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「いつまた引き離されるの?」特別養子縁組をした娘の不安を何度も受け止め、親子に

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「出会って初めのころは近づくとスーッと離れていきましたが、何度もかかわるうちに、手をつないで散歩できるように」とパパ。

2018年9月、特別養子縁組前提で当時2歳4カ月の女の子・なっちゃんを迎え入れた、会社員のパパ(45歳)とママ(43歳)。シリーズ3回目では、なっちゃんと初対面するまでの経緯やエピソードなどをお届けしました。最後の4回目は、なっちゃんとの初対面から現在の様子などをまとめました。
児童相談所と連携して里親探しをする団体「家庭養護促進協会 大阪事務所」のソーシャルワーカー山上有紀さんにもお話に参加していただき、お届けします。

初めは近づいてくれず、1カ月後にうちに来てくれるのかと不安に

初面会の日、ママとパパは嬉しくてテンションが上がるものの、なっちゃんは無反応。「最後は現実逃避で寝てしまいました」(パパ)

「かわいい…それしかない!」(なっちゃんママ)
「ちっちゃっ」(なっちゃんパパ)

これは、施設でなっちゃんと初面会したときの印象をママとパパが語った言葉。パパはそのときのエピソードも教えてくれました。

「初面会の日は、児童相談所の担当職員さんと山上さんも来てくれました。私には姪っ子が2人いて、幼い女の子とのかかわりに慣れていたので、何も意識せずに娘を抱っこしたんです。そうしたら娘は固まって無反応。現実逃避するかのように寝てしまったんです」(なっちゃんパパ)

当時の様子を山上さんに聞くと、
「最初は、ママからプレゼントを渡してもらうことから始めました。なっちゃんは受け取るけど、無表情。“施設の先生の膝から離れるものか!!”って感じでした。初面会では、どのママもパパもすごく嬉しそうなのですが、子どもは泣くか無反応なのがほとんどで。なっちゃんもパパの抱っこは嫌じゃないけど、どうしていいかわからなかったんでしょう」

その後、約1カ月にわたって施設で実習をします。ママは施設近くにマンスリーマンションを借り、ほぼ毎日通って一緒に遊んだり、散歩に行ったり、着替えなどのお世話をしたそうです。パパも週末など仕事が休みの日には、片道数時間かけて、実習に通いました。

「初めは全然私のほうに来てくれなくて、様子見って感じでした。これで1カ月後にうちに来てくれるかな、と少し不安でしたが、実習の終わりごろには2人だけで遊べるようになりました」(なっちゃんママ)

実習中、ママはパパに注意したことがあったとか。

「初めからなっちゃんに近づきすぎないように妻から言われました。実際に近づくと、娘はスーッと離れて行くんです」(なっちゃんパパ)

パパが近づくと、なっちゃんはどうして離れてしまうのでしょう。

「なっちゃんにしてみたら、自分にとって特別な人が近づいてきていることになるので、“そんなにすぐには心を許さないよ”という思いから距離を取るのでしょう。逆に、だれかのパパなら自分には関係ない人なので、なっちゃんはすぐに近づくと思いますよ」(山上さん)

実習の前半は、パパが近づくと距離を取っていたなっちゃん。でも、ほかの子がパパに近づくと意外な行動に出たそうです。

「ほかの子がなっちゃんのパパに“パパ~”と言いだすと、なっちゃんはその子をたたきに行くんです。自分のパパだとアピールしているんですね。子どもの複雑な気持ちの表れです」(山上さん)

すべてを受け入れ、大事にかかわると子どもは大きく変わる!

実習を終え、なっちゃんはおうちに迎えられます。まもなくして実習では見なかった、なっちゃんの一面が現れたとママとパパは言います。

1日に何度もおふろと散歩をせがみ、ママとパパを試す!

施設からおうちに迎えられた多くの子に見られる「試し行動」。子どもは自分のすべてをママやパパが受け入れてくれるかどうかを試すために、わざと大人を困らせるような行動をすると言います。
なっちゃんはどのような様子だったのでしょう。

「妻は1日に何度もおふろや散歩をせがまれ、私は時間が許す限り散歩に付き合いました。“気が済むまでやらせて”と養親講座で言われていたので、娘がやりたがったら必ず応じましたね。私は仕事から帰宅したら散歩に。外が真っ暗だと、娘は怖がって帰りたがるんですが、帰った途端にまたせがむんです。“真っ暗で怖くて帰ってきたよね”となだめても行きたがるので、そのたびにドアを開けて暗闇を見せると、“もういい”と言うようになりました」(なっちゃんパパ)

「1日5~6回、おふろ場で気が済むまでシャワーをかけました。育休の約半年間、なっちゃんのやりたいこと全部に付き合ったら、おふろも散歩も言わなくなりました。私は5kg痩せましたけどね(笑)。逆に、養親講座でもっと大変な実例を見て身構えていたからか、おふろと散歩だけでいいの?と思っていました」(なっちゃんママ)

なっちゃんの試し行動は、なぜ収まったのでしょう。

「ママとパパが自分の要求にすべて付き合ってくれると、子どもはそれ以上やらなくても頼めばちゃんと引き受けてくれる人だとわかるんです。それで収まったのでしょう。おうちに迎えたら、0歳から子育てをやり直して、命にかかわること以外は叱らない、止めないということを養親講座では学んでもらっているんです」(山上さん)

“起きたら施設にいるかも…”そんな不安から寝つきの悪い子に

施設にいたときは、すぐに寝付くタイプだったなっちゃん。それなのに、おうちだと夜の寝つきが悪くて心配だったと言います。

「娘は夜寝て朝起きたら、ママとパパがいることも、新しいおうちに来たことも全部が夢かもしれないと考えたんじゃないかと思うんです。だから、寝るのが怖かったのかなと」(なっちゃんパパ)

もともと寝つきのいい子が、おうちに迎えられるとなかなか寝ない子になるケースは多いと山上さんは言います。

「おうちで寝るのが“不安なタイプ”と“もったいないタイプ”がいます。前者は、なっちゃんのように寝て起きたら施設に戻っているんじゃないかと不安で寝ないタイプ。後者は、おうちだともっと遊べるから寝るなんてもったいないと思うタイプ。施設は集団生活なので生活時間にきっちりした枠組みがありますが、おうちの時間はもっと自由度が高いので、“もっともっと”となる。ママやパパが寝ない自分をどこまで受け入れてくれるかを試していることもあります」

「2語文が出ない」と言われていた子がおしゃべりな子に

初面会の前、なっちゃんは発達がゆっくりで2語文が出ないと言われていました。でも、おうちに迎えられると、大きな変化がありました。

「近くに住む祖父母も含め、みんなでしゃべりかけていたんです。たぶん、それで言葉を覚えたのかもしれません。
娘は5歳になりましたが、常に歌ってるか、踊ってるか、しゃべってるかという子。迎え入れたころは、割と物静かな感じでしたが、今はとてもひょうきんな子になりました」(なっちゃんママ)

「なっちゃんがおうちに引き取られて3週間後に家庭訪問すると、ものすごくおしゃべり好きな子になっていました。言葉のシャワーを浴びると、子どもは変わるんだなと思いましたね」(山上さん)

「大阪から来たんだよ」真実告知は日常会話で自然に

養子であることを子どもに伝える「真実告知」。家庭養護促進協会の養親講座では、いつ・どのように伝えるかをママとパパに考えてもらっているそうです。

「 “なっちゃんは大阪から来たんだよ”みたいに、日常会話の中でわかるように本当のことを伝えています。うそをつかないことがいちばん大事かなと。娘も“わたし、大阪から来たんだよね~”と普段から口にしています。娘が大きくなったとき、“そういえば小さいときにママやパパから聞いたな”とうっすらでも覚えていてくれたら、本当に理解していくかなと思っています」(なっちゃんママ)

なっちゃんを迎えて人生の経験値がグンと上がり、世界が広がった!

「誕生日やクリスマスのケーキはホール丸ごと独り占めしてOKにしています」(ママ)

なっちゃんをおうちに迎えると、ママとパパの生活は一変し、人生の経験値がグンとアップしたと言います。何がどう変わったのでしょう。

「いちばん変わったのは、休日の過ごし方ですかね。夫婦2人のときは、趣味や女子会参加などお互いに好きなことをしていました。娘が来てからは、娘が楽しめる場所に一緒に出かけるように。夫婦だけだったら絶対に行かない、子ども向けキャラクターのコンサートとかね(笑)。世界が広がりました」(なっちゃんパパ)

「3人で行きたい場所が多すぎて、まだ行けていないところもいっぱいあります。子ども向けのテレビ番組にも詳しくなりましたよ。お気に入りの番組があるときは、ニュース番組が見たくても見せてくれません」(なっちゃんママ)

なっちゃんの誕生日祝いやクリスマスイベントなども盛大だと山上さん。

「お誕生日は1週間祝っているし、クリスマスは毎年ツリーを買っていて年々大きくなっているんですよ」

家庭は子どもが主役。それが保証されるのが家庭

なっちゃんが「施設の子」から「家庭の子」になって今年で丸4年。施設と家庭で育つことの違いについて尋ねると、

「いちばん大きな違いは、子どもがいつも主役でいられるか、いられないかだと思います。クリスマスのイベントで例えると、施設では職員の方々が楽しいゲームなどを考えて盛大なイベントをしてくれます。もちろん、子どもたちは大喜びです。でも、1人の子どもだけのためじゃなく、みんなが対象です。
一方、家庭は盛大なイベントにはならないかもしれないけど、その子1人のためだけのイベントになる。これは、子どもの成長にとても影響があるかなと思います」(なっちゃんパパ)

続けて、山上さんはこう話します。
「施設は集団生活の場なので、“見てみて~”とアピールできる子は、ほかの子よりも目をかけてもらえるでしょう。でも、なっちゃんのようにおっとりした性格の子などは、手がかからない“いい子”と捉えられがち。手がかかる子のほうがより手をかけてもらえるという部分はありますね。家庭は、日常のすべてのことに対して、大人がその子1人のためだけに動いてくれる場ですから」

特別養子縁組を特別に考えることはない

これまでの経験を踏まえて“親子とは?”と質問すると、ママとパパはこう答えてくれました。

「子どもにとって親は、身構えることなく心から頼れる存在。親にとって子は、文字通りに木の上から立って見守るべき存在であるとともに、かけがえのない存在。そこに血のつながりなどは関係なく、お互いの絆と信頼でつながっている。それが親子かなと思います」(なっちゃんパパ)

「日常を3人で過ごせるだけで幸せを感じる関係かなと思います。一緒にいられればそれで十分ですね」(なっちゃんママ)

また、特別養子縁組をして思ったことがあると言います。

「何も取り柄のない私たち夫婦が娘を迎え、娘から幸せをもらっています。“特別養子縁組”と聞くと、特別な響きを感じますが、何も特別に考えることはないと思います。家族3人で楽しく毎日を送っていて、傍から見たら普通の家族です。ただ血が繋がってないだけ。それだけのことです」(なっちゃんパパ)

「子育ては、ママの年代が若いほど体力的にはラクかもしれません。でも、特別養子縁組は、自分の子育てがしたいという強い信念と覚悟が決まるようになるまでは、焦って進めないほうがいいと思います」(なっちゃんママ)

取材協力/公益社団法人 家庭養護促進協会 大阪事務所 
法律※1に定める許可を受けた養子縁組のあっせん団体(全国22団体※2)のうち、児童相談所と連携して児童福祉法上の里親を探し、養子縁組を促進する国内唯一の社会福祉団体。
昭和39年から始まった大阪事務所がこれまでに取り持った養子・養親里親の数は1422組(2021年3月現在)。昭和37年から始まった神戸事務所もある。

※1民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成28年法律第110号)第6条第1項
※2厚生労働省家庭福祉課調べ/令和3年4月1日現在

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