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「いつもと違う、何か違う」と病院を転々。1才3カ月、急激な体調の悪化で医師からは「重症」だと言われ…【不全型川崎病体験談】

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森下美玖ちゃん(仮名・7才)は、生後10カ月のときにBCGの痕が赤く腫れるなど、川崎病のような症状が現れたものの診断はつかず、1才4カ月のとき冠動脈瘤(りゅう)があることが判明。心臓の手術が必要と診断されました。手術のために転院することを決めた1才6カ月までの経緯について、両親の恵里さん(仮名・42才)と和彦さん(仮名・47才)に聞きました。

(上の写真は、大学病院に入院中の1才4カ月のとき。重度の貧血状態だったため輸血を行いました)

BCGの接種痕が赤く腫れ目が充血。でも熱はないので川崎病ではないと…

10カ月のときBCGの痕がこんなに赤くなりましたが、熱は微熱程度で元気もありました。

森下美玖ちゃんは恵里さん・和彦さんの2人目の子どもです。4才差のおにいちゃんが帝王切開で生まれたため、美玖ちゃんは予定帝王切開となり、2015年2月に体重3170g、身長48㎝で元気に生まれました。妊娠中と出産時は何の問題もなく、誕生後もすくすくと大きくなっていました。
生後10カ月のある夜、美玖ちゃんの腕のBCG接種痕が赤く腫れ、目が充血していることに、恵里さんが気づいたそうです。

「上の子が1才でRSウイルス感染症になったとき、『川崎病の疑いがある』と病院で言われたことがありました。結果的には川崎病ではなかったのですが、そのときの経験で、川崎病という病気があることは知っていました。ただ、娘の様子を見たときには、川崎病とは結び付いていなかったんです。どうしたんだろうと症状をネットで検索し川崎病がヒットしたとき、川崎病がどのような病気なのかはすぐに理解できました。
でも微熱程度で元気もあるから違うのかな…とも思いました」(恵里さん)

「私自身が3才で肺炎になったときも、川崎病の疑いがあると言われたそうです。私も川崎病ではなかったのですが、川崎病は心臓に後遺症が出ることがある怖い病気だと母から聞いていたので、BCGの接種痕の腫れに気づいた翌日、妻が近くの公立病院に美玖を連れて行くことになりました」(和彦さん)

川崎病は、①発熱、②両側眼球結膜の充血、③口唇の紅潮、いちご舌、④発疹(BCG接種痕の発赤を含む)、⑤四肢末端の変化、⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹という特徴的な症状があり、5つ以上の症状が当てはまったら川崎病と診断されます。でも、当てはまるものが4つ以下の不全型といわれる川崎病の症例もあります。

美玖ちゃんはBCG接種痕の腫れと結膜の充血がありましたが、発熱はしていなかったとのこと。受診した病院ではどのような診断だったのでしょうか。

「『川崎病っぽい症状があるけれど、熱がないから違う』とのことでした。心配だったので、翌日近所の個人小児科医院も受診したのですが、同じ診断でした」(恵里さん)

「実際、その後すぐにBCG接種痕の腫れと目の充血は消え、元気になりました。年明けに長野の妻の実家に遊びに行ったときも、とてもはしゃいでいました。そんな娘の姿を見て、『川崎病じゃなくてよかった』とほっとしたのを覚えています」(和彦さん)

眠れないほどせきが出るように。何度も検査した末、僧帽弁に問題があると判明

その後もとくに気になる症状はなく、何の心配もない生活が続きました。ところが、1才3カ月になった2016年5月に、急に息ができないほどのせきが出るようになったのです。

「近所の耳鼻科を受診したところ、鼻水がのどに落ちてせきが出ているとのこと。でも、眠れないほどせきが出るため、翌朝近所の小児科を受診しました。やはり風邪との診断で、せきと鼻水を止める薬を処方されました。『これだけ元気に泣いているから大丈夫でしょう。ただ原因がわからないので、明日も来てください』と言われ、翌日もその小児科へ。前日と同じ診断でしたが、『明日も来てください』と言われ、それを5日間繰り返しました」(恵里さん)

毎日小児科に通ったけれど、症状はよくならなかったのですね。

「横になるととくにせきがひどくなり、全然熟睡できないんです。絶対におかしいと思い、10カ月のとき受診した公立病院に電話で相談しました。対応してくれた看護師さんが『お母さんが、いつもと違う、何か様子が違う、と感じるんだったら、何かあるかもしれないから明日来てください』と言ってくれ、翌日受診しました。

公立病院の診察で、心雑音があることがわかり、胸部レントゲンを撮影しました。問題になるほど大きな変化はないけれど、3日後に再度様子を見せることになりました」(恵理さん)

そして3日後の診察では、次に心エコーと心電図をとる必要があるから、そのためにさらに3日後に来院するように言われたそうです。

「ところがその日の夜、診察してくれた先生から電話がかかってきたんです。院内カンファレンスの結果、別の検査も必要ということになったらしく、3日後ではなく翌日検査に行きました。そのときの心エコーで血液の逆流が認められ、僧帽弁(心臓にある4つの弁の1つ)に問題があることがわかりましたが、小児の心臓病に詳しい大学病院の先生が来る5日後まで、詳しいことは持ち越しになりました」(和彦さん)

「血液検査の結果、心不全を診断するNT-proBNPという値が上限125のところ娘は5833。明らかに異常なのに入院できないんだ…と、とても心配でした。でも、熱はないし確かに元気そうには見えました。すぐ抱っこを求めてくれるけれど、兄と楽しそうに遊んでいましたし…。
ところが、5日後の診察の前のその週末に、おしっこの量が極端に少なくなってしまい、土日とも公立病院の救急外来へ。でも、『診察が控えているから様子を見ましょう』と言われ、帰されました。心臓の専門の先生の診断を待つしかない状態でした」(恵里さん)

大学病院で心臓の手術が必要と診断。この病院では実績のない手術なので、手術をする病院を必死に探すことに

大学病院に入院中の1才5カ月の美玖ちゃん。心臓の状態をよくするための薬を、両腕から点滴で入れていました。

恵里さんと和彦さんは、大きな不安を抱えながら大学病院の先生の診察を受けました。先生からの第一声は「重症なので、私のいる大学病院に入院してください」というもの。その日中に入院することになりました。

「大学病院で行った詳細なエコー検査の結果、右冠動脈に1センチ程度の瘤(りゅう)が見つかりました。その影響で心臓の右側の動きが悪くなり、左心室の入り口にある僧帽弁も閉鎖不全を起こしていました。冠動脈瘤ができた原因は川崎病が強く疑われるものの、10カ月のときの症状は発熱がなかったため決定打にはなっていないという見解でした。
そして、僧帽弁の障害を治すには手術が必要だけれど、この大学病院では虚血障害からの僧帽弁の手術の実績はないとのこと。他病院で手術を行った場合も、その後のフォローはこの病院でしてくださるという説明を受けました。

説明は何とか冷静に聞こうと努めました。でも、病院からの帰宅後は涙が止まりませんでした。『私たちが今やらなければいけないのは、美玖の手術をお任せできる病院を一刻も早く探すこと』と、どうにか気持ちを切り替えて、情報収集に力を注ぐことにしました。娘が1才4カ月のときのことです」(和彦さん)

和彦さんは少しでも多くの情報を集めるために、Facebookに美玖ちゃんの状態を詳しく書き込み、公開しました。

「有益な情報をたくさんいただくことができました。集めた情報を精査し、検討した結果、東海地方にある子ども専門病院がいいのではないかということになりました。実際に執刀する先生から2時間説明を受け、『美玖ちゃんを家に帰してあげることがわれわれの使命です』という言葉を聞き、この先生に美玖をお任せしようと決めました。妻も同意見でした」(和彦さん)

「僧帽弁の働きが悪くなり、血液の逆流が高度になった結果、心不全が進行して肺に水がたまったことが、止まらないせきの原因だったそうです。大学病院には3カ月入院し、利尿剤、強心剤、末梢血管を拡張する薬などの点滴治療を受けました。また、輸血も行いました。僧帽弁閉鎖不全で血液が逆流したことにより、赤血球が壊れて溶血を起こし、重度の貧血になっていたからです。
小さな両腕に点滴の針が入ってる姿はとても痛々しかったです。生後10カ月にBCGの痕が赤くなった時点で『川崎病ではないか』ともっと強く訴えていたら、こんな大変なことにならなくて済んだんじゃないか…と自分を責めずにはいられませんでした。

でも、実はせきが出始めたころ、私は退職前で有給休暇を消化中だったんです。普通に働いていたら、『なかなかよくならない』と思いながらも、こんなに頻繁に病院に連れて行けず、もっと状態が重くなっていたかもしれません。私が自由に動ける時期に症状が現れたのは、偶然ではないような気がしました。そこまで思いいたったとき『私たちはついてる!美玖は大丈夫!!』と自分に言い聞かせていました」(恵里さん)

【益田先生より】少しでも川崎病を疑う所見があった場合、小児科医は心エコーの実施を検討することが重要

2年に1回実施されている川崎病全国調査では、川崎病の約20%は不全型川崎病であることが報告されています。厳密には、4症状以下の川崎病=不全型川崎病というわけではありませんが、川崎病の主要症状が少ない川崎病が存在するということがポイントです。臨床の現場でも、主要症状が少ない、症状があっても弱いときには、この経過は川崎病?ウイルス感染症?と診断に悩むことはしばしばあります。
不全型川崎病の中には診断がつきづらいものもあるため、川崎病を少しでも疑う所見があった場合には心エコーを行い、心臓に後遺症がないかを評価する必要があります。

お話・写真提供/森下恵里さん・和彦さん 取材協力/川崎病の子供をもつ親の会 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

監修/益田博司先生

川崎病のような症状が現れたけれど一度は元気になり、6カ月後に冠動脈瘤ができていることがわかった美玖ちゃん。美玖ちゃんを少しでも早く楽にしてあげたい一心で、ママ・パパはさまざまな行動を起こしました。

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