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MIS-C(ミスシー)ってどういう病気?川崎病との関連は?後遺症の発見に心エコー検査が重要【専門家】

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子供と母は風邪をひいた
●写真はイメージです
maroke/gettyimages

子どもが新型コロナウイルスに感染したあとに、川崎病に似た合併症(小児COVID-19関連多系統炎症性症候群=MIS-C)が現れることがあるといわれ、コロナ禍で川崎病が注目されるようになりました。2022年6月14日に行われた、川崎病の子供をもつ親の会主催の講演会で話をした、国立成育医療研究センター(以下成育医療研究センター)総合診療部の益田博司先生に、川崎病とMIS-Cの違いなどについて聞きました。

2020年は川崎病が激減。2021年以降もさらに減っている…?

川崎病は主に乳幼児に好発する原因不明の全身の血管炎。後遺症として、心臓に酸素と栄養を与えている冠動脈に瘤(こぶ)をつくることがあります。1967年に小児科医の川崎富作先生が特徴的な症状をもつ50人の患者さんの経過をまとめて報告し、後に「川崎病」という病名がつけられたそうです。1人目の患者さんは、1960年12月30日に発症した4才3カ月の男の子と記録されています。
川崎病には以下の特徴的な症状があり、現在はこの中の5つ以上の症状が当てはまるか、4つの症状+冠動脈瘤(りゅう)を認めた場合に川崎病と診断されます。また症状が4つ以下で、冠動脈瘤がなくてもほかの疾患が否定されたときに、不全型川崎病の診断に至る場合もあります。

①発熱
②両側眼球結膜の充血
③口唇の紅潮、いちご舌
④発疹(BCG接種痕の発赤を含む)
⑤四肢末端の変化
⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹

「1970年に厚生省(当時)川崎病研究班が発足し、第1回川崎病全国調査が行われました。その後も2年に1回、自治医科大学の公衆衛生学の先生方を中心に川崎病の全国調査が行われています。2019-2020年に行われた第26回川崎病全国調査が最新版で、2019年の患者数は1万7347人、2020年は1万1173人でした。2019年と比べ35.6%減っていました。

1980年代に3回大幅に増加した年があり、1990年ごろからずっと増加傾向にあった川崎病が2020年に激減したことに、川崎病の専門家たちは非常に注目しています。新型コロナウイルス流行との関連が示唆されていますが、今のところ理由はわかっていません。第27回川崎病全国調査(2021年―2022年)の結果を見て、さらに議論が進められることになると思っています」(益田先生)

全国的な状況は調査結果を待つことになりますが、益田先生が川崎病の患者を診察・治療している感覚では、2020年以降の川崎病の患者数の増減はいかがでしょうか。

「川崎病と診断し、当センターで初回治療を開始した患者さんは2019年110人、2020年95人、2021年105人でした。2022年は6月時点で35人です。例年の1〜6月と比較しても2022年は非常に少ない印象です。新型コロナウイルスとの関連があるのか、それ以外の別の原因があるのか、全国調査の結果を待ちたいと思います」(益田先生)

川崎病に似たMIS-Cという疾患が新たに生まれた

新型コロナウイルスに感染した子どもが、感染後に川崎病に似た症状を引き起こす症例が2020年4月以降、欧米で報告されるようになりました。新型コロナと川崎病の関係については、現時点ではどのように考えられていますか。

「MIS-Cは、新型コロナウイルス感染の2〜6 週間後に発症し、多臓器系にわたる強い炎症を起こす病態で、2020 年 4 月から海外での報告が相次ぎました。発症時にはすでにPCR検査が 陰性であることが多く、海外の1000例近い症例をまとめたものでは、発症年齢の中央値は8.4才と年長児に多く、人種もアフリカ系が最も多い結果でした。症状は、発熱はほぼ必発で、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うことが多く、循環不全やショックなども伴うことが多い病態と報告されています。

一部に、発疹や眼球結膜充血など川崎病様の症状が認められ、川崎病の診断基準を満たす例が存在しています。
しかし、MIS-Cと川崎病には症状や検査所見に異なる点も多く、両者がまったく違う疾患なのか、ある程度は似た病態なのか、現時点では結論は得られていません。

日本小児科学会は、以下の症状を呈し、ほかの疾患が除外され、ショックを伴っている場合に、MIS-Cの確定診断に至るとしています」(益田先生)

MIS-Cの症状

以下をすべて満たしている
□21才未満
□38度以上の発熱
□新型コロナウイルスに関連する以下の要件のいずれかに該当する
・PCR検査または抗原検査が陽性
・抗体検査が陽性
・新型コロナウイルスの症状が見られる
・4週間以内に感染者と濃厚接触をした
□次のうちの2つ以上の症状がある
・発疹(多形性、班状丘疹、紫斑状、非水泡性)
・消化器症状(下痢、腹痛、嘔吐)
・手足の浮腫
・口腔内粘膜病変(口唇発赤・亀裂、いちご舌、咽頭発赤)
・結膜炎(めやにのない結膜充血)
・頸部リンパ節腫脹
・神経症状(意識障害、脳症など)
□入院を要する重症度

MIS-Cを経験。免疫グロブリンが効かず、ステロイドパルス療法を実施

今のところ、日本国内でMIS-Cと診断された子どもはまだあまり多くないそうですが、益田先生の経験を聞きました。

「当センターでもMIS-Cの患者さんの経験があります。患者さんは小学校低学年の男の子です。今年のはじめに、新型コロナウイルスに感染しましたが、症状はそれほど重くなく、自宅療養で元気になり、その後、学校も普段通りに行っていました。しかし、コロナが完治して4週間後にまず首の痛みが出現し、その後、発熱、頭痛、腹痛、夜間に普段とは違った言動を認めるようになり、当院を受診しました。

受診時は発熱4日目で、首のリンパ節の腫脹、発疹、口唇の赤み、眼の充血を認めました。症状からは川崎病の可能性もありましたが、年長児であること、新型コロナウイルス感染の既往があること、消化器症状を認めたこと、血液検査の結果で炎症反応が非常に高く、血小板数が低かったこと、本人の具合いがあまりよくなかったことなどからMIS-Cと診断し、その日から入院治療を行いました」(益田先生)

治療方法と経過について教えてください。

「治療方法は基本的には川崎病と同じで、まず免疫グロブリンを投与しました。1回目の投与で炎症反応の改善が見られなかったため、再度、免疫グロブリンを投与しました。それでも期待する効果が得られませんでした。入院前から認めていた、普段とは違った言動を入院後も認め、頭部MRI検査を実施したところ、脳の中の脳梁(のうりょう)膨大部に脳炎を併発していることがわかり、入院3日目からステロイドパルス療法を実施しました」(益田先生)

ステロイドパルス療法とはどのような治療法ですか。

「ステロイドを大量に投与する治療方法で、3日間点滴を行います。強力な抗炎症作用および免疫抑制作用が期待でき,通常のステロイド投与量では治療できない重篤な病態に用いられています。
この患者さんもステロイドパルス療法によって症状が一気に改善し、入院から2週間で退院することができました。

MIS-Cはまだわかっていないことも多いのですが、川崎病と同様に、冠動脈瘤の後遺症を認める場合もあります。
この患者さんも、退院後は血栓予防のためにアスピリンを1カ月間服用してもらいましたが、心エコー検査などの結果、冠動脈瘤を認めなかったため、薬は終了しました。その後はとくに問題もなく、運動の制限もなく、現在は普通に生活しています」(益田先生)

現在も経過観察は行っているのでしょうか。

「MIS-Cはフォローアップの方法もまだ明確なものがありませんが、川崎病と同じように5年間は経過観察を行い、定期的に心エコー検査で心臓の状態を診ることとしています。今後、フォローアップの方法が確立されたり、川崎病とMIS-Cの関連性などがもっとわかってきたりするかもしれません」(益田先生)

冠動脈瘤の早期発見のために、心エコー検査の重要性の周知が不可欠

川崎病とMIS-Cは、冠動脈瘤の早期発見・早期治療のために、心エコー検査で心臓の状態を確認することが重要なのは、共通しているとのことです。

「川崎病の治療の最大の目的は、血管の炎症をできるだけ早い段階で抑え、冠動脈瘤ができるのを予防することです。MIS-Cでも冠動脈瘤の後遺症を残す場合があるので、その点は共通しており、MIS-Cの患者さんも心エコー検査で、冠動脈を含めた心臓の評価は必要です。

一方、川崎病は不全型川崎病の場合、特徴的な症状がはっきり出ないケースもあります。この場合は川崎病の診断までに時間がかかり、川崎病に対しての治療開始が遅れ、必然的に心エコー検査を行うまでに時間がかかってしまうことがあります。

通常、心エコー検査による冠動脈の評価は、すべての小児科医やどの医療機関でもできるわけではありません。患者さんを最初に診た小児科医が、『川崎病の疑いがあるから心エコー検査ができる医師や施設で、心エコー検査をしてもらおう』と判断することが、とても重要になります。
小児科医の中で川崎病への理解はずいぶん深まっていると感じますが、不全型川崎病の診断はとき非常に難しい場合があります。この点は、川崎病を診療する上での課題の1つとなっています」(益田先生)

MIS-Cは学童期の子どもに多いようですが、幼児も新型コロナウイルスに感染したときは、元気になったあともしばらくは注意が必要です。また、川崎病が疑われる症状が見られたら、心エコー検査で判断する必要があることも覚えておきたいものです。

お話・監修/益田博司先生 取材協力/川崎病の子供をもつ親の会 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

※記事の内容は記載当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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