が降れば隣山にスキーやソリをしに行ったり。自然はいくらでもあるし、スキー以外は全部無料なので存分に利用しています(笑)
たまに町に出るときは、子どもたちも小キレイな服を着て(普段はやぶれたジーンズ&登山靴ですが)ゆあはもうウキウキで、自分のリュックサックに色々詰めて、車の道中ではずっと歌ったり喋ったりでテンションMax。町に出たら、エスカレーターとエレベーターだけで大興奮です(笑)。そのため、帰りの車では疲れ果ててみんな無言です。
普段田舎に住んでいると人混みや空気の重さにすごく疲れるようで、生粋の田舎っぺな私たちです。
――――自然が遊び場、素敵ですね!でも見知らぬ土地での出産は大変だったのでは?
ケイコモエナ 二人を出産する頃は町に住んでいたので、出産場所や出産方法はいろいろ選択できました。大半の人は、住んでいる町の大きな病院での普通分娩です。
そのときオプションで必ず聞かれるのが、無痛分娩(硬膜外麻酔)を希望するかしないか。陣痛が始まってから病院に行き、お産の進み具合で下半身のみ効く硬膜外麻酔を打つシステムで、陣痛の波を少し感じられる程度の麻酔です。私もこちらを選びました。
ただ、スイスでも地域によって考え方が異なり、フランス語圏では無痛分娩を希望、経験している方がとても多いのですが、ドイツ語圏では自然分娩が賞賛される傾向があり、無痛分娩は少ないと聞いたことがあります。
その他のオプションは水中出産。出産室の横には大きな出産用のお風呂がありました。麻酔を打ってもらう前の陣痛で七転八倒している私に、いきなり「お風呂に入るか?」と助産師さんに聞かれたのですが、私はそんな余裕は全くなく(笑)使用しませんでした。
日本との一番の違いは出産後の退院日数が早いところだと思います。私は6日目で退院したのですが、周りの人はみんな3~4日で退院している人が多く、ママ友の一人は出産した次の日にもう家に帰り、生まれたての赤ちゃんと雪の中を散歩していたのには度肝を抜かれました!
私は産後1ヶ月は体を大事にし、あまり新生児を連れ出さないほうがいいと言うのが常識だと思っていたのですが‥‥‥。お国が変われば常識も違うようで。
こちらでは母子とも健康であれば、すぐに元の生活に戻り、外の空気を吸って、すぐに夫婦の営みを!と言う人が周りには多く、出産後全身ガタピシだった私は、やっぱり西洋の人は体の作りからして違うのかなと、凄くびっくりしていたのを覚えています。
スイスと日本、それぞれの子育ての違いとは?
――――スイスと日本、子育てについての違いはありますか?
ケイコモエナ スキンシップの違いが大きいと思います。
こちらでは親子同士でのハグやほっぺにチューは日常茶飯事で、それは子どもが大人になっても続ける行為ですが、純日本人の私としては、母とはふざけてハグしたりはしますが、父とは小学生依頼一切触れ合ったことはないです。手も触らないし、腕も組まないし、ましてやハグなんて、絶っっっっ対に無理です(笑)。そんなことを言うと、こっちの人は物凄くびっくりして「親子なのに?!」と言われますが、私からしたら親子だからだよって思っています(笑)。
日本ではハグやキスがない代わりに、川の字で寝たり、お風呂に一緒に入ったりはすると言うと、こっちの人は目が飛び出してびっくり仰天します。夫婦のベッドに子どもを?親子で一緒にお風呂!?
こちらではお風呂はひとりで入るのが一般的で、湯船の中で体を洗うカルチャーの人たちからするとお風呂のお湯を一家で使い回すなんて、もう想像を絶するカルチャーショックのようです。
スキンシップの話になると、お互いびっくり仰天しっぱなしです(笑)。
――――スイスの子育ての良いと思う点、日本の子育ての良いと思う点などがあればお教えください。
ケイコモエナ スイスの子育ての良いと思う点は、親がスイス人であることに誇りを持っているところだと思います。とても謙虚な国民なので、あからさまには決して言わないのですが、言動の節々に愛国心とスイス人である誇りを子どもたちに伝えていることで、自分自身の誇りと繋がり、自己肯定感が高い人が多いように感じます。
日本の子育ては相手を尊重する子育てが素晴らしいと思います。相手の気持ちを考えられる、列にはちゃんとならんで、悪いことをしたら謝る。常に相手のことを考えるようにと小さい頃から育てられた日本人は、人の気持ちを考えられる大人に育つ。それは海外の人にもとても尊敬されている部分だと思います。
そんな対照的に思える両方の国のいいところですが、自国と自分自身に誇りを持ち、人の気持ちを大切にする心を子どもたちに伝えていければいいな、と日々思っています。
――――ケイコモエナさんなりの育児の楽しみ方、コツなどがあれば教えてください。
ケイコモエナ 私の育児のコツは、全てのこだわりや理想を捨てることです(笑)。実際はめちゃくちゃ難しくて、ほぼ不可能なのですが。
「子どもとはこうあるべき」「親とはこうであるべき」と、子どもたちが生まれたばかりの時は生活のあらゆる部分に「こうであるべき」と言う考えにがんじがらめになっていて、育児を楽しめていませんでした。「人様の迷惑にならない子に育てなければ」と言う日本人独特の考えも根本にあり、それを重んじていたときはとても苦しかったです。
ある日、インド人のママ友が、「インドではね、子どもたちに生きてりゃ誰だって人に迷惑をかけるんだから、人に優しく寛大に、許してあげる人になりなさい。って教えるの」と聞かされて。目から鱗がボロボロこぼれました。そのとおりだなと。人に迷惑をかけないって無限大に難しい課題ですよね。それを基本に育児をしていたら苦しい苦しい。
その教えを聞いてから、こだわりや理想を出来るだけ捨てて、育児が少し楽になり、楽しくなりました。
こだわりを捨てることで、育児を楽しめるようになったというケイコモエナさん。スイスと日本、育児環境は異なりますが、子どもを思う気持ちはやっぱり万国共通なんですね。
取材・文/女子部JAPAN(おぜきめぐみ)