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乳幼児の急病、多くは感染症が原因。乳幼児を感染症から守るために大切な3つのこと【小児科医】

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子供外遊び
●写真はイメージです
maroke/gettyimages

新型コロナウイルスの感染が収まらない中、乳幼児のRSウイルスや手足口病などの感染症も流行し、今年の秋以降の感染症についても心配に思うママやパパも多いのではないでしょうか。2022年8月に行われた「1〜3才児の元気なカラダづくり」に関するセミナーで、和歌山県立医科大学小児科学講座 徳原大介先生が「乳幼児期の元気な体づくりに必要なこと」について講演しました。江崎グリコ主催のセミナー内容をリポートします。

乳幼児の急病の多くは感染症が原因

乳幼児は昼間は元気だったのに夜に熱を出したり、嘔吐したりと、体調が急変することが多いもの。徳原先生によると、乳幼児の急病の原因の約6割が感染症によるものなのだとか。

「上の図は私がいる和歌山市にある夜間・休日応急診療センターで、昨年1年間に5才未満の乳幼児が受診した原因を円グラフにしたものです。約半数が呼吸器感染症、次に多いのが胃腸炎。つまり感染症が6割以上ということ。このことからも、感染症は乳幼児の急病で最も多い原因であると言えます」(徳原先生)

乳幼児は1年を通してさまざまな感染症の流行の中にいる

保育園など集団生活が始まり周囲とのかかわりが増えると、感染症にかかることも多くなります。乳幼児の代表的な感染症の流行しやすい時期を示したのが上の図です。

「RSウイルスは数年前までは秋〜冬にはやりやすいといわれていましたが、ここ最近は6月から9月ぐらいに流行しています。手足口病は夏ごろ、インフルエンザは冬ごろ、胃腸炎は1年の中で何度か流行が見られます。つまり、乳幼児は1年を通して何かしらの感染症の流行の中にいて、ママやパパは常にその感染症のケアに配慮しなければならない状況にあると言えるでしょう。

RSウイルスやインフルエンザウイルス、胃腸炎の原因に多いノロウイルスやアデノウイルスなどの病原微生物は、子どもの呼吸器粘膜や腸管粘膜に感染して病気を引き起こします。子どもの感染症をどう予防するかを考えると、病原微生物が感染しないように粘膜の防御能力を高めることが大切であるとわかります」(徳原先生)

1〜3才は自分で十分な抗体を作れない、免疫発達期にあたる

病原菌が乳幼児の呼吸器粘膜や腸管粘膜に侵入しないように働くのが免疫です。免疫は「全身性免疫」「粘膜免疫」の2種類に分けることができます。「全身性免疫」は私たちの全身を流れる血液に含まれている抗体によって体を守る役割をしています。

「血液に含まれる全身性免疫では、その大部分はIgG抗体と呼ばれる抗体です。そのほかにIgM抗体や、IgA抗体というものもあります。
生まれたばかりの赤ちゃんの血液には、ママの胎盤を介してもらったIgG抗体が非常に高い濃度で含まれています(上の図の赤い線)。しかし、それは生後段々と低下し、赤ちゃんは自分でIgG抗体を産出するようになります(上の図の緑の線)。この、移行期間である生後3カ月〜6カ月は最も血中のIgG抗体の濃度が低い時期といわれます。上の図にあるように、乳幼児期、とくに1〜3才は十分な抗体が産生できない免疫発達期にあります」(徳原先生)

さらにもう1つの「粘膜免疫」は、腸管粘膜で主に分泌型IgA抗体と呼ばれる抗体が働き、病原微生物などの侵入を阻止しているのだそうです。

「腸管の中に病原微生物が入ってきたとき、分泌型IgA抗体が粘膜の表面で病原菌やウイルスと結合し、あるいは病原菌やウイルスが持っている毒素を無効化して病気を引き起こさないように阻止する働きがあります。
しかし赤ちゃんの腸管粘膜は未成熟で、分泌型IgA抗体の産生量が低いため、これを補うのに重要なのが母乳です。中でも赤ちゃんの生後数日間に分泌される初乳には、非常に高い濃度の分泌型IgA抗体が含まれています。新生児期の赤ちゃんは、ママの母乳からもらう分泌型IgA抗体によって、腸管でのウイルスや細菌感染などから守られています。ただ、生後しばらくすると母乳からのIgA抗体の濃度も徐々に低下していきます。乳幼児期の腸管粘膜免疫組織は発達の途中で弱いため、さまざまな感染症にかかるリスクがありますが、年齢が上がるにつれて小腸が成長することで、粘膜免疫組織も強くなっていきます」(徳原先生)

バリアー機能を高めるためには、食べる、寝る、遊ぶことが大切

乳幼児の免疫機能を高めるためには「よく遊んで体を動かし、たっぷり寝ること、そしてしっかり栄養を摂取することが大切です」と徳原先生は言います。

「私たちの健康のために必要な三大栄養素と呼ばれるのがタンパク質、脂質、炭水化物です。この栄養素をしっかりとれていると、体のエネルギー源となり、脳を働かせ、運動ができます。体の細胞が活動し、代謝を行うためにも必要です。感染症をブロックする粘膜免疫組織がしっかりと機能するためにもエネルギーが必要です。

中でもタンパク質は、体内でアミノ酸に分解されたあと、筋肉や組織を構築し、抗体や酵素を作る材料となります。さらに粘膜免疫組織の発達や、その組織が分泌する分泌型IgA抗体の産生、そして血液中のIgG抗体の産生にも重要な役割を果たします。

この三大栄養素が適切に摂取できているかは、母子健康手帳の標準身長体重曲線で簡単に調べることができます。子どもの身長や体重の数値を書き込んで線でつないでみたとき、体重が曲線に沿って伸びていればエネルギーやタンパク質の摂取量に問題はないと考えられます。一方、体重がなかなか増えなくなると、身長も伸びなくなります。体重、身長の伸びが横ばいになっているときは、食事の内容を見直す必要があります。お近くの小児科の医師に相談することをおすすめします」(徳原先生)

離乳食が始まったら、三大栄養素以外にもさまざまな栄養をバランスよくとることが大切です。

「鉄、カルシウム、ビタミンDなどは、子どもの成長に大事ですが、母乳には少ないことが知られているため、生後9カ月以降の離乳食やフォローアップミルクなどでしっかり補うことが大切です。これ以外にも、ビタミンAが変化したレチノール酸やオメガ3脂肪酸なども粘膜バリアーを強化することがわかっています」(徳原先生)

免疫機能を高めると注目されている成分「MFGM」とは?

近年、発達期にある子どもの免疫機能を高めるのに役立つと注目されている成分が、牛乳に含まれる「MFGM」というものなのだそうです。

「MFGM(Milk Fat Globule Membrane:乳脂肪球膜)は母乳や牛乳など、哺乳(ほにゅう)類の乳に含まれる成分です。乳に含まれる乳脂肪は、大部分は球状をしています。その乳脂肪球を覆っているのがMFGMという膜です。MFGMは、消化管や脳の発達にもつながるスフィンゴ脂質や、大腸の炎症を抑制するリン脂質といった複数の成分から成り立っています。近年、これらMFGMを構成する成分の働きによって粘膜バリアーを強化する作用があるとわかってきました。さらに、このMFGMを含むミルクを乳幼児に投与したところ、感染症によって発熱する頻度が減少したという研究報告もあります。食事からとる栄養のほかにMFGMを含む食品を取り入れることでも、免疫機能を効果的に高め、丈夫な体をつくることにつながるでしょう」(徳原先生)

取材協力/江崎グリコ 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

お話・監修・図版提供/徳原大介先生

病原菌やウイルスに対して、免疫機能がまだ十分でない3才くらいまでの子どもは、手洗いなどの日ごろの感染症対策も大切ですが、まずは睡眠・食事・運動による健康な体づくりが大切です。免疫機能を高める栄養素を取り入れることも活用しながら、感染症対策をしてみてはいかがでしょうか。


●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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