何歳までかわいい言葉を話してくれるのか、母の思い【御手洗直子のコマダム日記】
今回は「娘との会話」について。一大センセーションを巻き起こした「婚活コミック」著者、御手洗直子さんが結婚して2児の姉妹の母に。あいかわらずのつっこみどころ満載の日々、渾身のひとコママンガ&エッセイでお送りします。「つっこみが止まらないコマダム日記」#99
争いは何も生まない
過去、『おかあさんだいすき』という幼児のかわいい告白に対して『おかあさんはその10倍2ちゃん(次女)が好きだもんね~~~!』という煽り文句での返しをしてしまった。その時点から続くこれらは私と2号(次女)の争いの歴史である。
『ンン~~~~!』という威嚇を含んだ唸りを発しつつも『おかあさん、10ばいよりおおきいのはなに?』という質問をしてきた2号に『100倍とか』と、それよりも、それよりも大きな数を教えているうちに最終的に『わたしのほうがひゃくおくまんむりょうたいすうばい、おかあさんのことが好きだもんね!』という内容をはらむ文言として
『おかあさんがひゃくおくまんひゃくおくまんひゃくおくまん(×20回くらい言う)むりょうたいすうむりょうたいすうむりょうたいすう(×20回くらい言う)』という、だいぶ単位がバカになった呪文が完成した。『私の方が』『(おかあさん)を』『(〇〇)倍』『だいすき』という単語が抜け落ちてしまったため、主語が消失している。というか述語も消え失せてしまった今、とにかく勝ち負けすら通り越した、いっぱい言ってみたいパッションのもと繰り広げられる挨拶(?)として定着してしまった。
ちなみに文章ではさらに語彙力がおぼつかないため『おかあさん100000000000000000000000000000000000』とだけ書かれた文章が届く。怪文書の誕生である。
最近ではとうとう『おかあさん』も消え失せ、テンションが上がりしだい『うふ~~ん』と言いながらクネクネと近づいて来つつ耳元で唐突に『ひゃくおくまんひゃくおくまんひゃくおくまん…』と始まり(途中で息継ぎの『スゥ~~~ッ』が入る)最後『むりょうたいすうっ』で終わるようになってしまった。ただのでかい数である。(正確にはでかいようでいてただの単位の羅列である。)
最初は『おかあさんだいすき』という、2号の心情を的確に表現した文言だったのだ。しかし私の浅はかな返答がそれを破壊してしまった。愚かな。争いは何も生まないのに。
そんなわけだが、おもしろいのでそのまま放置している。5才で半年ほど、すでに人生の10分の1ほどの期間このギャグを採用し続けている2号だが、いったいいつまで続くのであろうか…。
そしてここまで書いてて完全に『ひゃくおくまん』を正しい単位だと思っていたがそんなことは無かった。2号に洗脳されてただけだった。(おわり)
御手洗直子
Profile pixivで大人気。累計閲覧数1100万を誇る爆笑コミックエッセイスト。なんでそんなにネタ満載人生を・・・という謎の人。既刊に「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」「31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる」(共に新書館)、「腐女子になると、人生こうなる!~底~」(一迅社)、「つっこみが止まらない育児日記」「さらにつっこみが止まらない育児日記」(ベネッセコーポレーション)など。たまひよのサイトで、数話限定公開中。
御手洗直子twitter:@mitarainaoko