フランス人の夫と国際結婚。育休3カ月目に「いつ仕事復帰するの?」と聞かれ、日本とフランスの違いを痛感【体験談】
2012年にフランス人の夫と結婚した、レロちひろさん。レロさんファミリーは、2歳、5歳、7歳の3人の娘との5人家族です。レロちひろさんは毎日の子育てを通して、フランスと日本の違いを痛感するそう。フランス式育児アドバイザーとして活躍する、レロちひろさんに話を聞きました。
日本のアニメと文化が大好きなフランス人の夫。結婚したときの約束とは!?
ちひろさんが、フランス人の夫と結婚したのは2012年。ちひろさんが31歳、夫が27歳のときで、出会いは日本でした。
「夫は、日本のアニメや文化が大好きで、日本に住んでいて会社員として働いています。
ある日、友だちの誕生パーティーに招待されて、そのパーティーで夫と出会いました。そして、出会いから3年ほどで結婚しました。
私自身、子どものころから国際結婚に憧れがありました。23歳のときにイギリスに留学して、より “国際結婚っていいな~”と思っていたので、フランス人と結婚することになんのハードルも感じませんでした。文化の違いや考え方の違いも“面白い!”“そういう考え方もあるんだ!”と思っていました。今もその気持ちは変わりません。結婚のときに夫からリクエストされたことはいくつかあり、その中の一つに“仕事を続ける”ということが含まれていました」(ちひろさん)
妻の1年間の育休に、漠然とした不安を抱く夫
ちひろさんが、第1子妊娠中に驚いたのが育休の考え方です。レロさん夫婦は、ずっと日本に住んでいて、第1子を妊娠したとき、ちひろさんは派遣社員として働いていました。
「出産後家にいて3カ月がたったころ、夫から“いつ仕事に復帰するの?”と聞かれました。私は1歳までは育休を取得しようと考えていたのですが、フランスは、生後2カ月から保育園に預けて復職するケースが多いそうです。保育料は所得や家族構成に応じて決まります。フランスは、税金は高いのですが、子育て支援がしっかりしています。
夫は“子どもが生まれても、夫婦で働いて、人生を楽しもう”という人なので、私がこのまま働かなくなってしまうのではないかと不安だったようです。
またフランスは、3歳から義務教育が始まりますが、3歳までは親が子どもを育てたほうがいいといった“3歳児神話”的な考え方はそもそもありません。そのため夫も“早く保育園に預けて復職したら?”と言っていました」(ちひろさん)
妊娠中から、子ども部屋を準備するのがフランス流
フランスは、妊娠中から子ども部屋を準備することが一般的だと、ちひろさんは言います。
「フランス版の母子健康手帳“Carnet de santé”(カルネ・ド・サンテ)をもらうときに、子ども部屋のことを説明されたりします。
子ども部屋を準備する主な理由は3つ考えられます。
ひとつ目は、赤ちゃんでも1人の人間としてとらえ、プライバシーを尊重するため。
ふたつ目は、子どもが生まれても、夫婦やパートナーの関係性を重視するため。フランス人は“子どもが生まれても、夫婦やパートナーならば一緒に寝るもの”と考える人が実に多いです。
3つ目は、親子ともに快適な睡眠環境を整えるためです。フランスでは、赤ちゃんのうちから子ども部屋で1人で寝る練習を始めます。
私たち家族は、日本に住んでいますが、長女の妊娠がわかったとき、夫がまず考えたのが引っ越しです。“子ども部屋がある家に引っ越そう”と言い出して、広めの家を探しました。
ただ住宅事情の関係で、長女には子ども部屋を与えられましたが、二女、三女には専用の子ども部屋は与えられませんでした。そのため二女、三女は1歳までは私たち夫婦の寝室にベビーベッドを置いて寝かせていました。これには夫はなかなか納得がいかなかったようですが、日本の住宅事情ではやむをえないと、最後は受け入れてくれました」(ちひろさん)
日本のアニメを見ていた夫が、サラリーマンの “ちょっと飲んでから帰るね”にあ然
ちひろさんの夫は、日本のアニメが大好きです。しかしアニメを見ていて、日本ではよくある光景に驚くことも。
「夫が驚いたのが、ママが夕食を作って待っているのに、急に会社帰りのパパから電話がかかってきて“ちょっと飲んでから帰るね”というシーンです。そのシーンを初めて見たとき夫は“えっ!? 夕食作って待っているのに信じられない”とあ然としていました。
またパパが、ど~んと座っていて“お~い”とママを呼んだりするシーンも驚いています。
フランスは男女平等の意識が高いので、フランス人の夫からすると、こうした夫婦関係は理解できないのだと思います」(ちひろさん)
それでは、レロさんファミリーはどのぐらい男女平等なのでしょうか?
「フィフティー・フィフティーというよりは、夫の得意なことは任せて、苦手なことは私がしています。
夫は料理が苦手なので、料理は私が担当。その代わり、食器の後片づけや掃除は夫の担当です。
以前“家事も育児も積極的にこなすのはなぜ?”と聞いたことがあるのですが“自分の父親もそうだったから・・・”と言っていました。“男性でも、家事や育児をするのはごく自然のこと”として夫の中に根づいているのだと思います」(ちひろさん)
お話・写真提供/レロちひろさん 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
レロさんのおうちは、家事や育児のルールなどは、夫婦で話し合って決めるそう。「わが家は、私がメインで子育てをし、夫がサブで手伝うというような関係性ではありません。夫婦で家事も子育てもこなします。夫婦で話し合いをしていると、やっぱり夫は男女平等の意識が高いフランスで生まれ育った人なんだ」と実感すると言います。
世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が2022年7月に発表した、男女の格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」によると、フランスは146カ国中15位。日本は116位で先進国の中では最低レベルです。こうした背景も、子育てや夫婦の在り方に影響を及ぼしているのかもしれません。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
レロちひろさん
PROFILE
フランス式育児アドバイザー。2012年にフランス人の夫と結婚。3人の女の子を育てる。会員制のオンラインスクールなどで、フランス式育児の講座を開く。著書『フランス人の赤ちゃんは朝までひとりでぐっすり眠る』(フォレスト出版)は韓国での出版も決定。
『フランス人の赤ちゃんは朝までひとりでぐっすり眠る』
寝かしつけや夜泣きの悩みをフランス流に解決! 親も子どももラクになるフランス式育児の考え方や方法がわかる本。レロちひろ著/1540円(フォレスト出版)