わかっているけどママもしんどい上の子の「赤ちゃん返り」。そんな時はどうすればいい?専門家に聞く
「たまひよ」アプリユーザに「2人目出産の際、上のお子さんに“赤ちゃん返り”はありましたか?」と、質問。「あった」約38%、「なかった」は約36%となりました。赤ちゃん返りって意外と少ないの?と、思いきや「ないと思っていたら、無理していたようで子どもが入院に!」という、衝撃の体験談が寄せられました。
ママの総合病院・クリニック・助産院など様々な場所に勤務し、これまでに数千人の母子のケアに携わられた助産師の浜脇文子先生に聞きました。
2人目出産の際、上のお子さんに「赤ちゃん返り」はありましたか?
赤ちゃん返りとは、主に幼児期の子どもが、必要以上に抱っこをせがんで過剰に甘えてきたり、できることなのに「できない」と言ったり、赤ちゃんのように振る舞うことを言います。下の子の妊娠・出産をキッカケに、上の子が赤ちゃん返りをすることが多いようです。
過剰に甘えてくる、すぐ拗ねる、おしゃぶりを奪うなどなど「赤ちゃん返り」エピソード
「常に抱っこ抱っこ。ちょっとしたことで泣いたり拗ねたりすることが増えました」(さらごん)
「現在、妊娠2ヶ月。2歳の娘が絶賛“赤ちゃん返り”中です。妊娠発覚前から急に赤ちゃん返りが始まったことには驚きでした。遊びの内容にも変化があって人形相手にお世話ごっこに夢中。さらに常に抱っこを求めてくるので、妊娠初期なのに大丈夫かと少し心配です」(ゆきだるま)
「妹からおしゃぶりをうばって自分で使っていました。会話がしっかりできるのに『あ~ぁん』と、赤ちゃん言葉で会話しようとしてました」(yuriboo)
「夜泣きをするようになり、下の子のおしゃぶりをこっそり盗み、おしゃぶり復活させたことには驚きました」(NAOTO)
「上の子が下の子を叩いて泣かせたり、自分が優先されなかった時に叫んだり。その対応に心身共に疲れはてました……」(たゆママ)
幼児期だけじゃない⁉ 小学生の赤ちゃん返りエピソード
「6歳なのに『ママ、ちょっと食べさせて』とおねだりしてきました。独占できるのはあとわずかと理解しているのかな…」(さぼてん)
「下の子が生まれたとき、上の子は10歳でした。ママに甘えてきたり、いつもなら言わないわがままを言ったり、今思えば赤ちゃん返りがありました」(双子ママ)
「現在私は妊娠中で息子は小学4年生。赤ちゃん返り真っ盛りです。『ママー』と、肩にもたれてきたり、手を繋ぎたがったり。お兄ちゃんになるのが嬉しいと言うし、おなかをいたわってくれますが、やはり寂しい部分はあるようです。そんな息子も愛おしいです」(さおり)
母たちの対処方法は「とにかく甘えさせる」
「抱っこ抱っこになりました。下の子は泣かせるだけ泣かして、上の子優先で抱っこするように心がけました。下の子がおんぶ出来るようになってからは、下の子はおんぶが多かったです」(ゆかこまま)
「赤ちゃん返りは覚悟していたので、赤ちゃんのお世話の合間はなるべくひっついて一緒に遊び、私の身体がしんどい時は一緒にゴロゴロしたり。さらに『あなたも抱っこにきていいんだよ』と、遠慮せずに甘えるように言いました。
そしたら『オムツ替えるから待っててね』と、言うと待ってくれたり、赤ちゃんが泣くとずっとおなかを撫でたりしてくれるようになりました」(やね)
「ずーーーっと甘えっぱなし。さらにわざと怒られるようなこともしてきました。本当にダメな時は叱りましたが、甘えてくる時はひたすら甘やかしていました。少し大きくなった今、すごいわがままにはなったかも(笑)」(えり)
「赤ちゃん返りなし」と、思っていたのに……衝撃エピソード
アンケートによると「赤ちゃん返りなし」は約36%。しかしこんなエピソードが届きました。
「長男が生まれた時、長女は1歳8ヶ月でした。甘えたい盛りなのに理解が早く、聞き分けも良くてびっくりしていました。しかし2歳の誕生日の頃、突然体調を崩して入院。病室で長女とふたりで過ごす中で、やっぱり無理させていたんだなぁと(涙)
幸いにも5日ほどで退院でき、その後はなるべく長女を優先して『大好きだよ』の声かけもたくさんしました。赤ちゃん返りが行動には出ず、心の中で起きる子もいるんだと気づかされた出来事でした」(かほり)
赤ちゃん返りについて、ベテラン助産師の浜脇文子先生に聞きました。
「『赤ちゃん返り』の治療薬は『ママ(パパ)に大切にされている』と感じる時間」と、専門家
「わかりやすくたとえ話をします。
あなたは愛するパートナーと仲良く暮らしていました。幸せいっぱいだったある日、突然パートナーが若くてすてきな女性(男性)を連れてきて『今日からみんなで仲良く暮らそう』と、言いだします。
それだけでも衝撃なのに、パートナーの両親も自分の両親も『かわいい子だねー』と、新しいパートナーをチヤホヤ。あなたは到底、納得できないし、自分の幸せがおびやかされるのでは? と、不安になるはずです。
これが赤ちゃん返りをしている子の心理です。これほどの衝撃的な出来事なのです。
愛情を独り占めしてきた日々が終われば、面白くないのは当然。
抱っこ抱っこと執拗に甘えたり、いたずらしたりするのは『私をかまって』という、子どもなりの知恵。
とくにタチの悪いわがままやいたずらを発動するのは『全身全霊で猛アピールしないと、私を見てもらえない』という不安がそうさせているのです。
危ない行動にはちゃんと叱ることが大切です。けれども頭ごなしに怒るのではなく『なぜ、そういった行動をするのか?』を、考えてほしいと思います。
なので叱り役がお母さんだった場合は、父さんは一緒に叱るのではなく上の子に寄り添いましょう。
ただ、お子さんは“ママ”に執着するのが一般的。上のお子さんとママがふたりで過ごす時間が増えるように、パパが率先して赤ちゃんのお世話をすることも大事です」
赤ちゃん返り対策は「不意打ちの愛情表現」が効果的
「赤ちゃん返りの対策はコメントにある通り『赤ちゃんより上の子優先』が基本。でももっと効果的なのは『不意打ちの愛情表現』です。
上の子が要望していないのに『抱っこしてあげる!』と、抱っこしましょう。体力的に余裕がないときは不意打ちで『だいすき~』と、言いながらギュッとしましょう。
子どもは『自分は大切にされている』と、感じることができれば、愛情を試す言動も徐々に収まっていくでしょう」
『赤ちゃん返りがない』という子にも、是非に『不意打ちの愛情表現』を
「エピソードにもあった通り小学生でも赤ちゃん返りはあります。小学生とはいえまだまだ未熟ですからワガママを言うのが普通だし、(お母さんは大変ですが)自分の感情を吐き出しているのでケアの対処ができ、ある意味安心と言えます。
その逆に、私は『赤ちゃん返りがない』子のほうが心配です。
赤ちゃん返りがない理由として本当に安心しきっている子もいれば、『お母さんに迷惑をかけちゃいけない』として、頑張りすぎたり、『下の子を可愛がるとママが喜ぶ』として、注目されるためにいい子を演じたり、ということがあるからです。
なので、赤ちゃん返りがなくても不意打ちでギューッと抱きしめてあげてください。上の子とふたりで過ごす時間を作ってあげてください。
子どもにとって最高のご褒美は『ママ(パパ)に大切にされた時間』です。
『アレを買ってもらった、コレを買ってもらった』と、いう記憶よりも、『熱をだしたときに学校まで迎えに来てくれた』『一緒に〇〇をしてくれた』という記憶のほうが輝いて刻まれます。
なのでお子さんが許してくれる限りたくさんギューッをしてあげて下さい。
『ママ(パパ)に大切にされた時間』を、たくさんたくさん作ってあげてほしいと思います」
濵脇文子(はまわき ふみこ)
助産師・保健師・看護師。大阪大学招聘准教授。星薬科大学非常勤講師。総合病院・クリニック・助産院など様々な場所に勤務。母と赤ちゃんの笑顔が大好きで、数千人の母子のケアに携わります。産前産後ケアセンターの立ち上げに参加したり、民間企業での事業開発など多方面で活躍。自治体の講演や各種メディア執筆では、ひとりひとりのペースにあわせた母に寄り添う姿勢と、明るく軽快な語り口で人気を博します。
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2023年1月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数67人)
※記事の内容は2023年5月の情報で、現在と異なる場合があります。
文/和兎 尊美