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Eテレに出演中。先天性の障害で、排せつ・歩行困難のある長女。「みんなと違う」と悩みながら、夢の扉を開けて【二分脊椎・体験談】

更新

現在(9歳)の紬ちゃん。ハンドバイクをしているところ。

宮原紬ちゃん(9歳)は胎児期に二分脊椎(にぶんせきつい)と診断され、生まれてすぐに脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)を修復する手術と、水頭症治療のためのシャントを挿入する手術を受けました。歩行困難と排せつ障害がありますが、紬ちゃんは幼児期からさまざまなことに挑戦してきました。2023年の秋から芸能事務所に所属し、2025年4月から、NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」にレギュラー出演しています。
全3回のインタビューの3回目は、紬ちゃんのこれまでの活動と将来の夢などについて、紬ちゃん本人と母親の香織さんに聞きました。

▼<関連記事>第2回を読む

みんなのように走れないから外遊びは苦手。工作が大好きだった幼稚園時代

幼稚園で作った「へんしんベルト」。「幼稚園のときから工作が大好きです!」と紬ちゃん。

紬ちゃんは年中クラスから2年保育で公立の幼稚園に入園。香織さんたち夫婦は、そのタイミングで病気のことを紬ちゃんに話しました。

「紬は2歳から療育に通っていました。療育は『みんないろいろ違う』が当たり前で、紬はその中でのびのびと過ごしていました。でも幼稚園では、たくさんの健常の子どもたちの中で生活することになるので、紬が抱えている病気のことを、本人が理解しておく必要があると考えたんです。

紬には障害があって、それはなくなることはないけれど、障害も含めて紬は紬っていう1人の女の子なんだよ、そんな紬のことがママもパパも大好きなんだよって、まず話しました。

そのうえで、もしかしたら将来歩けなくなる日が来るかもしれない。それでも毎日少しずつでも歩いて足を使うことが大切。リハビリなどのケアもさぼっちゃいけない。
もしも将来、車いすがないと生活できなくなったときのために、車いすを使いこなせるように練習することも大切。
そして、助けてくれる人みんなに感謝して生きていこうねって、説明しました」(香織さん)

香織さんがその話をしたとき、紬ちゃんは「わかったようなわからないような感じ」だったそう。でも実際に園生活が始まると、「自分はみんなと違う」と感じるようになりました。

「今までは装具を着けて歩くことも、車いすで移動することも、不思議だとは思っていませんでした。でも幼稚園のお友だちは、だれも車いすに乗っていない。みんなは自分の足でぴゅ~って走るのに、私は装具を着けてもゆっくりしか走れない。サッカーボールを一生懸命けっても、みんなみたいにゴールまで届かない・・・。だから、園庭などでの外遊びはイヤだなって思っちゃいました」(紬ちゃん)

好きなことを自分で選んで遊べる幼稚園だったので、紬ちゃんは毎日工作をしていたそうです。

「工作は大好き!今も覚えているのは、ティッシュボックスを2つくっつけて作った『ちょうちょベルト』。『ちょうちょたんけんたい』の人がつけるへんてこなベルトです。『ちょうちょたんけたい』っていうのは、私と工作友だちとでつくった、なぞの探検隊です。

工作が好きで好きで、1日で幼稚園のセロハンテープを1つ使い終わっちゃったこともあるくらい。工作はお友だちと同じように遊べるし、中遊び(室内遊び)サイコー!!って思ってました」(紬ちゃん)

「お友だちから『外で遊ぼう』と誘われても断って工作に没頭していたようなので、お友だちができないんじゃないかと少し心配しましたが、工作好きのお友だちはいたみたい。毎日たくさん好きなことをして、お迎えに行くとキラキラの笑顔で、『今日はこれ作ったよ~』って、自慢の作品を見せてくれました」(香織さん)

車いすスポーツの楽しさを知り、高尾山登山やカーリングにも挑戦

7歳のとき、車いすで高尾山に登りました。頑張って自力で登っているところ。

幼稚園時代、運動するより工作が好きだった紬ちゃんですが、あるイベントに参加したことで、車いすスポーツに興味をもつようになります。

「紬には、車いすを使う楽しさを教えてくれる“車いすの師匠”がいます。その方が、『ノーバリアゲームズ #みんなちがってみんないい』というイベントに誘ってくださり、第2回と第3回の大会に参加しました。紬が5歳と6歳のときです。『ノーバリアゲームズ』は年齢、性別、国籍、障害の有無を問わずだれもが楽しめる、ユニバーサルスポーツイベントです。
紬はたくさんのパラアスリートたちと一緒にゲームをし、お話をさせていただき、それはそれは楽しそうでした。イベントに参加したあと、数日間は興奮が収まらなかったほどです」(香織さん)

「初めて参加したときは、私がいたチームが優勝!!金メダルをもらってすっごくうれしかった~。でも、次の年は最下位。ガクッとしました。
パラアスリートの人たちは強くて、とってもかっこいいです」(紬ちゃん)

車いすスポーツの楽しさに目覚めた紬ちゃんは、高尾山登山にも挑戦します。

「今まで3回高尾山登山のイベントに参加したんですけど、なんと3回とも雨!もう雨の高尾山は慣れっこです。
1回目は6歳のとき。ほとんどサポートのお兄さんお姉さんたちに車いすを押してもらって登りました。2回目は7歳のとき。自分でできることはなるべく1人で頑張りました。そして、8歳で挑戦した3回目は、ゆっくりだけどほとんど自分の力だけで登りました!しかも、初めてパパ・ママの付き添いなしで参加。だからよけいに、1人で登れたのがうれしかったです。いつか、富士山にも登ってみたいなあ」(紬ちゃん)

紬ちゃんは去年、車いすカーリングにも挑戦しました。

「普通のカーリングと違って、デリバリースティックという棒でストーンを押し出すんです。よくテレビで見るような、氷の上をゴシゴシこするのはやりません。ストーンの重さは20㎏で、私の体重とほぼ同じ。そんな重い石を前に押し出すのはとっても大変で、すぐヘトヘトになっちゃった。簡単そうに見えたのに難し~。でも、何とかコツをつかめて、車いすカーリング最高!って思いました」(紬ちゃん)

ランウェイを歩いたときの喜びが忘れられず、芸能事務所に所属する

障害者専門の芸能事務所のオーディションを受けたときの様子。(写真提供/アクセシビューティーマネジメント)

パラスポーツに興味を持つようになるのとほぼ同時に、モデルやタレントの仕事にも興味が出てきたそうです。

「2023年の春、7歳のときにイベントでキッズモデルをしたんです。きれいなドレスを着て、装具を着けてランウェイを歩いて、いろいろなポーズをしました。
ママは転んだらどうしようって心配していたみたいだけど、私は楽しくて楽しくて。自然と笑顔になっちゃった。
みんなに見てもらえたのがうれしくて、『またやりたいな』って言ったら、ママがネットでいろいろ探してくれて、今の事務所のオーディションに申し込んでくれたんです」(紬ちゃん)

「紬が自分から『やりたい』と言った初めてのことなので、モデルやタレントの道はないかと探す中で、障害者専門の芸能事務所、アクセシビューティーマネジメントを見つけました。それがなんと、事務所オーディションの応募締め切り日間近のタイミング!
オーディションは年1回のみだったので、これを逃すと1年待たないといけない。何はともあれ応募してみよう。その後のことはあとで考えよう思い、急いで書類を送ったんです。書類選考、zoomでのオーディション、最終オーディションをパスし、所属タレントになることができました」(香織さん)

せりふはないけれど、車いすの女の子が普通にクラスにいる設定に共感

紬ちゃんが初めてテレビに出演したのは、車いすで小学校生活を送る女の子の役でした。(写真提供/NHK)

紬ちゃんの初めてのお仕事は、NHK Eテレのドラマ「こころ忍術ポポまるっ!」でした。
小学生忍者のしのびが、感情の化身〈ポポまる〉と共に心を制するための〈こころ忍術〉を学び、親やお友だちと関係を築き、成長する姿を描くお話です。

「私は車いすのクラスメイト役でした。せりふはなかったけれど、初めての収録はドキドキの連続!テレビのお仕事ができたことがすごくうれしかったです。2024秋、8歳のときです」(紬ちゃん)

「スポットが当たるような役ではないんですが、ごく日常の学校の様子を描くときに、教室に車いすの子がいる、という設定がいいなと思いました。車いすの子が教室に一緒にいるのは当たり前のことと、番組を見たお子さん方に感じてもらえたらうれしいです。車いすの子どもを初めて見たというお子さんも多いと思います。このドラマを見たとき、車いすで学校生活を送ることなどについて、ご家族の間で少しでも話題になってくれたらいいなと思いました」(香織さん)

落ちたと思ったオーディションに合格。「私はシナプーになれたんだ!」

「ノージーのひらめき工房」に紬ちゃんが出演したときのワンシーン。(写真提供/NHK)

2024年秋、紬ちゃんにとって大きなチャンスがやってきます。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」の妖精、シナプーのオーディションを受けることになったのです。

「1次オーディションでは、台本を読んで演技をしたのと、簡単な工作をしました。

ママはオーディション会場の隣の部屋で待っていたんですけど、オーディションが終わってママのところに行ったら、『紬の声だけ聞こえなかったよ』って言われちゃって。ダメだったかなあ、落ちちゃったかなあってガッカリしました。

でも4日後に届いたのは、『合格』っていうお知らせ。ママと一緒に驚いて、そのあとすっごく喜びました。
2次オーディションは面接で、プロデューサーさんと2人でお話ししました。学校のこととか話して楽しかったです。

返事が来るまで2週間近くかかって、その間ずっとドキドキ。「決まったよ」って事務所の人から連絡があったときは、やったーーーーって叫んじゃいました。去年の10月のことです」(紬ちゃん)

それからの紬ちゃんは忙しい日々を送ることになります。

「衣装合わせをして、収録前にせりふを覚えて、リハーサルを何時間もかけてやって、翌日、本番を昼過ぎから夜7時ごろまで撮ってと、初めてのことが次から次とやってきました。1回目の収録のあと『私は妖精のシナプーになれたんだ!』と感じました。
私が初めて出演した回は、ママ・パパと一緒にうちで見ました。自分がテレビの中でせりふを言っているのを見るのは、なんだかとっても不思議で、信じられない気持ちでした」(紬ちゃん)

「現在、シナプーのメンバーは9人いますが、車いすに乗っているのは紬だけ。『ポポまる』と同様、この番組を見たお子さんの中には、車いすを初めて見た子もたくさんいたでしょう。紬がみんなと一緒に楽しく工作をすることで、車いすは特別なものじゃないんだって知ってもらえたらいいな、と思いました。
紬は車いすキッズ代表としての最初の一歩を踏み出したんだと思ったら、涙があふれてきました。ふと隣を見たら、夫も泣いていました」(香織さん)

目指すはパラアスリートのすごさを伝えるリポーター。宇宙飛行士になる夢も

さまざまなパラスポーツにチャレンジ。写真はパラ陸上でレーサーに乗っているところ。

紬ちゃんはモデルや俳優の仕事をこれからも続けていきたいと考えていますが、「いつか絶対にやりたい仕事がある」と言います。

「パラスポーツのレポーターです。私には、パラリンピックを目標にパラスポーツを頑張っているお友だちがたくさんいます。みんなすごいんです。でも、パラスポーツのことは知らないっていう人が多いんです。選手と同じ車いすユーザーの私だから、伝えられることがあるはず!だから私がその役をやりたいなって。パラスポーツのおもしろさを多くの人に知ってほしいです」(紬ちゃん)

紬ちゃんには宇宙飛行士になりたいという夢もあるそうです。

「小さいころから星が好きで、宇宙に行ってみたい、宇宙飛行士になりたいってずっと思ってます。
シナプーのオーディションに受かったお祝いに、前からほしかった天体望遠鏡を買ってもらいました。でも、東京は星があまり見えないから、今年の夏休みは星がたくさん見えるところに連れて行ってねってパパにお願いしているんです。夏休みが楽しみ~」(紬ちゃん)

「やりたいって思ったことは、どんどんチャレンジしてほしいです。そして、障害のあるなしに関係なく、同じ志を持つ仲間と一緒に、人生を切りひらいていってほしい。そのためのサポートならなんでもやろうねって夫婦で話しています」 私たち夫婦の育児は『障害者の親になる』と決心したことから始まりました。今もそれが変わることはないけれど、娘のやりたいことをサポートしていく中で、娘のたくさんの笑顔や、素晴らしい出会いがあり、『私は私なりの自分の子育てをしている』と胸を張って言えるようになりました」(香織さん)

お話・写真提供/宮原紬ちゃん・香織さん 取材協力・写真提供/NHKエデュケーショナル、accessibeauty 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

車いすでの登山やカーリング、モデルにタレントと、やりたいことを見つけてはチャレンジしていく紬ちゃん。「興味があることはなんでもやってみて、紬が紬らしく生きていける道をみつけてほしい」と香織さんは話します。

宮原紬ちゃん(みやはらつむぎ)

(写真提供/アクセシビューティーマネジメント)

PROFILE
2016年生まれ。タレント・モデル。アクセシビューティーマネジメント所属。胎児期に二分脊椎症および水頭症と診断され、1歳で装具を着用。3歳から車椅子を使用し始める。2023年、イベントのキッズモデルにて装具姿でランウェイデビューを果たす。その後、障害者専門芸能事務所アクセシビューティーマネジメントのオーディションに合格し、本格的に芸能活動を開始。テレビ初出演はNHK Eテレ「こころ忍術ポポまるっ!」の主人公のクラスメイト役。 2025年からはNHK Eテレ「ノージーのひらめき工房」にて、シナプー役としてレギュラー出演中。

ノージーのひらめき工房

4~5歳からの子どもたちに向けた、NHK Eテレの工作・造形あそびの番組。シナプーは「ひらめき工房」に遊びに来る妖精たちで、ノージーと一緒に工作をして遊びます。宮原紬ちゃんはシナプーの1人として出演しています。(写真提供/NHK)

ノージーのひらめき工房

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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