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小児救命救急センター24時【急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)】

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せきがどんどんひどくなり、よだれをたらしてのどが痛そうな様子が見られ…

 明け方近い深夜にホットラインが鳴り響き、「オットセイが鳴くようなせきが出て苦しがっている1才6カ月の男の子を搬送したい」と連絡があった。ほどなく到着し、母親にしがみつくようにして抱かれた男の子の顔色は発熱しているわりには少し青白く、よだれをたらして少し息苦しそうに肩で息をする様子が確認できた。

 母親に抱っこしてもらったまま診察を行うと、吸気性呼吸障害(きゅうきせいこきゅうしょうがい(息を吸うときに呼吸が苦しそうな状態))と吸気性の肺雑音が聞こえた。息を吸うときにゼイゼイといった音がするクループ症候群にしてはよだれが多く、呼吸が苦しそうなので、"急性喉頭蓋炎"かもしれないと考え、母親から話を聞いた。「昨日の夕方から熱が出て、せき込みが夜の間にどんどんひどくなりました。普段はあまりよだれが出ないのに、よだれをたらしてのどが痛そうに見えたので、不安になって救急車を呼んだんです」。

 熱性けいれんを起こしたことがあるので予防接種はあまり受けておらず、ヒブワクチンも注射していないとのこと。もしもの場合の呼吸停止発作に備えて管を入れて気道を確保し、人工呼吸や酸素吸入の準備をして、点滴と採血、感染症の有無を調べる血液培養検査を行った。すぐに抗菌薬(こうきんやく)を注射して、のどの腫れを調べるための喉頭高圧X線検査を男の子を泣かせないように慎重に行ったところ、鼻に続く上気道(上咽頭腔(じょういんとうこう))の拡大と嚥下(えんげ)のときに気管にふたをする働きをする喉頭蓋の腫れが顕著であり、急性喉頭蓋炎と診断した。直ちに呼吸心拍を調べるなどの各種モニタリングを行いながら、麻酔科医にも連絡し、集中治療室での管理を行うこととした。スタッフのあわただしい動きや真剣で神妙な顔に、母親が不安を覚えて、「大丈夫でしょうか? どんな病気なんですか?」と立て続けに質問してきた。

これ以上のどの奥が腫れると呼吸停止の可能性が…!


 高熱、咽頭痛(いんとうつう)、オットセイが鳴くような乾いたせき、よだれの増加、息を吸うときに苦しそうな吸気性呼吸障害X線結果などから、二次的な合併症を引き起こす病原菌であるインフルエンザ桿菌(かんきん)タイプbによる急性喉頭蓋炎という重篤な疾患の可能性が高いことをていねいに説明した。これ以上、喉頭部分が炎症で腫れると呼吸が止まることがあるので厳重な管理が必要で、一刻も早く集中治療が必要なことを理解してもらった。

 集中治療室に入って抗菌薬を投与した結果、夕方にはだいぶ呼吸が楽そうになった。この時点で呼吸停止の危険性はなくなったと判断して、母親に水分などを与えていいことを伝えた。2日後、血液培養検査から予想どおりにインフルエンザ桿菌タイプbが検出された。1週間は抗菌薬を投与して、血液検査などの異常がないことを確認すれば退院できること、ヒブワクチンで防げる病気であることを、入院3日目に母親に説明すると、ようやく笑顔が戻った。「かかりつけ医がワクチンをすすめてくれたのに、熱性けいれんが怖くて受けなかったんです…。今後はかかりつけ医と相談して、ワクチンは全部受けます」と、力強く言ってくれた。

【急性喉頭蓋炎とは?】
乳幼児期にゼイゼイといったオットセイが鳴くようなせき(またはケンケン)が見られるときはウイルス感染によるクループ症候群が多いが、よだれが多く出る場合は急性喉頭蓋炎の疑いがあるので緊急受診を。呼吸しにくそうなのが息を吸うときか吐くときかを観察し、医師に伝えて。

■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。

【市川先生から…】
ヒブ(インフルエンザ桿菌タイプb)による感染症はワクチンで防げます。熱性けいれんや食物アレルギー(卵白アレルギー)があっても接種は可能です。自己判断せずにかかりつけ医と相談して接種しましょう。重篤な疾患だからこそ予防接種が必要になります。

イラスト/にしださとこ

【お知らせ】
市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくださった「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で17年間212回続いた人気連載でした。2018年10月市川光太郎先生がご逝去され、連載は終了となりました。市川先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます(構成・ひよこクラブ編集部)。

※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。

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