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低年齢での近視が増加。将来、視覚障害のリスクも…。国内初の子どもの近視実態を調査【専門医】

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※写真はイメージです
yaoinlove/gettyimages

子どもの近視の状況を正確に把握するための調査が、2021年4月~12月に国内で初めて行われ、その結果が発表されました。子どもの近視の治療・研究をしている東京医科歯科大学 眼科学教室の五十嵐多恵先生に、日本の子どもの目に起こっていることを聞きました。

低年齢での近視が増加。将来、視覚障害や失明やリスクも…

そもそも近視とは、目がどのようになった状態でしょうか。

「目の表面の角膜から、目の最も奥にある網膜までの眼球の前後の長さを「眼軸長(がんじくちょう)」といい、眼軸長が正常だと、外から入った光は網膜の上できちんとピントが合い、近くも遠くもよく見えます(正視)。ところが眼軸長が長く伸びてしまうと、ピントが網膜より前で合ってしまい、近くは見えるけど遠くは見えなくなります。これが近視(軸性近視)です」(五十嵐先生)

2021年度に国が初めて行った「児童生徒の近視実態調査」は、日本各地の小中学生約8600人の眼軸長を測定し、近視の状況を正確に調べました。
眼軸長検査は「光学式眼軸長測定装置」を使って行い、十数秒間小さな光を見ているだけで測定できます。

「今回の調査で、小学1年生の眼軸長の平均は男子22.96ミリ、女子22.35ミリ。小学6年生は男子24.22ミリ、女子23.75ミリ、中学3年生の平均は男子24.61ミリ、女子24.18ミリでした。成人の眼軸長の平均は24ミリ程度ですから、小学6年生の時点で成人の長さに達していることがわかります。
身長が基本的には縮まないのと同じように、一度伸びた眼軸長は短くなりません。そして、眼軸長が長くなるほど近視は進みます」(五十嵐先生)

今回の調査で、現在の子どもたちは、低年齢から近視が進行しているということがわかりました。

「通常、眼軸長の伸びは17歳ごろで止まり、近視の進行も止まると考えられていました。しかし、低年齢で近視になると、大人になるまでに強度の近視(目から16センチくらいの距離しかはっきり見えない)になる可能性が高く、強度近視になると眼軸長は一生伸び続けることが明らかとなりました。こうなると、中高年以降、緑内障や網膜剥離、近視による網膜の病気になるリスクが高まります」(五十嵐先生)

国をあげて子どもの近視抑制に取り組んでいる国々を見習おう

日本の子どもたちの近視は、かなり深刻な状況になっているようです。

「前述の『近視実態調査』は今回初めて行ったものですが、1979年から毎年、全国の国公立私立の幼稚園、小中学校、高校を対象に『学校保健統計調査』を行っていて、幼稚園児や小中高校生などから抽出した約333万人を対象に健康診断を実施しています。2021年度の結果を見ると、裸眼視力が1.0未満だったのは小学1年生が約4人に1人なのに対し、小学6年生は約半数を占め、中学3年生になると6割を超えていました。裸眼視力が1.0未満の中学生の割合は、この調査を始めて以来、過去最高になりました」(五十嵐先生)

この状況は日本だけのものではなく、世界的に見ても子どもの近視は増加傾向にあります。

「東アジアでは過度な受験競争によって、以前から近視は増加していました。これに加えて、近年は携帯ゲーム機・タブレットなどの電子端末機器を使う時間の増加など、子どもを取り巻く環境が世界規模で大きく変わった結果、かつて近視が少なかった国々でも、近視の人口が急激に増えています。2000年には世界の近視人口は14億人、強度近視人口は1.6億人でしたが、2050年には、世界人口の半数の48億人が近視となり、世界人口の約1割の9.4億人が強度近視になるという研究発表があります」(五十嵐先生)

この状況はWHO(世界保健機関)も深刻にとらえていて、公衆衛生上の懸念があるとしています。もともと近視が多かった東アジアでは、強度の近視が増えていることが問題視されています。

「東アジアでの近視の増加は、学習環境が影響していると考えられています。日本を含む東アジアの国々では、『学習は教室の中で教科書を開いて行うもの』という考えが根強くあります。一方欧米では、かなり前から屋外活動が学習スタイルの1つとして定着しています。この違いが子どもの視力に大きな影響を与えているのです。
最近の研究で、近業時間(手元など近いところを見続ける作業を行う時間)が長く、屋外で過ごす時間が短い子どもたちは、そうでない子どもたちと比べて、近視がオッズ比で最大2.6倍高いことが示されています」(五十嵐先生)

東アジア地域と欧米との学習環境の違いが、子どもの近視の増加にも影響を与えているとのこと。それでは、東アジアの国では対策を取っているのでしょうか。そして、日本はどうなのでしょうか。

「シンガポールは2001年から国策として近視を防ぐための屋外活動キャンペーンを大々的に実施し、増加する小学生の近視を食い止めることに成功しました。台湾では2010年から、小学校で1日2時間の屋外活動時間を確保したところ、視力0.8未満の小学生の割合が5パーセント以上減ったと報告されています。小さな子どもほど環境の影響を受けます。台湾は、同様の対策をプレスクールの子どもにも実施し、小学校での対策よりも高い予防効果が得られたことを報告しています。

残念ながら、日本の近視対策は非常に遅れていて、具体的な近視予防策の指針は出されていません。このため、シンガポールや台湾と異なり、低年齢の小児の近視が増加し続けています。こうした中で、パソコンやタブレットなどの電子機器が小中学校の授業で使用されるようになりました。電子機器の適切な使用方法や、近視の予防対策の啓発がこれ以上遅れると、日本では近視の子どもがさらに増え、重症化することが懸念されます。

対策が進む国際社会の動向を見習わなければ、将来、世界の中で日本が突出して強度近視の人口が多く、視覚障害に苦しむ人も多い国になってしまうのではないかと、長寿社会であるからこそ非常に危惧(きぐ)しています」(五十嵐先生)

子どもの近視を抑制する治療はある。でも日本では保険適用外の自費診療

低年齢で近視になってしまうと、強度近視となり、眼軸長の伸びが止まらなくなることが心配されます。近視が進むのを止めることはできないのでしょうか。

「実は、近視抑制の有効性が国際的に認められている治療法はいくつかあり、海外では近視の子どもたちに発症の早期から提供されています。残念ながら日本では今のところ、海外で有効性が認められている治療のすべてが厚生労働省の承認が得られておらず、未承認です。このため基本的に保険適用外の治療となり、自費診療となってしまいます。そのため、親の情報量や経済状態の違いによって子どもの視力に格差が出てしまうことも、非常に問題視しています。

日本で子どもの近視進行抑制治療として行われるものの中には、国際的に明確なエビデンスやコンセンサスが得られていないものも多くあるので、子どもに受けさせる前に、医師の説明をよく聞き、疑問点や不安なことは解決してから受けるようにしましょう」(五十嵐先生)

子どもの近視が心配なときは、小児眼科で診てもらうのがいいでしょうか。

「日本の小児眼科はどちらかというと、弱視や斜視などを専門にしている先生が多く、近視は専門外としている先生が多い印象があります。近視(治療)外来がある眼科や、近視を専門とする先生に相談するのがいいでしょう。

人生100年といわれる時代、子どもの目を近視にさせないことは、将来の視力を守ることにつながります。もともと近視人口の多い日本は、近視を軽く見る傾向にありますが、長寿社会では、近視は怖いもの。強度近視を防ぐためには幼児期からの管理が必要であることを理解してほしいと思います」(五十嵐先生)

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/五十嵐多恵先生

周囲に近視の人が多く、ママ・パパ自身が近視のことも多いため、「近視はだれでもなるもの」と思いがちですが、近視は軽く考えてはいけないもの。子どもが小さいうちから、このことを理解しておくことが大切です。

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