英語習得の最適解はほぼ答えが出ている!? 子どもの英語学習に重要な「3つの発想転換」とは
わが子の可能性を広げるためにも、子どもを外国語にふれさせたい!
でも、どのように始めればいいの…?どうすれば身に付くの? と、不安に思うママ・パパも多いのではないでしょうか。
言語習得には「科学的な結論がほぼ出ている」と話すのは、元イェール大学教授で2人の子どものパパでもある斉藤淳さん。英語塾の代表で『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』の著者でもあります。
子どもの英語教育を始めるにあたっておさえておきたい3つの考え方についてお話をききました。
最高の語学学習法は赤ちゃんが知っている
――著書『ほんとうに頭のよくなる世界最高の子ども英語』で、「SLA(第二言語習得の研究分野)の科学的知見に基づく、英語習得に必要な3つの考え方」があるとのことですが、その3つとは?
1つ目は、“文字”ではなく“音”から学ぶこと。赤ちゃんが日本語を覚えていく過程をイメージしてください。赤ちゃんは決して参考書を使って日本語を学びませんよね。親など身近にいる人たちの声を聞き、それをまねしながら発声をはじめていきます。新たな言葉を学ぶときは、赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じように文字からではなく音から入る、これが基本なのです。
2つ目は“断片”ではなく“かたまり”で学ぶこと。赤ちゃんは状況の中で単語を学んでいきます。簡単に言うと、単語や文法をモジュール(部品)で学ぶのではなく、「こういう状況のときは、こういう言葉を使うんだな」と覚えていくことが大事です。その状況にあった言葉や言い回しというのが“かたまり”です。
3つ目に大事なのは“英語を”学ぶのではなく“英語で”学ぶことです。小さい子は、日本語経由で英語を学ぶのではなく、英語そのものを吸収していきます。日本語と英語は別々にできあがっていくので、日本語の意味を教えたりしなくていいんです。
文字の認識は、年齢が進めばできるようになっていきます。実際の状況や物を目で見ながら英語を聞くといったように、まず英語の音を状況と対応づけることが大切です。状況に合った音を吸収していくと、やがて音と意味と文字とがつながっていく、それが赤ちゃんの語学学習の順番なわけです。それをなぞるのが語学学習でも自然といえば自然なんですよね。
英語の時間は勉強ではなく、遊びの時間
――英語学習に大切な“3つの基本”をどう教えていけばよいでしょうか? 英語が苦手なママ・パパにとって英語を学ばせるのはハードルが高いのも事実です。
難しく考えることはありません。3つの基本というのはあくまでも技術論であって、その大前提として親子で英語の時間を楽しむことが不可欠。「英語を勉強する」ととらえると失敗してしまいます。本当に伸ばしたいなら、英語の時間を楽しい遊びとして位置付けることです。
たとえば多くの子どもが大好きな動画は、視覚と聴覚を同時に刺激し、状況と言葉との対応の理解も進みます。親も一緒に観て、登場人物のセリフをまねしたりするのもいいでしょう。
「Good morning.」「Good night.」「Great!」など、日常の文脈に英語を取り入れてみるだけでも英語への関心が高まっていきますし、絵本の読み聞かせでも、絵を見ながら質問するのもいいですね。小さいうちは、英語を介した家族との楽しい時間をたくさん作ることが近道です。親は決して英語が上手でなくてもいいんです。子どもと楽しみながら英語の復習をするくらいの軽い気持ちで英語に親しみましょう。
SLAの研究では、英語を習得するためには学ぶ側の意欲が不可欠ということがわかっています。そうでないと、学び続けることができません。子どもの場合は、楽しさこそが継続のカギです。そのためには、映像でも絵本でも、子どもが興味のあるコンテンツを選ぶことが大事で、それは親の役目だと思います。楽しければ続きます。日頃から子どもとの対話の中で知的好奇心を刺激するコンテンツを探ってください。
臨界期を超えたら間に合わない?
――最近、語学学習における「臨界期」という言葉を耳にします。子どもが臨界期を過ぎると英語を習得しにくくなるのでしょうか?
臨界期はもともと母語の習得に関して提唱された仮説であり、母語を習得できるリミットのことです。6~7歳までに母語にふれていればいわゆるネイティブ、母語話者になるのですが、そもそも言語習得論の世界では「母語話者」概念自体が揺らいでいます。訛りも一つの多様性と捉えられる世界であり、ことさらネイティブ、ネイティブというのも、やや時代遅れです。とはいえ、英語として基本的な音の違いは習得することが望ましいと私は考えます。歌を歌っても上手い人や音痴がいるのと一緒で、発音習得にも個人差があります。臨界期を過ぎたからもう間に合わないと諦めることはありませんし、下手だからと絶望する必要もありません。ただ、中学生以降の英語学習の効率を高める意味で、音声の基礎は重要です。
平均的には、発音は圧倒的に小さい子の方が身に付きやすいのは事実です。例えば、日本人が難しいとされるLとRを区別して発音し、これを定着させる練習でいえば、子どもは30分で身に付いても、高校生になると5時間くらいかかったりもします。私が教室で実際に生徒を教えた感覚値ですが、それでも多数の生徒を教えてみて、やはり学説通りだな、と実感します。
また、3歳くらいになると好き嫌いがはっきりしてくるので、好きな英語のコンテンツを親が見つけやすく、英語への興味を引き出しやすくなりますね。小学校低学年くらいまでなら、ためらいなく英語の世界に飛び込めてモチベーションも保ちやすいので、早期の英語教育は良いことだとは思います。年齢によってベストな学習法や目標レベルの目安はありますが、子どもは親の計画通りには動いてくれないものです。子どもの発達段階に合わせてやり方を調整していくといいですね。
おまけ★こども英語ロードマップ
「 3つの考え方」をベースに、具体的な実践として年齢別に落とし込まれたロードマップ。(「ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!」より)
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先生によれば、子どもの英語教育はいつからでも遅くなく、いつからでも早過ぎることはありません。もっとも大切なのは、“楽しく”英語にふれること。楽しければ、自発的に英語を学ぶ姿勢もきっと育まれていくはずです。
(文・井上裕紀子)
▼Profile
斉藤 淳(さいとう じゅん)英語塾「J Prep斉藤塾」代表
1969年、山形県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業、イェール大学大学院博士課程修了。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授を経て、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。元衆議院議員。『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法 』など著書多数。
▼書籍情報
ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て! 斉藤 淳 (著))