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「目標があるから前を見て生きていられる」後遺症との闘い…。がんサバイバーの僕にできることは?

更新

「みんなのレモネードの会」のオンラインイベントでは、頑張って練習したピアノを披露しました

悪性脳腫瘍のつらい治療と闘うなか、19歳の亀山晴生くんは、がんサバイバーとして、小児がんの子どもたちを支援するレモネードスタンドの活動を始めます。しかし2度の治療のあとに待っていたのは、それはつらい後遺症でした。思うようにいかない身体と戦いながら、入院中に自分を支えてくれた院内学級の先生のようになりたいと、この4月からは通信制大学に進学、教員免許の取得をめざします。

特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるためのヒントを探したいと考えています。

前編の「中3で診断された悪性脳腫瘍。2度の入院、過酷な治療。『つらくて夜看護師さんと泣いたことも…。家族の支えで少しずつ前へ』では、中3で脳腫瘍と診断された晴生さんと母である高子さんにその闘病生活について話を聞きました。後編では、小児がんの子どもたちを支援するために晴生さんが携わっているレモネードスタンドへの思い、将来の夢について聞きました。

再発の治療を終え退院の翌日にはレモネードスタンドの活動に参加

長期入院を余儀なくされた再発治療。退院翌日のレモネードスタンドに車椅子で参加した

ーー 晴生くんがレモネードスタンドに興味をもったのは
晴生さん(以下敬称略):初発の治療が終わった年の12月に、小児がん患者だった栄島四郎くんが小児がん支援のためのレモネードスタンドを開いているというニュースを偶然見たことがきっかけです。

当時はまだ再発前だったので、「僕自身は治って退院できたけれど、小児がんに立ち向かっている子がほかにもいることを入院中に知り、小児がん経験者の僕にできることがあったらやってみたい」と思ったんです。

退院から10カ月後、高1の10月に地域の小さなお祭りで、母の仕事先の人や幼なじみと一緒に、初めてレモネードスタンドを開きました。
レモネードスタンドの開催の告知を見つけて、みんなのレモネードの会の栄島さんと四郎くんが訪ねてくださったのもうれしかったです。

療養中の今も、できる範囲でみんレモの活動に参加

2021年には長期入院中の5カ月間同室だった若木くんとみんレモサンタとしてお世話になった小児病棟へプレゼントを届けに行きました

ーー 2回目のレモネードスタンドに参加したのは、再発の治療を終えて退院した翌日だったそうですね。

晴生:参加したといっても、退院翌日でまだ体力もなかったので、車椅子で顔を出しただけですけれど。それでもどうしても参加したかったし、顔見知りの人や幼なじみ、近所の人、手伝いに来てくれた「みんなのレモネードの会」の栄島四郎くんに会えてすごーくうれしかったです。

再発前に考えていた僕の予定ではどんどん回復して、高校にも元気に通えるし、レモネードスタンドの活動にもたくさん参加できるかなと思っていましたが……。再発してしまいました。
         
また再発退院後の2019年、そして2020年、2021年のクリスマスには、「みんなのレモネードの会」の活動の一つである「みんレモサンタ」として、お世話になった東京慈恵医大病院の小児病棟に入院する子どもたちにプレゼントを届けました。

今は自宅療養中ですが、そんな自分にもできることがある、参加できることがあるのはとてもうれしいです。

教員になりたい! 後遺症に悩まされながらも描く将来の夢

入院中もピアノの練習を欠かさなかった晴生くん。今の目標は教育実習に耐えられる体力を付けること

ーーー 現在の体調は?

晴生:今は、本当になんとか毎日を過ごしている状態です。高校は卒業できましたが、治療後の後遺症(晩期合併症)による強い倦怠感などがあり、自宅療養を送っています。
大学受験に耐えうる体力まで回復せず一般受験はあきらめましたが、1年間の浪人生活の自分なりのまとめ、区切りとして共通テストを受験しました。でも、将来教師になりたいという夢があるので、この4月からは通信制大学に進学して勉強する予定です。

高子:つらい再発の治療も、初発の治療後の元気な晴生を思い出してなんとか乗り切りました。でもこの2年以上の予期していなかった後遺症は、正直、入院中よりつらいと思うこともありました。ご飯とトイレ以外は起きられない、歩くのもやっとの時期もありましたが、それでも足腰が弱らないように、背中を押し、脇を抱えて、散歩に出た日もありました。今なおその長いトンネルの中にいる思いで、こんなにがんばっている晴生を神様は見てくれているのかなと思ったこともあります。

ーー将来の夢は先生ですか?

晴生:一番は「元気になって働きたい!」ということです。大学ではコンピュータや数学の勉強をして、教員免許をとろうと思っています。そのためには、教育実習を乗り越えられるくらいの体力をつけたいと思っています。

長い入院生活のなかで、体調が良ければ院内学級で毎日2時間ほどの授業を受けられました。体調が悪くておしゃべりしかできない日もあったけれど、先生と過ごすかけがえのない時間は僕の精神的な支えでした。だから、僕も教員免許がとれたら、生徒の心に寄り添えるような先生になりたいと思っています。

近い目標としては、少しでも行動範囲を広げられるように、原付免許を取りたいです。

不安なことはいっぱいあるけれど、日々、体調不良と戦う僕にとっては、「目標があることが生きること」だし、「目標があるから生きていられる」、そう思っています。

最後に、高子さんが「晴生は本当に不思議なくらい穏やかに静かに毎日を生きています。退院してからの2年間は、精神的には入院中よりも過酷で、思うようにならない日々でした。どうしてこんなにも荒立つことなく穏やかでいられるのか。私はいまだ、晴生の体調を見ては泣いたり沈んだり……。そんな母を心配し、晴生はいつも静かに穏やかでいてくれているのかもしれません」と話してくれました。


小児がん啓発活動、患児やその家族の交流会などを開催する「みんなのレモネードの会」。小児がん患児家族、そして当事者の立場からの話を4回に渡ってお届けしてきました。「みんなのレモネードの会」では、Webサイトやブログ、SNS等を通じて、広くその活動を発信しています。

写真提供:亀山高子
取材・文 / 米谷美恵

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