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日本の粉ミルクの原料が外国産なのはなぜ? 高品質のミルクを安定供給するためには

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若いアジアの母親が赤ちゃんにミルクを与える
●写真はイメージです
itakayuki/gettyimages

2022年2月、アメリカで粉ミルクを飲んだ赤ちゃん4名が細菌感染症を発症し、うち2名が死亡したというニュース報道がありました。赤ちゃんの成長のために、粉ミルクは製造過程も調乳方法もとくに安全に気をつけなくてはならないものです。日本で粉ミルクができるまでのことについて、日本の粉ミルクメーカーの代表的存在である明治のニュートリション開発部の深澤朝幸さん、乳幼児マーケティング部の江原秀晃さんに話を聞きました。

赤ちゃんの口に入るミルクは安心・安全でなくてはならない

――2022年2月にアメリカの医薬品大手アボット・ラボラトリーズ社の粉ミルクを飲んだ赤ちゃん4名が細菌感染症を発症し、うち2名が死亡し、同社は粉ミルクの生産を中止、製品を回収したそうです。この細菌感染症はどのようなものでしょうか。

深澤さん(以下敬称略) この事故はアボット社の粉ミルクを摂取した赤ちゃんがサカザキ菌とサルモネラ菌に感染したとの報告があり、粉ミルクの中にサカザキ菌が確認されたというものです。サルモネラ菌は食中毒と関連してよく知られていると思います。サカザキ菌は自然環境中にも見られる菌ですが、乳児が感染すると非常に重篤な感染症を起こしてしまうことがあり、とくに注意が必要といわれています。

――このような事故は日本でも起こりうることでしょうか。

深澤 WHO(世界保健機関)/FAO(国連食糧農業機関)が作成した乳児用調製粉乳の調乳に関するガイドラインの中で、70度以上のお湯で調乳することでサカザキ菌のリスクを著しく低減できるとされており、厚生労働省のホームページでも紹介されています。
日本国内で販売されている粉ミルクはこのガイドラインに基づき、70度以上のお湯で調乳することを商品パッケージなどに明示しています。また、明治の粉ミルクは、出荷前の製品にサカザキ菌やサルモネラ菌の混入がないことを検査で確認しています。ただ、出荷時の製品にこれらの菌が混入してなくても、開封後の環境からの病原微生物の混入のリスクもあるので、必ず70度以上で調乳してほしいと思います。

日本の粉ミルクの原料は外国産だと知ってた?

――日本で粉ミルクを販売するためには、どのような衛生的な基準が必要なのでしょうか?

深澤 日本で粉ミルクを製造販売する上では、2つの法令を満たす必要があります。1つは食品衛生法に基づいた乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)、もう1つは健康増進法に基づいた特別用途食品に関する表示許可基準です。乳等省令は牛乳、乳製品、粉ミルクなどについての成分規格や製造方法を定めたものです。乳等省令では育児用の粉ミルクは「調製粉乳」と定義されています。
特別用途食品の表示許可基準では、乳児用調製粉乳について、成分や表示の決まりごとが規格化されています。

また2018年の8月にはこの2つの法律が改正されて、現在は液体ミルクも製造販売できるようになりました。
液体ミルクは滅菌済みで調乳が不要であり、環境からの微生物の混入リスクが少ないことからも安全性が高いと言えます。前述のWHO/FAOが作成した乳児用調製粉乳の調乳に関するガイドラインでも、滅菌された液体ミルクには病原菌が存在せず感染のリスクがないと記載されています。

――明治「ほほえみ」は原材料名に「乳糖(アメリカ製造)」とあります。日本の粉ミルクは、国産牛乳からは作られていないのでしょうか?

江原さん(以下敬称略) 食品表示は最も使用量の多い原料から順に表示する決まりがあり、さらに原料原産地表示制度に基づいて原材料がどこの国で作られたかを提示することになっています。
アメリカ製造の乳糖を使用しているのは、高品質な粉ミルクを安定して供給するためです。品質も量も安定的に入手できるという理由でアメリカ製造の乳糖を選択しています。

――消費者からすると原材料も国産のものがいいのかな、と思ってしまいますが…

江原 粉ミルクに関していうと、私たちは「安全・安心な原料であること」と「安定供給できること」を重視して原料を選択しています。生乳(搾取したままの牛の乳)を使用した製品は国産のものの割合が多いですが、粉ミルクのように加工する製品は、安定供給の面でいうとアメリカやオセアニアの原料を使用することが多いです。それは、日本のほかの粉ミルクメーカーも同様だと思います。

粉ミルクはどうやって作られるの?

――原材料から赤ちゃんが飲む粉ミルクになるまでの流れを簡単に教えてください。

江原 粉ミルクの場合ですと

①原材料を調合する
②遠心力で異物を取り除き、機械で清浄化する
③高温で殺菌・濃縮する
④熱風で乾燥させて顆粒(かりゅう)状にする
⑤シフターというふるいにかけ、顆粒の大きさをそろえる(異物の混入を防ぐため)
⑥衛生処理をした缶に付属のスプーンを投入し、粉ミルクを充填する
⑦缶の底板をかぶせて長期保存のための窒素を注入し、密封する
そして、異物、へこみ、密封性、重量をチェックし、完成となります。

粉ミルクを作る埼玉県春日部工場は、窓が1つもなくレーン自体もカバーで覆われていて、すべての工程を自動化しているので人の手に触れることがありません。作業員が入場する際にも、防じん作業着を着用しエアシャワーをするなど、異物が入らないように徹底しています。製造の各種工程では定期的に検査をするほか、栄養成分検査、微生物検査などを行い徹底的な品質管理をしています。

――明治では粉ミルクの成分を母乳に近づけるために調査をしているそうですが、どのような調査をしているのですか?

江原 明治では、粉ミルクの一つ一つの成分を母乳に近づけ、母乳で育つ赤ちゃんの成長を目指す「母乳サイエンス」に取り組み続けています。これまでに、6000人以上のママの母乳を分析する「母乳調査」を実施し、40年以上にわたり「明治ほほえみ」だけを飲んで育った赤ちゃんの「発育調査」を実施してきました。「母乳調査」は1979年、1998年~1999年、2012年~2014年の3回にわたって行ってきました。
さらに「発育調査」では、明治の粉ミルクだけを飲んでいる赤ちゃんの1才までの成長を調査し、母乳で育った赤ちゃんと同じように発育・発達していることを確認しています。この2つの調査結果をもとに、赤ちゃんにとって最良の栄養である母乳をお手本に、粉ミルクの栄養設計をしています。

――アメリカのアボット社の件ではアメリカのミルク市場の半分近い供給を担っていたことなどの理由で、深刻なミルク不足が起こったそうです。日本ではミルク不足にならないためにどのような対策をしていますか?

江原 粉ミルク・液体ミルクは供給責任のある商品です。赤ちゃんの成長を支えるミルクが不足する事態は避けなくてはならないと考えています。明治としてはたとえば製造工場が被災した場合も供給責任を果たせるよう、工場の回復まで供給できるくらいの一定の在庫を確保しています。製品だけでなく原料や包材なども同様です。また、粉ミルクは埼玉の春日部、液体ミルクは群馬の伊勢崎の2カ所で製造していて、いずれかの工場が被災しても生産できるようにリスクを分散させています。

お話・監修・画像提供/株式会社明治 深澤朝幸さん、江原秀晃さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

共働き家庭の増加などに伴い、2019年に発売された液体ミルクの需要も増えてきているそうです。液体ミルクについて消費者からどんな声が届いているか聞くと「以前は使い方などの問い合わせが多かったですが、最近はサイズのラインアップを増やしてほしい、毎日使いたいから安価にしてほしい、もう少し軽い容器にしてほしい、など、日常的にもっと便利に使いたいという声が増えていると感じています」と江原さんは言います。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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