「Twitterの育児アカウントを100人くらい見てこい」と夫に説教したことも。激動の日々を乗り越え、夫婦はさらに仲よくなれた!その秘訣は【漫画家ふっくらボリサット】
実用的エッセイ漫画『夫婦で作るメンタル安全基地』の作者、ふっくらボリサットさん。結婚当初からうっすらと感じていた夫婦間のズレを解消すべく、夫のサミ太郎さんと試行錯誤を重ねて「夫婦ミーティング」というコミュニケーションの場を持つようになりました。夫婦げんかも減り、平和な日常を過ごしていたのもつかの間…第1子の妊娠・出産で新たなフェーズに突入! 産後の夫婦のコミュニケーション方法や子育てについて聞きました。
わが子と対面した瞬間、産前の心配はぶっ飛んだ
――出産前のイメージと実際の子育てのギャップはありますか?
ふっくらさん(以下敬称略) 産前ももちろんお世話の準備はしていたんですけど、直近の一大イベントが出産だったため、なかなか出産後の生活をイメージすることができずにいました。実際赤ちゃんが生まれたときに「あ、本当に育児するんだ」と感じたくらい(笑)。お産が終わった直後は「よし、終わったぞ!」という気持ちになっていたので、母子同室が始まって「じゃあ、お母さん頑張ってね〜」と赤ちゃんを渡されたときは「え!? マジで!?」と思いましたね(笑)。
子育てエッセイなどで、産後、子どもがかわいいと思えないと感じる場合もあることを知り、もし自分がそう感じてもへこみすぎないぞ…!と心構えをしていたんですが、実際生まれたわが子はめちゃくちゃかわいくて、その心配はぶっ飛びました。むしろ子がかわいすぎて、新生児のころは尊さのあまり「かわいい…!かわいい…!」と毎日号泣していました。産後はホルモンバランスが崩れて涙もろくなると聞いてはいましたが、そっち方面に崩れたか〜!と意外でした。
――妊娠中、サミ太郎さんはどんな様子でした?
ふっくら 妊娠初期から子育てについて一緒に勉強をし始めたんですが、新生児は3時間おきに泣いて授乳するとか、親はこま切れ睡眠で大変だぞ、という話をサミ太郎にしたらまったくピンときていなかったんです。「赤ちゃんみんながそんな頻繁に泣かないでしょ。それはちょっと極端な例じゃない?」と言い出す始末で…。いやいや、ちょっとTwitterの育児アカウントを100人くらい見てこい、と(笑)。ちょうどそのあと、自治体主催のオンライン両親学級に参加したのですが、そこで「3時間おきどころではない」とか「父親がどれだけ育児参加するかでその後の夫婦仲が決まる」と口すっぱく言われて、心を入れ替えてくれました(笑)。
覚悟はしていたけれど コロナ禍での孤独なお産に涙…
――サミ太郎さんは出産に立ち会えたのですか?
ふっくら 夫婦ともに立ち会いする気満々だったのですが、コロナ禍でかなわず。私が入院するとき、サミ太郎も一緒に病院まで来てくれましたが、ロビーで「家族はここまでです」と制され、そこからは私1人です。妊娠したとき、すでに新型コロナウイルスが感染拡大していたので、立ち会うことができない可能性も十分あると心の準備はしていたつもりですが、めちゃくちゃ寂しかったですね…。お見舞いもNGだったので、サミ太郎が赤ちゃんと対面できたのは退院のとき。陣痛で余裕がなくなりお産の録画ができず、あとから悔しい思いをしました。分娩台に上がってから、3時間くらいずっと音声通話はできていたので、サミ太郎の「頑張れー!頑張れー!」という声に励まされました。
夫婦の労力を減らせるなら惜しまず出費!
――家事や育児など生活の中で決めているマイルールを教えてください。
ふっくら とにかくしんどくなったら早めに言う、というのは決めています。産後はしんどさを自覚することもできないくらい体力的にも精神的にもハードで、それこそすごいしんどくなってからサミ太郎にヘルプを求めたら、「おお、大丈夫か?」と驚かれまして。こんなに疲弊されてから相談されても、サミ太郎も困ってしまうよなと。遠慮せず、むしろどんどんわがままになるくらい要望を伝えてもいいんだ…と気づきました。
わが家には「お金を出して労力が減らせる部分は、値段が許せば迷わず導入しましょう」というルールがあります。赤ちゃんのお世話グッズを購入したり、3種の神器と呼ばれる食洗機、乾燥機付き洗濯機、お掃除ロボットをそろえたり。おかげで家事が快適になりました! グッズでいうとドッカトットとスワドルアップがうちの子には合っていたようで、よく寝てくれるようになりました。ハイローチェアは新生児のころはよかったのですが、今では「背中スイッチ発動機」になってしまって、最近はあまり使えていません。高かったのに…(笑)
あとこれはある方のコミックエッセイで得た気づきですが、子どもが大人の生活に入り込んできたと思えばいい、と。なんでも子ども中心にせず、まず大人の生活のことを考えて次に子どものことを考えよう、というのを意識しています。赤ちゃんは超かわいいし、一生懸命お世話をするのは当然のことですが「主導権はこっち(親)やで」っていう気持ちでいると少しラクになりました。それでも新生児のときはすごく振り回されたんですけど(笑)、大人がごはんを食べている間は、「ちょっと待ってね〜私が食べたごはんが栄養となりお乳となり、あなたにいくからね〜」と声をかけながら、赤ちゃんに少し待ってもらっています。
産後の心身のダメージはしっかり伝えるのが吉
――育児をする上でやってよかったことも聞きたいです。
ふっくら 自分の心身の状況をサミ太郎にしっかり伝えたことです。出産でこれだけのダメージを受けたんだよ、というのは結構こまかく伝えましたね。何㎖出血したとか、輸血を受けたとか。胎盤の写真を見て「これがはがれたの!? そりゃしんどいな…」と共感してくれたのはうれしかったですね。
これは完全に事故なんですが、退院後、私が部屋の中で突然すっ転んでしまって(笑)。ローテーブルにあばらを強打し、「うう、痛い…」とうずくまっている私を見て、サミ太郎は「普段は転ばないところで転んでしまうほど、お産でダメージを受けたのか。おれがしっかりしないとダメだ!」と思ったようです(笑)。
「夫婦ミーティング」は超簡略版に変化
――産後の「夫婦ミーティング」はどうしていますか?
ふっくら とにかく時間と労力を赤ちゃんに吸われてしまい、「夫婦ミーティング」の定期開催が難しくなったので、「赤ちゃんが寝ている間ミーティング」と呼んで、ささっと終わらせています。本当に簡略版ですね。ただ、コミュニケーションは出産前より意識してとるようにはしています。たとえば赤ちゃんが寝ているとき、疲れていると私もサミ太郎も虚無の顔でずーっとスマホを見ていたりするので、そうならないように「はい、今から『大人タイム』です!」と宣言して話をしたり、いちゃついたり(笑)っていう時間をとるようにしています。
――赤ちゃんが大きくなったら、以前の「夫婦ミーティング」を再開予定?
ふっくら 次は「家族ミーティング」になるかもしれないですね。ママとパパはこういう感じでコミュニケーションをとっているんですよ、というのを子どもに見てもらうのは、とてもいいんじゃないかなと思っています。
激動の日々を乗り越え、夫婦はさらに仲よくなれた!
――最後に、漫画『夫婦で作るメンタル安全基地』を出版した率直なお気持ちを教えてください。
ふっくら 「やりきった〜!」という感じで本当にうれしいです。単行本作業はちょうど産後1カ月ごろにやっていて、おなかに授乳クッションを巻き、その上に赤ちゃんを乗せて授乳しながらiPadを操作して…という状態のときもあったり(笑)。大変ながら楽しくもあり、なかなかない貴重な体験をさせていただきました。担当編集さん、そして夫にも感謝の気持ちでいっぱいです。漫画は夫婦の話で、文字通り夫がいないと成立しません。この日々を夫婦一緒に二人三脚で駆け抜けたことで、さらに仲よくなれたんじゃないかなと思っています!
お話/ふっくらボリサットさん 取材・文/高本亜紀、ひよこクラブ編集部
©︎ふっくらボリサット/講談社
目の前に新たな壁が立ちはだかってもあきらめず、2人で力を合わせて乗り越えようと努力しているふっくらさんとサミ太郎さん夫婦。それはきっと、これまでの「夫婦ミーティング」でしっかりと築いてきた地盤があるからこそ。
夫婦のコミュニケーションにお悩み中のママやパパ、ぜひ「夫婦ミーティング」を試してみてはいかがでしょうか?
ふっくらボリサット
Profile
漫画家&イラストレーター。2022年2月に第1子を出産し、夫のサミ太郎(サーミーは、タイ語で「夫」の意味)さんとともに初めての育児に日々奮闘している。
『夫婦で作るメンタル安全基地〜「離婚するほどじゃないけどなんかモヤモヤするッ」を減らして持続可能な夫婦になる〜』
夫婦が、お互いを人生の最大の味方=安全基地とできるようなパートナーシップを築くための、実用的エッセイ漫画。講談社のサイト&Sofaにて連載。単行本2022年5月23日(月)発売。ふっくらボリサット著。715円/講談社