日本は子育てしやすい国ですか? 治安、医療では高い評価。でも「子育てしにくい雰囲気」を、ひしひし感じるという声も
年初に「異次元の少子化対策」を打ち出した岸田政権。そこで「たまひよ」アプリユーザーに「日本は子育てしやすい国ですか?」と、質問してみました。「子育てしにくい」「どちらかというと子育てにしくい」合計約38%となり、「子育てしやすい」「どちらかというと子育てしやすい」合計約31%、「どちらとも言えない」約30%と比べて、「子育てしにくい」が若干上回りました。総合病院・クリニック・助産院など様々な場所に勤務し、これまでに数千人の母子のケアに携わられた助産師の浜脇文子先生に聞きました。
「日本は子育てしやすい国と思いますか?」
「どちらとも言えない」と答えた人が一番多い結果となりました。
「子育てしやすい国だと思う」「どちらかと言うと子育てしやすい国だと思う」理由
「子育てしやすい国だと思う」「どちらかと言うと子育てしやすい国だと思う」理由(複数回答)を聞いてみると、
1位 治安が良い(子どもの安全が確保できる)
2位 医療体制が充実している
3位 公的支援(補助金、予防接種など)が充実している
4位 産休育休制度が充実している
5位 教育機関が充実している
6位 妊婦や小さな子供に対して社会的な許容性が高い(子育てしやすい雰囲気)
7位 保育に関係する施設が充実している
8位 その他
という結果になりました。
「治安の良さ」「医療体制」が評価されました。
「子どもが健康健全に育つ環境が整っている」として、子育てしやすい日本
「産休育休中もお給料が保障され、ありがたかったです」(ふーちゃん)
「他国の子育て事情を知りませんが、私は産休育休がしっかり取得できたし、義父母の協力もあり、問題なく子育てできています。地域の子育て支援センターも活用して、不安な事は日々解消できています」(こうちゃんママ)
「世界には、子どもに十分な教育を受けさせない国がまだまだ多いです。さらに日本は様々な制度を有効に活用すれば、子育てに困ってもなんだかんだ言って助けてもらえると思います」(わんこ)
「定期的に予防接種が受けられ、義務教育が受けられる。当たり前のことだけど、子どもが育つ上で大切だと思う」(いわし)
と、子どもが教育を受けられる環境とともに、医療費や助成金が充実し「子どもの健康面で安心できる国」とするコメントが多く寄せられました。
「どちらかと言うと子育てにしくい国だと思う」「子育てがしにくい国だと思う」理由
「どちらかと言うと子育てにしくい国だと思う」「子育てがしにくい国だと思う」と思う理由(複数回答)を聞いてみると、
1位 教育費(保育費、習い事、塾も含む)が高すぎる
2位 妊婦や小さな子どもに対して社会的な許容性の低さ(子育てしにくい雰囲気)
3位 父親の育休の取得率の低さ=妻のワンオペ
4位 公的支援(補助金、予防接種など)が少なすぎる
5位 医療体制が悪い(大きな小児科が近所にない、など)
6位 治安が悪い(子どもの夜の習い事の送迎は必須など)
7位 その他
という結果になりました。
多くが「教育費が高い」「子育てしにくい雰囲気がある」感じているようです。寄せられたコメントには、母となって知った切実な声が届きました。
「子どもがいるとお金がかかるし、周囲の視線が厳しい」として子育てしにくい日本
「電車にマタニティマークを付けて乗っても知らんぷり。ツラくても席に座れなかったり、歩くのが遅くて文句を言われたり。日本は余裕の無い人が多い印象を受ける」(よしい)
「双子の母です。ベビーカー問題が本当に嫌になります。双子を抱えて1人で外出しようと思ったら必須なのに、邪魔だから抱っこと1人用のベビーカーを使えとか。お金がないので何台もベビーカー買えないし、自分でやってみてから色々言って欲しい。そう思っている人が少なからずいると思うと、家にこもることが増える……」(ツインズママ)
「保育園を作るな、子どもの声がうるさいという声が普通にあるのが悲しい」(みかん)
「保育園の待機児童ゼロの市に住んでいますが、入れるとしても自宅から遠い保育園になります」(焼きうどん)
「出産した時期はそれぞれ異なるのに、保育園の申し込み時期が一律。希望時期に復帰しづらい」(ちあき)
「保育園に入るなら0歳4ヶ月じゃないと厳しいと役所の窓口で言われ、生後4ヶ月で預けることになりそうです」(まし)
「出産育児一時金が増額されても、分娩費用も値上げしていたりで意味がない。一時的なお金じゃなくて、長期スパンでの支援がほしい」(ちゃん)
「習い事が当たり前のような社会。高額を払って塾などで勉強しないと大学へ行けない現状。高校の無償化はどこへいったのか」(おたか)
「政治での子育ての優先度の低さが、そのまま社会や家庭内に影響しているなぁと感じます」(かほり)
2022年、日本で生まれた赤ちゃんは79万9728人と初めて80万人を下回り、7年連続で出生率が減少したというニュースが駆け巡りました。
助産師であり、出産・子育てのコンサルティングも手掛ける浜脇文子先生に、日本の子育て環境について伺いました。
「ひとりひとりの優しいまなざしが、日本を本当に子育てしやすい国にする」
「日本の子育て環境は、ハード面(医療、教育など)は非常に優秀だと思います。小児医療は充実し、子どもたちは十分な教育を受けることができる。
けれどもソフト面は、コメントにもある通り妊婦さんや小さな子ども連れに対して優しくない社会だなぁと私も感じることはあるし、実際に妊婦さんやママたちからそういった話を聞きます。
妊娠中や赤ちゃんと一緒の生活は不便や不安が多いもの。なのに、多くの母は日本の社会の空気を察して他人に甘えちゃいけない、迷惑をかけちゃいけない、大人なのだから自分で何とかしなきゃいけない、として、ひとりでがんばってしまう傾向が強い。
私はそんなお母さんに『困っているときは周囲に助けを求めても良いんだよ』『いい大人が……という人もいるかもしれないけど、大人だって助けてもらいたい時はある』と、言うのですが、なかなか行動することは難しく、子育てのしづらさを感じるようです。
かつて日本は『こんなに子どもを大切にする国は見たことない』と、欧米で絶賛されていました。イギリスの女性旅行作家イザベラ・バートなど、幕末から明治時代に来日した欧米人たちは、日本では母、父、ご近所など多くの大人たちが子どもを大切に、慈しみながら育てている姿をみて、賞賛をもって『子どもの楽園』『子どもの天国』と、記録・記述しています。
なので、少しでも『子育てをがんばっているママを応援したい』と、思っている方がいたら、妊婦さんや小さなお子さん連れの方にエールを送っていただきたいのです。
国も政策として挙げている「ソーシャルキャピタル」という考え方があります。難しい話は省きますが、信頼や規範、ネットワークなど、社会や地域コミュニティにおける人々の相互関係や結びつきが強いほど、健康や社会全体に良い影響を与えると言われ、その数値が高いほど出生率も高くなるという研究データもあります。
つまりご近所、お店、乗り合わせた電車で赤ちゃん連れのママがいたら『赤ちゃんかわいいですね』など一言、声をかけるもいいし、優しいまなざしで見守るだけでもいい。
こういった小さな優しさが子育てで忙しいお母さんの心を癒し、ゆくゆくは子どもにとって居心地の良い社会に育っていくのではないでしょうか」
濵脇文子(はまわき ふみこ)
助産師・保健師・看護師。大阪大学招聘准教授。星薬科大学非常勤講師。総合病院・クリニック・助産院など様々な場所に勤務。母と赤ちゃんの笑顔が大好きで、数千人の母子のケアに携わります。産前産後ケアセンターの立ち上げに参加したり、民間企業での事業開発など多方面で活躍。自治体の講演や各種メディア執筆では、ひとりひとりのペースにあわせた母に寄り添う姿勢と、明るく軽快な語り口で人気を博します。
文/和兎 尊美
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2023年1月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数649人)
※記事の内容は2023年3月の情報で、現在と異なる場合があります。
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