生後7ヶ月で知った、長女の食物アレルギーは10項目以上。アレルギーっ子が笑顔になれる外食・旅行対策は!? 料理研究家ひろさんのお話【後編】
管理栄養士であり、サンキュ!STYLEライターなどプロの料理家として活躍中のひろさんは、8歳(小3)、6歳(小1)の姉妹、そして夫の4人家族です。長女ちゃんは生後7ヶ月のとき、食物アレルギーがあると診断されました。血液検査によると疑いのある食べ物は10項目以上。後編では外食や旅行の際に心がけたこと、そして長女ちゃんへの言いきかせ方や周囲への説明などについて伺いました。
生後7ヶ月で知った、長女の食物アレルギーは10項目以上。泣き明かした夜をこえて、今は小学校の給食を食べられるまでに克服。料理研究家ひろさんのお話【前編】はこちら
※今回のお話は、ひろさんと長女ちゃんの体験談です。食物アレルギーの症状はお子さんによって異なるため、アレルギーの治療や外出先での食事については医師の指導のもとで進めてください。
家族旅行での外食は下調べと準備が大事
長女ちゃんは1歳から医師の指導のもとで治療を行い、現在の食物アレルギーはえびとくるみのみ。学校の給食が食べられるまでに克服しています。
前編では「同じ境遇の方の参考になれば」と、その道のりを語っていただきました。後編は長女ちゃんとの暮らしぶりについて伺います。
アレルギーのお子さんが気を遣うのが外食です。日帰りなら持参することも可能ですが、旅行となるとそういうわけにはいきません。
「家族旅行が好きなのでよく行きました。やはり苦労しました」という、ひろさんの外食・旅行先での食事対策を紹介します。
心構え① 自分たちで調べて自分たちで判断する
「テーマパークのレストランや大手のファミレスなどは、ホームページにアレルギー表示があるので、できる限り下調べをして食事できるレストランの目星をつけ、可能なら予約しておきます。
私が調べた当時、TDLは事前にお願いするとメニューを書面で郵送してくれました。私は手元で確認したいタイプなので、とてもありがたいサービスでした。
ちなみにオーダーをとる店員さんに、原材料を見せてもらえるよう依頼をすることはありましたが、アレルギーに関する質問はしたことありません。料理名から使っている食材や調理方法を把握するには、それなりの知識がいると思うので。
できるだけ自分で、お店のホームページから確認するようにしていました」
心構え② 宿の食事はバイキングを選ぶと楽しい
「宿の食事はバイキングがよかったです。種類の多い宿なら、子どもたちもわくわくで選べますし、とても楽しそうです。
お食事処や部屋食の宿では、事前に電話で除去食をお願いできるか連絡します。最近は食物アレルギーが周知されているので、ほとんどの宿が快く受け入れてくれました。
我が家の場合は、お肉が増量されるパターンが多かったです。あるときは美味しそうなステーキがドーンとでて、夫が『親より豪華だな』と、つぶやいたことも(笑) 宿の方には『ありがたい』と、感謝でいっぱいでした」
心構え③ アンパンマンシリーズ(永谷園)をお守り代わりに持ち歩く
「外出先ではスケジュール通りにならないことが常。なので必ず永谷園の食物アレルギー配慮商品の『それいけ!アンパンマン』シリーズをかばんに常備していました。
常温で持ち歩けるし、ごはんがあれば立派な食事になるので、レジャーの際にはお守り代わりに持ち歩いていました」
外食の場所が見つからない! 時の対策①ファミレスを探せ
「うれしいことに、大手ファミリーレストランチェーンの低アレルゲンメニューは年々充実しています。我が家も困った時はファミレスを探せ!でした。私が個人的におすすめのファミレスベスト3を紹介します」
1位 ココス
「低アレルゲンメニューと言えばカレーが定番ですが、ココスには「低アレルゲンおこさまドリア」など、ホワイトクリーム風のメニューがあるんです! そして「低アレルゲンいちごアイス」も。お子さんのテンションが上がること間違いなし」
2位 ロイヤルホスト
「低アレルゲンメニューが多彩なうえに、個人的にはロイホの米粉パンが一押しです!」
3位 びっくりドンキー
「レジャー感のある店内の雰囲気で子どもも大喜び。その名の通り「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」があります。普通のハンバーグと比べて、忖度なく美味しいです」
対策② 家族みなが同じものを食べられる焼き肉店をさがせ!
「地方ではファミレスを探すのもひと苦労ということもあります。そんなときは焼き肉店です。ゴマやタレはかけないで、とお願いすれば肉、野菜、ごはんと家族みんな同じものをわいわい食べられるのが魅力です。我が家では旅行に限らず、今日はちょっと贅沢な外食がしたいねって日は焼肉です」
対策③ 奥の手はラーメン店かうどん店
「電話、もしくは入店前に『ライスはありますか?』と、確認。あった場合は『子どもに食物アレルギーがあるので持ち込みしてもいいですか?』と、お願いします。こちらもほとんどのお店が快く受け入れてくれました。長女はお守り代わりの永谷園の『それいけ!アンパンマン』シリーズで食事。本当にアンパンマンシリーズには何度何度も助けられました。
ちなみに最近は海外でもラーメン店やうどん店が増えているので、海外旅行先でもお世話になりました」
「食事する場所が見つからない~という場合は、コンビニでおにぎりを買って子どもたちのお腹を満たし、ようやく見つけたお店で親は食事、子どもたちはデザート、など臨機応変に対応しました。
夫の仕事の都合でインドネシアに2週間滞在したのですが、この時はさすがに苦労しました。日本食レストランにも足を運びましたが、子ども向けのメニューが少なく、から揚げとポテトで乗り切りました。
宿はキッチンのある部屋だったので、部屋でお米を炊いて朝はおにぎり、夜は肉を焼いて、気分転換はフルーツという食生活でした」
栄養が偏っているなぁと感じても、非日常を楽しむことを優先
「旅先では“偏っているなぁ”という食生活になることもありますが、そういう時もあってもいいよねって割り切りました。それよりも旅行という非日常な時間を家族で楽しむ方が有意義だと思うからです。
いろいろあった旅行も、今では良い思い出です」
外食では臨機応変に対応したというひろさん。長女ちゃん自身への言い聞かせや、周囲への対応でも“ネガティブにならずマイペース”を、貫いたそうです。
長女ちゃんへは、克服することを信じて「まだ早い」と、言い聞かせ
「旅行先でもそうですが、大勢と食事をする場所やママ友とのホームパーティでは長女が食べられない食材が出てきたりします。その際にはママ友にも長女にも
『あー、これはまだ長女ちゃんには“早い”ね』
と言って、その食材をすーっと遠ざけました(笑)。幼い子に『生ものはまだ早いね』という感覚と同じです。
“ダメ”という、ネガティブな表現は避けたかったし、“いつか食べられるようになる”と、私は信じていたし長女にもそう思ってほしかったからです。
『そのうち食べられるようになるから、それまで楽しみにとっておこうね』と、言うと、長女もすんなり『わかった』と、応じてくれました。
長女が聞き分け良かったのは、周りが過剰に動揺しなかったことも大きかったように思えます。
夫に初めて食物アレルギーの話しをしたとき、とても冷静でした。とはいえショックを受けただろうと思っていたのですが、最近改めて聞いたら『ショックは受けなかった。これから大変だなぁとは思ったけど』という、楽観的な答え(笑)
けれども“家族全員同じものを食べる”という私の方針に、文句を言うどころか楽しんでいる様子さえあり、とても協力的でした。
お互いの両親も、長女の食物アレルギーに関する動揺は少なく、『おやつは何を用意したらいい?』など、“自分たちができることを教えて”という姿勢でいてくれました。
その際もやはり『アレ避けて、コレも避けて』とネガティブな言葉は選ばず、『フルーツがいい』『おせんべいやわらび餅(長女大好物)かな』と、具体的に指定するようにしました。そのほうが親も楽だし、娘もうれしいし。
ママ友にも基本的にはお話して、ホームパーティでは娘の分を持参することが多かったです。
今は本当に食物アレルギー対応の考えが広くゆきわたっていて、ケーキならシャトレーゼで買えるし、ミスタードーナツでもアレルギー特定原材料7品目を使用していない『ふかふか焼きドーナツ』があるし、モスバーガーにも低アレルゲンメニューがあります。
アレルギーっ子に優しい世の中になっているなぁと嬉しいです」
「かわいそう」と、言わないでほしい。だってかわいそうじゃないから
「人より大変な子育てだったのかもしれません。周囲から『かわいそう』と、言われたこともあります。でも、それはちょっと違うかなって、私は感じています。
長女の場合は食べられる物のほうが多いし、アレルギーに関係なく誰だって食べられない食材ってありますから。食べられないことは『かわいそう』ではないと思うのです。
長女が食物アレルギーになったことで、和菓子のすばらしさを改めて知るなど、私が未開拓だった美味しいモノを探すきっかけとなりました。
さらに米粉レシピのコンクールで入賞し、思いがけずプロの料理家になれました。
食物アレルギーの治療方針は人それぞれですから、難しい問題ではあります。
けれども私の話で、ひとりでも前向きになってくれたらうれしいなと思っています」
ひろさんのSNSにはときどき、食物アレルギーのお子さんをもつ親御さんから相談や質問のメールが届くそうです。話を聞くと、ほとんどの親御さんは通院をしていないそうです。
食物アレルギーの症状は人それぞれで、治療に対する考えも人それぞれ。
ただ、ひろさんが食物アレルギーに対して前向きになれたのは、病院でちゃんと医師と話して治療をすすめたことが大きかったと言います。
「ひとりでも多くの人に、病院に相談してみようと思ってほしい」と、ひろさんは今回の取材に応じてくださいました。
アレルギーっ子が、笑顔になれる日常が増えればいいなと思います。
最後に、ひろさんオリジナルの7大アレルギー対応のスイーツレシピを紹介します。
ひろさん、取材のご協力ありがとうございました。
※今回のお話は、ひろさんと長女ちゃんの体験談です。食物アレルギーの症状はお子さんによって異なるため、アレルギーの治療や外出先での食事については医師の指導のもとで進めてください。
優しい味わいの「おとうふココアプリン」
[材料] 小さめプリンカップ4個分
・絹ごし豆腐・・・1パック(150g)
・無調整豆乳・・・150ml
・砂糖(てんさい糖)・・・30g
・ココアパウダー・・・大さじ1
A粉ゼラチン・・・5g
Aゼラチンを溶かす水・・・30ml
・トッピング・・・お好みで
1.水大さじ2にゼラチンをふり入れてふやかし、600wのレンジで20秒加熱して溶かす
2.豆腐、豆乳、てんさい糖、ココアパウダーを合わせてミキサーにかける
3.生地を少量とり、ゼラチンに混ぜ合わせてから再度ミキサーにかける
4.プリンカップに入れて冷蔵庫で固まるまで冷やす
ひろ
小さなころから食べることが大好きで管理栄養士の資格を取得。妊娠中に野菜ソムリエの資格をとり、サンキュ!STYLEライター、Nadia artistなどプロの料理家として活躍中。インスタグラムでは“今夜何を作ろう?”と、いうママのお悩みに応えるシンプルな材料&手順のレシピや、ホットケーキミックス研究家として、家事の合間にささっと作れる本格スイーツレシピを紹介しています。プライベートでは姉妹の母。現在は克服してるが、長女の食物アレルギー(小麦・卵・乳・大豆など)があった経験をもつ。
取材・文/川口美彩子
※この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
※記事の内容は2023年5月の情報で、現在と異なる場合があります。