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55歳で突然2児のパパになり、8歳娘と2人暮らしに。「人生が圧倒的に面白くなりました」漫画家・渡辺電機(株)さんインタビュー

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note連載『父娘ぐらし 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』第18話より

55歳で16歳年下のシングルマザーと初の結婚、その日から二人の娘のパパになった漫画家の渡辺電機(株)さん。その後長男が生まれ、還暦を迎えた現在は3歳から12歳までの3人の子育てに日々奮闘しています。

2022年4月に発売された単行本『父娘ぐらし 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』(KADOKAWA)は、当時いろいろな事情から、当時8歳の「アユちゃん」と東京で2人暮らしを始めたころの思い出をつづったコミックエッセイです。発表直後から「心が温まりました」「思わず泣きました」と大きな話題になり、現在も渡辺さんのnoteで連載が続いています。渡辺さんに、あらためて当時のお話を伺いました。

「しんどいんだったら、うちに来ますか?」が結婚のきっかけに

『父娘ぐらし 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』第1話より

――結婚のきっかけを教えてください。もともと奥様が渡辺さんのファンだったそうですね。

渡辺 彼女が子どものころに僕の漫画を読んでくれていて、Twitterもフォローしてくれてたんです。ある時、フォロワー全員にフォロー返しをした中に彼女もいて、好きな作家や趣味が同じだったので意気投合して、だんだん交流ができたような感じですね。当時、彼女は前のご主人と結婚していたんですが、3歳くらいだった長女のアユとの生活をつぶやいていて、面白い親子だなあと思いながらやり取りしてました。

 ただ、ご主人のDVとか貧困、アユの発達障害の話など、家庭の深刻な状況も伝わってきました。表で言えないことはDM(ダイレクトメール)で相談に乗っていたんですが、もう環境をリセットしたい、でも仮に離婚できたとしても先行きが真っ暗だということを聞いて、「そんなにしんどいんだったら、うちに来ますか?」みたいな話をしました。

――奥様は当時大阪にお住まいでしたが、結婚の話が出るまでお会いしたことはありましたか。

渡辺 2年くらいやり取りをしていて一度、僕が参加している同人誌の即売会に母子で会いに来てくれたことがありました。まだアユが4歳のころかな。アユは挨拶もない段階で僕が広げている同人誌を指さして「これなに?」「これは?」って矢継ぎ早に聞いてきて、いちいち答えてたら「ふーん」って隣のサークルにサッと移って、おもちゃをいじりはじめたので彼女が慌てて止めていて。ああこの子か、面白いなと思いました。

 その後に前の旦那さんとの離婚が成立して、結婚するまでは子どもたちに親しんでおこうと、僕が定期的に大阪に夜行バスで通って会うことになりました。最初のころは子どもと初めて接するから相当神経を使って、ポケットにたくさんお菓子を仕込んでいったんですけど、そんなに食いついてくれなくて。彼女に「この子たち、そういうの食べ飽きてますよ」って言われて「ああ、そうなんだ…」としょんぼりしました(笑)。

 当時、僕が大阪に引っ越すことも考えました。ただ、元旦那さんが来るかもしれないというのと、東京の僕の両親がかなり高齢だという問題があって。親に事情を説明したら「(大阪に)行きなさい」と言ってくれたんですが、迷った末に「悪いけど、東京に来てよ」と上京してもらうことになりました。

緊張をほぐすために常に冗談を言っていた

「父娘ぐらし」第1話より。アユちゃんはママと離れて、渡辺さんと期間限定で2人暮らしに。

――奥様が仕事の都合でなかなか大阪を離れられず、アユちゃんが転校後に早く学校になじめるようにと、新学期の4月からしばらく東京で父娘2人暮らしを始めた話が「父娘ぐらし」に描かれています。2人暮らしはいろいろと気を使ったそうですね。

渡辺 気を使うし、周りの目も気になりますし。最初の2、3か月は僕がみるみるやせ衰えていって、近くに住む母親に心配されました。食べ物も、何がアユに合うのか本当に分からなくて。奥さんから好物は聞いてたんですが、子どもの好みってアップデートが早いからもう好きじゃなくなってたりするんですよね。いろいろ出しては失敗し、出しては失敗してました。

 アユも2人暮らしになって、僕に嫌われたくない気持ちがあるのかいろいろ我慢しているんですよ。それが分かったんで、つらいなと思いました。だから常に冗談を言ってましたね。「安心しろ、アユよりもパパはもっとバカだからな。高校まで0点を取っていたんだ」「おれは中学2年までずっとおねしょしてたんだ。大丈夫」みたいな話をして、よく気持ちをほぐしてました。

――保護者会やPTAなど、学校にもしょっちゅう通われていましたね。

渡辺 行かなきゃいけないものだと思って行ったら、“来たよ…!”みたいな感じで周りにびっくりされました(笑)。PTA総会っていう、PTA役員しか出なくていいものにも行ってたんですけど、根が真面目なのでどこまで手を抜いたら分からなくて。

 でも、アユは発達障害のこともあって、いろいろと大変な子だったので、なるべくぴったり学校に張り付いていたほうがいいなと思いました。アユの友達からも情報が欲しいので、なるべく子どもたちの間にもガンガン入っていって。先生ともできるだけ連絡を密にして、学校に顔パスで入れるくらいになりましたね。

「来てくれてありがとう」という気持ちです

渡辺電機(株)さんのTwitterより。今でもアユちゃんとは仲良し。

――その後、奥様と下の妹さんも東京に来て一緒に住むことになりましたが、離れた土地から母子3人を受け入れて生活するのは、かなりの覚悟だったのではないかと思います。

渡辺 まあ、それまで僕本当にだらだら生きてきたので。いろんな人生の岐路で消極的なほうを選択したこともずいぶん多くて、この結婚を見送る選択肢もあったんですけど、それはそれで一生モヤモヤするんだろうなと思ったし、それよりは「面白いほうがいいな」というのはやっぱりありました。

 漫画にも少し書きましたけど、新キャラが続々現れてクリアしていくゲームみたいなもんだなと。ゲームというには背負ってるものが大きいのでそんな言い方はアレなんですけど。ただ、圧倒的に人生が面白くはなりましたね。

――今のアユちゃんの様子はいかがですか?

渡辺 アユは発達障害の症状があまり目立たなくなって、元気に中学校に通ってます。思春期になったので距離感に気を付けていて、「中学に入ったら1回は嫌われるんじゃないか。つらいだろうな」と覚悟してるんですけど、今のところないですね。学校から帰ると必ず仕事してる僕のところに来てだらだらおしゃべりしていて、僕の冗談にもパーンとツッコミを返してくるし、親子仲はだいぶいいほうだと思います。

――アユちゃんにとっても、渡辺さんと一緒に暮らせたのは良かったですね。

渡辺 「救い出した」とかいう感覚はないですけどね。彼女たちはどうか分からないけど、僕は「来てくれてありがとう」という気持ちがあります。独身時代は1日中誰とも口を聞かないのが当たり前の日々で、この先そんな面白くもなく(人生を)フェイドアウトしていく準備を始めるころかなと思っていたのが、一気に「ここから」みたいな感じになって、1日中常に誰かに何か言ってないといけない生活になりましたから。

 子育てが終わるころにはこっちの人生が終わるのかな。アユには常々「せいぜい、あと20年の付き合いだからな」って話はしてるんですけど、静かな老後はないなと思ってます(笑)。

渡辺電機(株)

東京都出身。明治大学在学中の1980年代半ばより、複数のペンネームでマイナー誌の仕事をする傍ら、石ノ森章太郎の仕上げスタッフに参加。1991年『クソゲー戦記』月刊コミックコンプにて初連載。主な作品に『ダンジョン退屈男』『土星のプリンセス』『はたらくねこ』『クソゲー星人』『(株)~かっこかぶ』『ゾンビな毎日』など。2022年4月、エッセイ漫画『父娘ぐらし』(KADOKAWA)発売。

渡辺電機(株)さん note

渡辺電機(株)さん Twitter

(取材・文 武田純子)

父娘ぐらし 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話

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