「自慢投稿にイラッと…」20〜30代ママがはまりやすいSNSの危険とは?
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街頭でもニュースでも“SNSで話題の…”というキャッチフレーズがおなじみの昨今。ママもSNSを見ることが日常ではありませんか? でも、SNSには危険な落とし穴があって、とくに『Instagram』は、ママの心と体を蝕む危険度が高いとか…。その真相を解き明かすべく、メディア情報リテラシーなどを専門とする駒谷真美先生に聞いてみました。
流行語“インスタ映え”を生みだした『Instagram』がヤバい!?
ママにも人気の『Instagram』は、写真の見栄えのよさを示すコトバ“インスタ映え”を生み出し、『2017年ユーキャン新語・流行語大賞』を受賞するほどの白熱ぶり。でも、SNSの中でもっとも心の健康に害を与えるという調査結果も。いったい、それはどういうことなのかを考えていきます。
発信はお手軽だけど、望まない情報を受信しがち
英国王立公衆衛生協会調査2017によると、『Instagram』『Twitter』『Facebook』『Snapchat』『YouTube』の中で、『Instagram』は人間の心の健康にマイナスであることが発表されています。不安や心配、睡眠障害、うつ、取り残されることへの恐怖などを人に与えるようです。
「『Instagram』は、情報の送り手と受け手の間に温度差があります。送り手にとっては、写真1枚に“ハッシュタグ”や短文だけで、インパクトのあるメッセージが発信できるお手軽ツール。たくさんの文字で伝えるよりも手間がかからない分、深く考えずに発信しがちです。一方の受け手は、“ハッシュタグ”で検索しても、望まない情報に出くわすことが。それによって、否定的感情が掘り起こされるのではないでしょうか。もともと人間は、否定的感情を持ち合わせていますが、きっかけがなければ表出しません。でも、『Instagram』は、だれかの自慢投稿を否応なしに見せつけられるので、モヤモヤやイライラを感じやすいのでしょう」
子育てママがSNSにはまるのは時代背景も大きく影響!
「やっと寝てくれた~。ゆっくりSNSでも見ようかな♪」と、わが子が寝たあと、スマホを手に「ほかのママの様子が気になる」「投稿してスッキリ❤」というママも多いことでしょう。そして、「ママ友の自慢投稿にイラッ」なんて感じて後味が悪い思いをすることも…。それは、20~30代のママたちではもはや必然の流れだそう。その理由を解説していきます。
根底には、時代背景や親子関係が!
「20代から30代のママは、倹約的で無茶なことはせず、『みんなと同じ』であることを好む傾向があります。そのため、社会のルールをきちんと守り、自分の親にも反抗しない人が多い世代と言われています。実母の育児観念に違和感があっても受け入れがちで、モンモンとすることも…。そういったストレスを解消する場を探し、『みんなと同じ』ようにSNSを利用するのかもしれません。また、学生時代にiモードが登場するなど、“ガラケー”育ちであることから、『ケータイ世代』と呼ばれることも。また、スマホとSNSが出始めの時期に育ったので、その2つに対する認識が曖昧なままで、深入りしてしまう可能性があります。これも理由の一つとして考えられるのではないでしょうか」と駒谷先生は話します。
心の発達と人生サイクルも関係!?
アメリカの発達心理学者エリクソンの発達段階理論によると、心の発達は老年期まで続き、ママ世代(20~30代)では、親密性(※)の欲求と孤独を感じやすい特徴が。また、人によっては、自分を認めてほしいという欲求も加わるようです。
「この世代特有の心の状態に加え、就職・恋愛・結婚・出産と自分の居場所や社会的立場が目まぐるしく変わる時期。20~30代という短期間で、さまざまな変化が一度に起こるため、ママの心が混乱状態になりやすいのでしょう。その心を落ち着かせたくて、SNSを求めるところもあるのかもしれませんね」
※他者を自分のことのように考えたり、自分の愛情を他者に不安なく分け与えられる心の状態
子育てのイライラはSNSで小まめに発散を!
「ママも人間。完璧な人などいませんから、育児中に『泣きやまなくてイライラする』『パパが助けてくれない』『言うこと聞かなくてイヤだ』などと、否定的な気持ちを持つのは当然でしょう。そんなストレスや自分を認めて欲しい気持ちは、SNSで発散してしまいましょう。小まめなガス抜きは、いいママになるプロセスの1つ。ストレス発散のツールの1つとしてうまく使って。匿名だから気軽に愚痴を言える面もありますが、愚痴を言った本人だと特定されてしまう内容や、他人が特定できるような誹謗中傷は避けましょう。事実を少し誇張した育児自慢でスッキリするなら、それでいいんです」
SNSに疲れたら止めてOK!だれも引き留めません
「ひよこクラブ」本誌調査(※)では、SNSのほかのママの投稿で不快感を覚えた経験のあるママは57%。
「夜遅くまで0歳児を連れて出歩くママ友の投稿に嫌悪感。でも、つき合いがあるから『いいね!』を押しちゃうんです」と語るママも。
『Instagram』で「イヤな思いをしない・させない」ために、心がけておきたいことを紹介します。
※ひよこクラブ読者エディターママ107人のアンケート結果(2017年8月実施)をまとめたものです。
日常生活で1つ楽しみがあれば泥沼にはまらない
「今や、『いいね!』はお金で買える時代です。『Instagram』は単なるコミュニケーションツールの1つで、そこから得る情報は“器械に載せたタダの情報”。それに一喜一憂する価値はないんです。もっとも価値があるのは、五感で触れる日常生活。そこに1つでも楽しみがあれば、たとえ炎上したとしても、泥沼にはまることなく抜け出せます。
情報を『受ける』『使う』ときは、視野を広げてトリの目で精査し、おおらかに構えましょう。
情報を『つくる』『送る』ときは、こまかくじっくりアリの目で確認を。『Instagram』に載せた情報は、だれかがコピーして転送すれば一生消せない“デジタルタトゥー”であることを常に意識して。トリの目とアリの目をバランスよく持てば、『Instagram』もママを助けるツールの1つとなります」
わが子を通じての自慢投稿はハイリスク
「事実を少し誇張したり、脚色することは誰にもありがち。SNSではよくあることです。問題は、自慢の内容・度合い・対象です。自慢があからさまであったり、事実をかなり大げさに表現したり、わが子を前面に出していたら要注意! 炎上のリスクが高くなります。前述のとおり、SNSは情報の『受け手』の否定的感情を強化します。そして、その感情は子どもに向かう。犯罪に巻き込まれるリスクが高くなるので、それはしっかり心に留めてくださいね」
せっかくなら、“インスタ映え”するステキな写真を撮ってアップしたいですよね。でも、アップするためだけに料理をしたり、オシャレなカフェに行くなどしていると、本末転倒になってしまい、ドッと疲れてしまうのではないでしょうか。
「SNSは止めてもいいんです。だれも引き留めないから。いちばん大切なのは、ママと赤ちゃんの生活。目の前で実際に感じることができる幸せです。それを記録に残すという感覚で、ママがSNSを楽しく上手に使いこなせば、赤ちゃんが初めて出会うメディアのよい先生になれます」と駒谷先生。このことを忘れずにSNSを楽しみたいですね。(取材・文/茶畑美治子、ひよこクラブ編集部)
■監修/駒谷 真美先生(実践女子大学人間社会学部人間社会学科教授)
Profile●お茶の水女子大学大学院博士号取得。昭和女子大学人間社会学部初等教育学科准教授などを経て現職。専門はメディア情報リテラシー、メディア社会心理学、ICT教育。最新メディアを活用した実践研究、新旧のメディア様相、乳幼児期から老年期までのメディア意識行動など、生涯発達の観点からメディアの「よろづ」研究に従事。