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第2子妊娠中にストレスから大出血。夫のDVから命をかけて逃げたあの日【体験談・専門家監修】

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病院で病気で横たわっているアジア人女性。
●写真はイメージです
wutwhanfoto/gettyimages

閉ざされた空間の中でパートナーから受ける暴力、DV。被害者は、日常的に身体的・精神的な暴力を受けることで、洗脳状態に陥りやすく、なかなか逃げることができないともいわれます。
富田ミキさん(仮名・40才)も、夫からの執拗(しつよう)な暴力を受け続け、心身ともに追い詰められていた1人です。夫と長男との3人の生活で苦しみを感じながらも、逃げ出すことができないでいました。
しかし、あることをきっかけに、彼女は家庭内暴力からやっとの思いで抜け出すことができたのです。

予期せぬ第2子妊娠に希望を託すも・・・

ミキさんは、結婚直後から元夫や義両親から、日常的に叱責や罵倒など精神的なDVを受け続けていました。まだ幼い息子をささいなことで殴ったり蹴ったりする夫から、なんとか息子を守りながら、ひたすらに耐える日々。その苦しさをだれにも打ち明けることができなかったと言います。ある日、事情を知った職場の上司に「あなたが受けているのはDVだ」と指摘され、ミキさんは進められた精神科病院に通い始めました。

それでも長年一緒に過ごし、息子の親でもあるパートナーと別れる勇気が出なかったと言います。そんな中、思いがけず第2子を妊娠していることがわかりました。

「夫が妊娠を望んでいたかどうか、それはわかりません。ただ私は、もしかしたらこの子を妊娠・出産することで、家族を新しく作り直せるかもしれない、とわずかな希望にすがるような思いでした」(ミキさん)

しかし、その期待は打ち砕かれます。

妊娠を伝えると、夫は「あ、そう」と冷たく言い放ち、つわりがひどく食事を作れないミキさんを責め立てました。あげく「妊娠なんかうそだと思っていた」などと言い、ミキさんを心底絶望させたのです。毎日のようにささいなことで責められ、反省文を強要されるという日々が続いていました。

「『もう生きていなくてもいいかな』と思うようになりました。暮らしていたマンションから飛び降りたらすぐに楽になれる、と朝ベランダに立っていたことも一度は二度ではありません」(ミキさん)

なんとかとどまることができたのは、息子とおなかの赤ちゃんの存在があったから。自分が亡くなったら、息子を、暴力を振るう夫に託すことになってしまう、それだけは絶対に避けたいことでした。

ストレスから大出血・・・命の危険を感じて

そんなある日、妊娠3カ月目での通勤途中に異変を感じます。急いで駅のトイレに駆け込むと、大量の出血がありました。真っ赤な血を見ながら意識を失いそうになる中で、ミキさんは「終わった」と感じたと言います。

「全部終わった。この子の命も、私の人生も終わった」と。

周囲の人たちに助けられ、病院に緊急搬送され、奇跡的におなかの赤ちゃんは無事でした。ただ子宮にはとても大きな血腫ができていて、それが出血の原因でした。

「処置を受けながら、そのとき、私と赤ちゃんが無事だったのには何か意味があるのでは、と思いました。もうこれ以上は無理だ、どうにかしなくてはいけないというおなかの赤ちゃんからのメッセージなのだと感じたのです。このまま夫の住む家に戻ったら、いつか死んでしまう、とそのときにやっと強い決心がわいてきたんです」(ミキさん)

それまではまわりからも逃げることをすすめられても、踏ん切りがつかなかった、とミキさんは言います。これはDV被害者によくみられることで、時がたてば、いつか相手が変わってくれるだろうという幻想を抱き続けてしまっていたのです。

「でもそれは間違いなんだ。子どもを連れて実家に戻るという選択をしようと、病院の処置室のベッドの上で、かたく決心をしました」(ミキさん)

着の身着のまま、息子を連れて高速バスで実家へ

その日、病院を出た足で、ミキさんは息子を保育園に迎えに行きます。そしてそのまま、実家のある関西方面へ向かいました。おなかの子と息子を連れて、急に実家に戻ったミキさんを、両親は驚きながらも暖かく迎え入れてくれました。

「これまで夫との間にあったことは、詳しく話してはいなかったけれど、幸せな結婚生活でないことは両親も察してくれていたようでした。『これからはうちの子として、みんなで子どもたちを育てていこう』と言ってくれたんです」(ミキさん)

日常的なストレスのために巨大化していた子宮内血腫は、安心できる場所で過ごすことで数カ月で自然に小さくなっていきました。とにかく、無事出産することだけを目標に、日々を過ごそうとしていました。

離婚のために大きな代償を払って

これで一件落着と行けばいいのですが、離婚に至るにはまだまだ長い月日がかかります。

ミキさんがいなくなったことに気づいた夫は、激怒して何度も電話をかけてきました。夜中に何件も留守電を残し罵倒するなど、執拗に連絡を取ろうとします。
一方で、ミキさんの実家に訪ねてくることは一度もありませんでした。 ところが出産予定日に帝王切開で長女を出産したその日、産後1時間もしないうちに、突然夫が病室にやってきます。

「その場で『離婚条件書』を突きつけられ、『退院の日に判を押して渡せ』と言われました。出産直後でぼーっとする頭で、その紙を眺めると、そこには、『精神的ストレスをかぶった慰謝料を請求する』といったとんでもない主張が記載されていました。」(ミキさん)

まともな対話はできないと弁護士に相談し、直接のやり取りをせずに済むようにしたものの、夫からは毎晩のように電話やメールがあります。夜中のうちに非通知で100件以上無言のメッセージを残すなどの、陰湿な嫌がらせも続きました。

「結局、正式な離婚に至るには3年かかりました。最後は、彼の主張する慰謝料を支払うことで、ようやく私たちは元夫から離れることができたのです」(ミキさん)

自分を取り戻すために、少しずつ歩んでいく日々

その後の実家での暮らしは、とても穏やかなものです。これまでささいなことで、父親から殴る蹴るの暴力を受けていた長男も、優しい祖父母に囲まれて、少しずつ落ち着きを取り戻していきました。
「子どもたちも、祖父母からの愛情をたっぷり受けて元気に育ってくれている」とミキさんは言います。

一方、ミキさんはDV被害によるPTSDの症状に悩まされるようにもなりました。元夫との暮らしをなんとか生き延びようとしていたときには気づかなかったストレスが、安心できる環境に身を置いたことで、表に出てきたのです。

「夫になじられた光景がフラッシュバックし、料理など、かつては好きだったことができなくなることもあります。食事のたびに、箸の使い方が悪いとたたかれていた息子も、しばらくの間、箸やフォークが使えなくなり、手づかみで食事をしていました。今でもときどき、父親からの暴力を思い出すのか、感情の起伏が激しくなるときがあります」(ミキさん)

ミキさんたちは、まだ、受け続けてきた暴力からの回復の途中にあります。適切な治療やカウンセリングを受け、自分を取り戻す過程をゆっくり歩いて行かなくてはならないのです。
それは時にとてもつらいことですが、それでもあのときに、思いきって離れられて本当によかった、とミキさんは言います。

「今ではほかのシングルマザーの人たちと交流を持つ機会も得て、つらい経験を分かち合える仲間にも出会いました。こうなったのは私が悪かったんだ、と思い込んでいた気持ちが、仲間の励ましによってそうじゃないんだと思えるようにもなりました。
もし、今、苦しんでいる人がいたら、『今みている世界がすべてではないよ』と伝えたいです。あのころの私と同じように、動けなくなっている人がいたら、『勇気を持って一歩踏み出せば、くすんだ世界から抜け出せる日がきっと来る』と知ってほしい」(ミキさん)

現在、ミキさんは自らの体験を講演などでシェアしながら、孤立化しているシングルマザーの助けになれたら、と活動を続けています。閉じられた場所で、暴力を受けている人が、1日も早く救われることを願いながら。

【吉岡マコさんより】心身を追い詰めるDV、まずは自分をケアしてあげて

配偶者から暴力を受ける日常は、じわじわと人の力を奪います。深い傷を負いながらも逃げられないのはそのためです。なんとか逃れられても、元配偶者に見つからないよう息を潜めて生活しなければならない。まずは逃げるという行動を起こした勇気をたたえたいです。ゆっくり時間をかけて傷を癒やし自分らしさを取り戻していってください。治療やカウンセリングなど専門家の力も大いに借りましょう。傷が深くて体験を言葉にできないときもあるかもしれません。そんな時は、身体をケアするところから始めてもいいでしょう。ヨガなどでじっくり自分の身体を感じることで自分を大切にする感覚を取り戻せます。瞑想も心を安定させるのに効果的です。

お話/富田ミキさん(仮名) 監修/吉岡マコさん 取材協力/NPO法人シングルマザーズシスターフッド 取材・文/玉居子泰子、たまひよONLINE編集部

家庭内暴力は、たとえそこから抜け出すことができても、関係を完全に断ち切り、心身を回復させるには時間がかかることもあるとミキさん体験談から伝わってきました。弁護士や心理カウンセラーなど、専門家の手を上手にかりながら、まずは周囲に味方を作っていくことが本当に大切なことのようです。

吉岡マコさん(よしおかまこ)

PROFILE
NPO法人「シングルマザーズシスターフッド」代表理事。東京大学で身体論を、同大学院生命環境下学科で運動生理学を学ぶ。1998年に出産後の経験から産後ケアプログラムを開発。NPO法人「マドレボニータ」を設立し、産後ケアの普及と啓発に尽力した。2020年12月、同代表を退き、シングルマザーのセルフケアとエンパワメント支援に専念するため、「シングルマザーズシスターフッド」を創設。 著書に『産前・産後のからだ革命』(カドカワ・ミニッツブック)『みんなに必要な新しい仕事』(小学館)。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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