そのライフジャケット、本当に安全ですか?子どもを水の事故から守るライフジャケット、選ぶときにはここに注意を!【専門家】

毎年、夏になると子どもの水の事故が必ずと言っていいほど報じられます。子どもの事故に詳しい、小児科医 山中龍宏先生は、海や川、プールで遊ぶときはライフジャケットの着用が必須と言います。ライフジャケットの必要性や選び方・着用のポイントについて聞きました。
今年の夏も、浮輪をつけていた4歳の子が海で流されるなど水の事故が多発!
2022年7月、小学生の男の子が滝つぼ付近で溺れ、助けに入ったパパが亡くなるという痛ましい事故が起きました。ママも助けに入って溺れて、救急搬送されています。滝は、前日の雨で普段よりも増水していたようです。
また同じく7月に、4歳の男の子が海水浴場で浮輪をつけて遊んでいたところ、波にさらわれて流され、サーファーに助けられたという報道もありました。
こうした水の事故は、毎年後を絶ちません。
山中龍宏先生が理事長を務める、NPO法人Safe Kids Japanでは、2020年3月6日より、子どもたちのライフジャケット着用を拡大することで、多くの水の事故が防げると考え『ライフジャケット着用義務化プロジェクト』を立ち上げました。
「プロジェクトのきっかけとなったのは、やはり海や川、池、用水路、プールなどで溺れて、重大な障害を負ったり、亡くなる子どもが後を絶たないことです。
世界では、毎年推定23万6000人が溺れており、2021年4月の国連総会での採択により毎年7月25日は“世界溺水防止デー”と宣言されました。
しかし子どもたちを溺水から守るための考え方は国によって異なります。たとえばタイでは、子どもたちが外で遊んでいるときに水路に落ちて溺れないように、子どもたちを預かる保育園の建設が有効と考えられています。
そのように国によって状況も異なるので、日本は日本独自で対策を考えていく必要があります。その一つが遊泳時のライフジャケット着用の義務化です」(山中先生)
日本では、遊泳時のライフジャケットは義務化されていませんが、海外では義務化されている国もあります。
「欧米やアジアの一部では、遊泳時のライフジャケット着用義務や、ライフジャケット着用に関するガイドラインを設けたりしています。またライフジャケットについても、遊泳時に特化した安全基準を国や自治体が定めているケースもあります。
そのためNPO法人Safe Kids Japanでは、12歳以下に対して国の認定を受け、かつ国際基準を満たす遊泳用ライフジャケットの着用の義務づけなどをめざして、同プロジェクトを立ち上げて活動しています」(山中先生)
海、川、プールだけでなく家庭用のプールでも溺れて救急搬送されるケースも
ライフジャケットを着用したほうがいいのは海、川、プールだけではないと山中先生は言います。
「東京消防庁の救急搬送データを見ると、毎年のようにビニールプールで溺れる事故が発生しています。搬送数は次のとおりです。
2018年 5人
2019年 4人
2020年 9人
家庭でのビニールプールは浅いから大丈夫なのでは!? と考えるママやパパもいるかも知れませんが、子どもはわずか10cmの深さでも顔が水についたままだと溺死します。口と鼻が水につかれば呼吸ができず、その状態が5分以上続くと亡くなったり、助かっても脳に後遺症をもたらすおそれがあります。
家庭だと「電話が鳴った」「宅配便が来た」などで、子どもから目を離しがちなので、ビニールプールで遊ばせるときもライフジャケットを着用させたほうが安全です。
また水の中にもぐったり、泳ぐ練習をすることもあるでしょうが、そういう場合は、ライフジャケットを着用していると浮いてしまうので着用は不要です。その代わり、子ども用のプールなどでママやパパがしっかり見てあげてください」(山中先生)
ライフジャケットの安全基準・桜マークって知っている?
ライフジャケットは、安全性を第一に考えて選ぶことが大切。ライフジャケット選びのポイントは次のとおりです。
●国土交通省が試験を行って安全基準への適合を確認した証しの桜マークがついている
●体に合ったサイズである
●十分な浮力がある
●股の下にベルトがついている
桜マーク
「通販サイトなどを見ると、さまざまなライフジャケットが販売されていますが、桜マークがついているものが安全です。
2018年2月、国土交通省は原則、小型船舶の船室外に乗船するすべての人に国の安全基準への適合が確認されたライフジャケットを着用することを義務づけました。その安全基準の証しとなっているのが桜マークです。
桜マークがついているライフジャケットは、
●非常に見やすい色である
●小児用は浮力5kg以上、体重15kg未満の小児用は浮力4㎏以上
●顔を水面上に支持できる
●ライフジャケットに笛がひもで取りつけられている
などの安全基準が設けられています」(山中先生)
また山中先生は、子どもの体に合ったサイズなども重要だと言います。
「子ども用だと少し大きめを選ぶママやパパもいるかも知れませんが、ライフジャケットは体に合ったサイズを選んでください。大きいサイズだと、水に入ったときに首が引っ張られるようにして浮いてしまいます。股ベルトがないと脱げてしまうことがあるので、必ず股ベルトがあるものを選びましょう。お店で実際に試着してから購入したほうがいいです。ライフジャケットは、大型スポーツ用品店などで購入できます」(山中先生)
ライフジャケットを初めて着用するときは、まずは子ども用プールで練習することが必要です。
「ライフジャケットを初めて身に着けると、着心地が悪かったり、思うように動けないため嫌がる子もいます。そのため、まずは子ども用プールでライフジャケットに慣れるように練習させてください。いきなり海や川で着用するのはやめましょう」(山中先生)
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
山中先生は「子どもの事故を防ぐとき『親が目を離さないように』とよくいわれますが、100%目を離さないのは現実問題として難しいです」と言います。
とくに水の事故は、ママやパパが目を離したすきに起きます。またママやパパがそばにいても、急に深みにはまったりして防げないこともあります。悲しい事故を防ぐためにもライフジャケットを着用しましょう。
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