料理が『しんどい』と言えない…手作り=母親の愛情だと思っていた『料理は妻の仕事ですか?』著者・アベナオミさんにインタビュー
中1の長男(豆キチ)、小1の次男(アンチョビ)、年少の長女(モナカ)の3児の母であるイラストレーターのアベナオミさん。かつて手作り料理=母の愛情だと思っていたアベさんが、料理の呪縛から解放されていく『料理は妻の仕事ですか?』という書籍が発売されました。
アベさんに書籍を描いたきっかけや、料理の「しんどい」ところ、書籍を描き終えて学んだことなどを教えてもらいました!
カルチャーショック!料理を『しんどい』と思っていいの!?
――書籍『料理は妻の仕事ですか?』を描いたきっかけは何ですか?
アベナオミ「きっかけは担当編集さんからの『料理がしんどくないですか?』とひと言でした。
アベの母は“ごく稀な超人タイプ”で3食手作りなんて朝飯前で、兼業農家4世代同居の9人家族のためにすごい品数の料理を作っていたんです。そして、その料理が“母からの愛情”だと思っていました」
今日ぐらいはと思いピザを頼んでも……
<母親としての愛情がかけているような気がして胸が痛む>
アベさんの母が手作り料理の“超人”だった
<「母のような母にならなくちゃ…」と思い込んでいた>
アベナオミ「それに比べたら半分以下の品数しか作らない、たまに外食やテイクアウトもしちゃうアベは『母に比べたら楽をしている、家族に愛情を与えてない』と思っていたので、料理を『しんどい』と思っていいの!? とカルチャーショックを受けました。
令和を生きる私たちには、もう母親世代のふつうなんて気にしなくていい。担当編集さんともう1人料理が苦手なママさんを加えて、フードライター白央篤司さんにアドバイスを頂きながら『料理がしんどい』をなくす本を作ろう!と立ち上がったのでした」
家族5人、肉・魚派にわかれている
<家計を考えながらメニューを考えるのつらい……>
――料理をするときに1番苦手な作業は何ですか?
アベナオミ「1番は買い物です。週に2回の買い出しのときは、カートにカゴを2つ、山のように商品を載せながら、栄養バランス・好き嫌い・アレルギー・予算・献立など頭をフル回転させてスーパーの中を歩き回ります。レジを通して、袋詰めして、車にのせて……もうこの時点でヘトヘトです(笑)
わが家は“お魚チーム”と“お肉チーム”に分かれているので、メインはいつも2品。それぞれのメインになる食材を買うのはとても面倒です。帰宅後も大量の品物を仕分けして、収納したり小分けにして冷凍したりしてから、夕飯を作り始めるので、食べ始める頃にはもう瀕死でした……」
大量の買い出し、家族に合わせて調理
<この繰り返しでアベさんの疲労もピークに>
「疲れてるけど料理しなきゃ…」と思ったら
<自然と涙が溢れてしまい、まっすぐ家に帰れなかった>
手の込んだ料理もすぐに食べ切られてしまうときが「しんどい」
――アベさんが「料理がしんどいなぁ」と思う瞬間を教えてください。
アベナオミ「30分〜1時間ほどの時間をかけて作ったごはんが、たった15分〜20分(短い時は10分)で食べ切られてしまうこと。揚げ物や煮込み料理など、掛かった時間と労力に対してのモグモグタイムが短すぎて虚無を感じることがあります……(白目)」
――夫が料理をしないと悩んでいたアベさんですが、料理を少し手伝ってくれるようになったきっかけはありますか?
アベナオミ「この本の企画が立ち上がったときでしょうか。『料理は妻の仕事ですか?』って本を書くんだよ、と伝えた時に『へー』とスルーしているように見えましたが、きっと心に思うところがあったのでしょう……少し手伝ってくれるようになりました。
さらに大きなきっかけは次男のコロナ感染で、ホテル療養になったときですね。私と次男がホテルに行ってしまい、いよいよ自分がしなくては残された子ども2人にご飯を食べさせられない!というのっぴきならない状況が、夫を変えました!」
コロナ療養後に夫が激変
<仕事が忙しいアベさんの代わりに……>
夫が焼きそばを作ってくれた!
<包丁が苦手な夫はカット野菜を駆使>
「栄養は1週間トータルで考えればいい」疲れたときは潔く外注!
――現在アベさんが料理で疲れないために工夫していることと、気をつけていることは何ですか?
アベナオミ「『栄養は1週間トータルでバランスが取れていればいい』と白央さんからアドバイスを頂き、どうしても疲れているときはもうキッチンに立ちません。潔く外注します。お弁当を注文したり、ファミレスのテイクアウト、家族でラーメン屋さんへ……こんなときの方が子どもたちは楽しそうです(笑)」
――書籍を描き終えて、学んだことわかったことがあれば教えてください。
アベナオミ「素直に『しんどい』と言っていいことですね。『料理が今日はしんどい』、『今日はもう疲れてごはんを作るなんて無理』と執筆前はなかなか言えなかったのですが、白央さんの取材と執筆を経て言えるようになりました。『無理なときは無理!』とお財布と夫と相談しながら料理を休めるようになりました」
――最後にたまひよの読者のみなさんとこれから出産・育児を経験するパパ・ママたちにひと言お願いします。
アベナオミ「産前産後は体力的に人生最大の『しんどい』時期、絶対に無理は禁物です。しかし栄養を取るためにもちゃんとごはんを食べなくちゃいけない時期なので、パパのサポートは必須です。私は子どもが生まれたあとは、料理をするハードルが100倍くらい上がったように感じました。そんな時期だからこそ、お互いに素直に気持ちを伝えて、寄り添いながら料理と向きあってくださいね」
かつて母親がしてくれていたように料理を手作りすることが母の愛情だと思っていたというアベナオミさん。確かに家族がいると疲れていても「なるべく毎日料理をして栄養バランスを考えなきゃ……」と体にムチを打ってしまうときもありますよね。しんどいときは『しんどい』と言う、もっと夫にも道具にも外食にも惣菜にも頼っていい。アベさんの書籍『料理は妻の仕事ですか?』は知らないうちにママの肩にのしかかっている荷物をそっと降ろしてくれる一冊になっています。(文・清川優美)
『料理は妻の仕事ですか?』
プロフィール /アベナオミ
中1の長男、小1の次男、年少の長女の3児の母でありフリーランスのイラストレーター。ブログ『うさぎとお絵描き』で日常を漫画にして投稿している。新刊『料理は妻の仕事ですか?』が発売中。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。