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サヘル・ローズ「戦争、病気、震災。ある日突然、家族が引き離されてしまうことも。だからこそ、子どもを抱きしめ、愛を伝えて」

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自らの想いをていねいに、ときには涙を流して、語ってくれました

女優やタレント、レポーター、コメンテーターとして活躍するかたわら、国際人権NGO「すべての子どもに家庭を」の親善大使を務めるなど、恵まれない子どもの支援を続けるサヘル・ローズさん。今、世界で起きている戦争が生み出す負の連鎖に心を痛めています。イランの戦時下で生まれ育ったサヘルさんは「自分が守っている子どもや向き合っている人たちに丁寧に『今、起きている戦争』について伝えていくことが大切」と話します。

前編の「血のつながりはないけれど、愛にあふれた親子のカタチ『生まれ変わったらわたしのおなかから出てきて!』」に続いて、後編では、サヘルさんが考える「がんばらない子育て」について話を聞きました。

今、起きている戦争についても包み隠さず子どもに伝える

――― 世界中がコロナ禍で疲弊していた矢先、戦争が起きて、毎日、テレビやネットで子どもたちが逃げ惑うような悲惨な光景が映し出されています。

サヘル・ローズさん(以下敬称略) 戦争の映像を見たり聞いたりはしていても、子どもたちは「戦争が何か」を理解できていません。だからこそ、私たち大人は「今、起きている戦争」について、包み隠さず子どもたちに伝えていくことがとても大切なんです。今の日本には、戦争を経験している人は多くはありません、実感をもてないし、どこかで遠い国の出来事のように思っているかもしれません。でも、戦争というものが「いつ自分たちに降りかかってきてもおかしくない」という怖さは、決して忘れないでいてほしいと思うんです。

実際に今、戦争が起きているウクライナやロシアでは、自分の子どもの成長する姿を見られない人たちがたくさんいます。それはとても悲しいこと。親は、子どもが育っていく姿を見るのが生きがいのはずですから。

戦争に限らず、病気や震災など、家族が引き離されてしまう状況がいつ訪れるかもしれない。今、胸に抱きしめている子どものそばにずっといられるとも限らない。だからこそ、毎日、1分、1秒、家族が共に過ごす時間を大切にしてほしいし、子どもを抱きしめて、「好きだよ」「愛しているよ」と伝えてあげてほしいと思います。

子育てに葛藤するのは、ママ、パパも成長しているから

今起きている戦争のこと、SNSのこと、目をそらさずに子どもに伝える大切さを話してくれました

――― 初めての子育てでは、つい「自分がしっかりしなくちゃ」「がんばらなくちゃ」「いい子に育てなくちゃ」などと思いがちです。

サヘル・ローズ 親という言葉、家族という言葉、子育てという言葉は、時として「こうでなければならない」と人をがんじがらめにして苦しめます。

おそらく多くのかたは「自分がちゃんとした親になれるのかどうか」悩んだり、不安だったりしていると思うんです。それでも、周りに相談できる人がいなくて、自分でなんとかしなくちゃいけないと葛藤している……。

でもね、きっと葛藤しているのはあなたひとりではないし、誰もが葛藤を抱えながら、失敗を繰り返しながら、いろいろな過ちを犯しながら、生きています。

そして、葛藤しているっていうことは、お父さんもお母さんも成長している証拠。だから、自分たちが間違っているとか、できてないとか思う必要は一切ありません。子育てにも、人生にも、正解なんてないし、家族にもいろいろな形がありますから。

――― でも例えばSNSを見ていると、他の人の「幸せな」部分にばかり目が行ってしまいがちです。

サヘル・ローズ SNS上でどんなに笑っていても、どんなに幸せそうに見えていても、それはその人のほんの一面でしかなくて、本当は誰もが何かしらの葛藤を抱えていると思うんです。

だからね、人と比べて、「どうして私はだめなんだろう」なんて思う必要は全然ありません。がんばっている自分を褒めてあげてほしいし、模索してどうしたらいいかわからない自分もまた正解だということをわかってほしいんです。

子育ては、決して人に見られるためや他人に評価されるためのものではありません。きっとそれぞれの正解、合ったやり方があるはずです。子育てって、本を読んで勉強するものではないし、子どもから学ぶことや自分の実感から気づくことも多いと思います。

そして、もうひとつ大切なことは、決して自分の考えを子どもに押し付けないことだと思います。

大切なのは子どもとの対話。決して親の考えを子どもに押し付けないこと

サヘルさんが伝えたいことを14の言葉の花束にして

――― 親は子どもに期待するから、「これもやらせてあげたい」「いい学校、安定した会社に入ってほしい」などと、つい思ってしまうんですよね。

サヘル・ローズ 親が子どものためだと思って言う言葉、やらせることが、子どもにしてみると、親のやれなかったことを押し付けられているように感じてしまうことがあります。

私と養母の関係を振り返っても、親というものは、自分の子どもを変えようとしがちです。それはもちろん親の愛ですけれど、子どもは自分を否定されているように思えて苦しくなってしまいます。

子どもは親にとってとても大切な存在だし、「守ってあげたい」という気持ちは理解できるんですけど、守り過ぎるとその子は成長できなくなってしまいます。だから、本当にやりたいことが何なのかを常に子どもと対話すること。そして、決して自分の考えを子どもに押し付けないことがとても大切です。

そのためにも、お父さん、お母さんがまず子どものために自分を犠牲にしないこと。親である前にひとりの男性であり、女性であるのですから。

子どもは、お父さん、お母さんから受けた愛を必ず受け止めます。もしかしたら、反抗期があったり、いろいろな衝突が起きたりすることもあるかもしれませんが、まっすぐ向き合っていれば、子どもは必ず親の愛を感じると思っています。


――― この記事を見ているお父さん、お母さんにサヘルさんからエールを贈ってください。

サヘル・ローズ 今、この世の中で子育てをすることには、不安も葛藤もあると思うんです。でも、そういう気持ちを抱えているのは決してあなたひとりではないということを知ってほしいです。つらいことがあったら、絶対にひとりで溜め込まず、必ず誰かに話してくださいね。

そのためにも、ときには夫婦でカウンセリングを受けることも必要ではないでしょうか。海外では、夫婦でも、ひとりでもカウンセリングを受けて、自分の心のうちを吐き出すことが日常の一部、習慣になっていますから。

残念ながら、日本にはそういう習慣はないので、辛いことがあっても、一人ひとりが抱え込んでしまう傾向があります。もし、自分のなかに葛藤があったり、溜め込んだ思いを人に話せなかったりするときは、世間の目ではなく自分の心のために、子どもと向き合うためにも、ぜひカウンセリングを受けてほしいと思います。

最後に、最近は、スマホをいじっていたり、ゲームをしていたり、家族でいるのに、全く対話をしなくなってきていると感じることがあります。目の前にいるのに、なぜ家族とLINEでやり取りをするのか、すごく気になっています。子どもは、そんな大人を見ていて真似するようになってしまいます。対話することや衝突し合うことが大切であることを、子どもにしっかり伝えてほしいと思います。


取材・文・写真/米谷美恵 画像提供/サヘル・ローズ

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

サヘル・ローズさん

PROFOLE
俳優・タレント/1985年イラン生まれ。幼少時代を孤児院で生活し、フローラ・ジャスミンの養女として7歳のときに引き取られる。8歳で養母とともに来日。高校時代に受けたラジオ局J-WAVEのオーディションに合格して芸能活動を始める。レポーター、ナレーター、コメンテーターなど様々なタレント活動のほか、俳優として映画やテレビドラマに出演し舞台にも立つ。
また芸能活動以外では、国際人権NGOの「すべての子どもに家庭を」の活動で親善大使を務めていた。私的にも支援活動を続け、公私にわたる福祉活動が評価され、アメリカで人権活動家賞を受賞。『困難を乗り切るための“自分育て” 言葉の花束』(講談社)以外に、『戦場から女優へ』(文藝春秋)、写真詩集『あなたと、わたし』(安田菜津紀氏と共著/日本写真企画)がある。

困難を乗り切るための“自分育て” 言葉の花束(¥1,430/ 講談社)

孤児、養子縁組、貧困、いじめ、差別……。さまざまな困難を切り抜けてきた著者が、
自らの体験を今、言葉の花束にした珠玉の一冊。

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