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娘が1.5万人に一人の難病「レット症候群」に。日々の成長がうれしかった生後6カ月、できていたはずのおすわり、ハイハイに現れた症状【体験談】

更新

紗帆さんの笑顔が谷岡さんの活動の原動力です

「レット症候群」という病気を知っていますか? レット症候群は、1万人〜1万5,000人に一人の確率で、生後半年〜1年半の主に女の子に発症する、進行性の神経疾患です。今回、お話を聞いた「認定NPO法人レット症候群支援機構」代表理事の谷岡哲次さんの長女紗帆さんにレット症候群の症状が現れたのは、生後6カ月のころでした。しかし当時は、患者数も少なく、診断できる医師も限られていたため、レット症候群と診断されたのはそれから1年以上後のことでした。不安のなか、ネットで紗帆さんと同じような症状を探していた谷岡さんが行き着いたのはレット症候群の子どもをもつ一人のお母さんのブログでした。

前編では、谷岡さんに一人の父親として、娘の「レット症候群」をどう受け止め、立ち向かってきたのかを聞きました。

女の子に発症する「レット症候群」とは

レット症候群と診断された頃の紗帆さん

――― おそらく圧倒的に「レット症候群」という病気を知らないかたが多いと思います。まず「レット症候群」がどんな病気かご説明いただけますか?

谷岡哲次さん(以降谷岡、敬称略):「レット症候群」は、ほぼ女の子のみに起こる遺伝性の神経疾患です。ごくまれに男の子にも発症することもわかっていますが、とても重度だったり、生まれてもすぐに亡くなってしまったりして人数が少ないため、「レット症候群」は女の子の病気といわれているのです。1万人〜1万5,000人に一人の確率で発症するといわれており、日本ではおよそ1,000人という調査データがあります。
※参考:https://genetics.qlife.jp/diseases/rett

多くの場合、生後半年から1歳ぐらいまで普通に成長しているように見えます。しかし、発症すると、それまでできていたことができなくなっていきます。自分の意志に反して手を揉んだり、手を口に持っていったりするなどの動作を繰り返すのも特徴です。

紗帆の場合は、それまでできていたおすわりやハイハイができなくなったりしました。ほとんどの子が話すことができませんし、それ以外にもてんかんがあったり、自閉症の傾向が強かったり、睡眠障害や息を止めたりするなどの行為も見られます。そのうちに背骨が湾曲するなど、さまざまな障害を併発するというのも、レット症候群の特徴ですね。

西洋医学がダメでもきっと他に何か治療法があるはず

家族旅行、思い出の1ページ

――― 紗帆さんの場合、実際に症状が出てから「レット症候群」だとわかるまで長い時間かかりましたが、その間はどんなお気持ちだったのでしょうか。

谷岡:レット症候群の症状が現れ始めたのは、紗帆が6ヵ月ぐらいのときです。最初は、また元に戻るだろうくらいに思っていたのですが、それまでできていたハイハイやおすわりが、どんどんできなくなっていきました。

そんなとき、娘の症状をネットで検索したら、一人のお母さんのブログに行き着きました。そこには、娘と同じような経緯や症状があったので、「レット症候群かもしれない」となんとなく感じていました。

さすがに娘の様子がおかしいとは思っていましたから、何軒も病院を周りました。しかし、実際にレット症候群だと診断されたのは、紗帆が2歳になったころです。

最初の病院では、「何かしらの異常があって小脳の働きがちょっと悪いようだが、リハビリすれば良くなるかもしれない」と言われました。それから毎日、訓練のために家のリビングでハイハイさせましたが、距離は日に日に短くなるばかり。不安はありましたが、それでもまだリハビリや薬でなんとかなるだろうと思っていました。

その一方で、ネットには、「レット症候群は治療法のない難病だ」と書いてあるのを見て、ものすごくショックを受けていたのも本当です。

――― さまざまな葛藤があったと思うのですが、診断後にどんなことをお考えになりましたか。

谷岡:レット症候群が難病で治らない病気だと知ったとき、妻の落ち込みがひどかったので、できるだけサポートしようと思いました。

子どもに対する思いは同じでも、父親と母親では表現も接し方も違うので、妻と喧嘩することもありましたね。

西洋医学では治療法がなくても、鍼治療などの東洋医学なら治る可能性があるのではないかと、さまざまな治療方法を模索していました。気を紛らわせるではありませんが、そうすることで自分自身もなんとか持ち堪えていたという感じですかね。

妻と二人で娘を介護する毎日。家族としての絆は深まっていく

――― 紗帆さんの介護は、谷岡さんと奥さまと分担されているのでしょうか。

谷岡:現在15歳になった紗帆は、日中は支援学校に行き、そのあとはデイサービスに通う毎日です。昨年は、内臓に負担がかからないように、湾曲してきた背骨の手術を行いました。

紗帆はどちらかというと症状が重いので、今は一人で座ることもできず、食事は流動食やペースト状のものでないと飲み込めません。なので、家でご飯を食べさせるのも、お風呂に入れるのも、妻と二人で協力しながらやっています。

成長するにつれて体も大きくなり重たくなってきますから、娘をお風呂に入れるのは主に僕の役目です。そのあと妻にバトンタッチして、体を拭いたり、髪を乾かしたり、そんなふうに分担しています。

私の場合、ありがたいことに職場に理解があるので、遅くまでの残業はせずに帰宅、娘をお風呂に入れることができます。娘の病気がわかってからは家庭で過ごす時間が長くなったこともあって、以前より家族の絆が深まっているなと感じています。


文/米谷美恵 取材/米谷美恵、たまひよ編集部 写真提供/谷岡哲次さん

もし、2歳というかわいい盛りに、突然、わが子が治療法のない難病と診断されたとしたら……。もし、私だったら、必死になって治療法を探すでしょうか? 神様に「自分の命と引き換えに子どもを助けてほしい」と祈るでしょうか? それともなすすべもなく、ただ泣きわめくだけでしょうか? インタビューの中で「子どもに対する思いは同じでも父親と母親では表現も接し方も違う」と谷岡さんが話すように、父親として、紗帆さんの難病を受け入れ、共に生きる覚悟をしました。その覚悟が、同じ「レット症候群」の子どもをもつ人たちに広がって、今、大きなウェーブを起こしています。このウェーブが広がることでいつか「レット症候群」が治る病気にとなりますように。

後編では、谷岡さんが「NPO法人 レット症候群支援機構」を立ち上げた理由、そして目指すべき姿について聞きました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることをめざしてさまざまな課題を取材し、発信していきます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

谷岡哲次さん

PROFILE
2002年 大阪府門真市の工務店に就職
2011年 2歳の娘がレット症候群という不治の難病である事をきっかけにレット症候群の治療薬開発を目指して研究支援を目的としてNPO法人レット症候群支援機構を設立、代表理事に就任。サラリーマンとの2足の草鞋のスタート。
2013年  国際ソロプチミスト枚方中央「リジョナルプロジェクト国内奉仕先賞」受賞
2017年  京都大学ips細胞研究所倫理審査委員会委員就任
2020年  社会貢献支援財団より社会貢献賞受賞
2022年  時計メーカーのシチズンより市民社会に感動をあたえたとしてシチズンオブザイヤーを受賞

認定NPO法人 レット症候群支援機構

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