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女の子に発症する治療法のない難病 “レット症候群”。「娘の笑顔のために。根本的な治療法が確立するその日まで」父親の挑戦

更新

家族の愛情に育まれて15歳の誕生日を迎えた紗帆さん

大切な娘さんが根本的な治療法のない難病「レット症候群」と診断された谷岡哲次さん。その事実と葛藤しながらも、受け入れ、自分のできることを模索した谷岡さんは、レット症候群の啓発と治療法を確立するための開発や研究を支援するためのNPO団体を立ち上げました。“Care Today,Cure Tomorrow”(今日はできるだけ療育をして、明日は根本的な治療を目指そう)をスローガンに、これまでバラバラだった、患者と研究者、そして企業を繋ぎます。いつか、レット症候群の根本的な治療法が確立する日が来ることを信じて。

後編では、谷岡さんが「NPO法人 レット症候群支援機構」を立ち上げた理由、そして目指すべき姿について聞きました。

活動目的は「レット症候群」の研究支援と啓発活動。患者のコミュニティ化も

レット症候群の治療法、薬の開発のために行なっているさまざまな支援活動

――― 谷岡さんが「NPO法人 レット症候群支援機構」を立ち上げた経緯を教えてください。

谷岡哲次さん(以降谷岡、敬称略):娘の紗帆が「レット症候群かもしれない」と疑い出してから正式に診断されるまで約半年かかりました。その間、東洋医学を試してみたり、お祓いをしてみたり、「娘が良くなるのであれば」とどんなことでもしました。

そんな時、「もしレット症候群に治療の可能性があるなら論文があるはず」という主治医の言葉に、それまで誰かに頼ってばかりだったことにハッとして、自分に何ができるのか冷静に考えるようになりました。

そして、海外にレット症候群の研究支援をしている家族団体があるとことを知りました。そのことがNPOを立ち上げるきっかけになりました。

――― 現在の「NPO法人 レット症候群支援機構」の具体的な活動内容を教えていただけますか?

谷岡:それまでも家族同士の交流を目的としたレット症候群の家族会はありましたが、私たちは主に研究支援を活動目的としています。現状ではレット症候群についての啓発活動をしながら、研究支援のための寄付活動や研究者と患者の距離を縮めるための活動もしています。

これまで研究というと、大学の研究室や製薬企業に国が補助金を出すというかたちで、そこに患者は入っていませんでした。しかし、それはちょっと違うのではないかと考え、患者を中心としたコミュニティを作り、研究者たちと繋がることも私たちの活動目的です。

薬や治療法の開発のために、コミュニケーションアプリ「レッコミ」をリリース

患者と研究者、企業の協力関係を推進していくこともNPO活動の目的の一つ

――― 今後どのようにNPO活動を展開していこうと考えていますか?

谷岡:最近は、患者会などに登録しなくても、インターネットで「レット症候群」に関する情報を探せますし、英語がわかる人は、SNSなどを通じて海外の患者さんと繋がりをもてるようになってきたこともあって、患者会に登録するかたは減る傾向にあります。

しかし、レット症候群の治療薬の開発や研究をするためには、患者の情報はなくてはなりませんし、患者と研究者、企業の協力は欠かせません。
昨年は、そのためのコミュニケーションアプリ「レッコミ」をリリースしました。
「レッコミ」に登録していただくことで、患者情報の簡易的なデータベース化ができますし、薬や治療法の研究のために患者の症状やアプリ上でとったデータを個人情報は伏せた状態で研究者や企業に提供することができます。

「レッコミ」を通じて、患者と研究者が強固でwin-winな関係になること。また、研究のための支援が集まって、薬の開発に繋がっていけばいいなと思っています。

――― 治療方法がないといわれてきた「レット症候群」ですが、実際に効果のある治療方法が見つかったり、薬が開発されたりしているなどはあるのでしょうか?

谷岡:10年前と比べれば、明らかに研究は進歩していると思います。

海外では、症状の一部を緩和するという評価で最終治験までクリアしたという薬もあります。何とかこういう薬を日本に持ってこられないかと情報を集めています。

日本でも、海外で効果のあった薬と同等の効果が見込める薬を開発するベンチャー企業も出てきています。また、遺伝子治療研究チームへの支援も始めました。

娘の笑顔で、毎日が「うれしい」の連続

紗帆さんの笑顔が家族の元気の源です

――― 活動の原点、活動を通して伝えたいことなどありますか。

谷岡:このような記事で、レット症候群など、世の中にはさまざまな難病があることを知るきっかけになってくれればこんなうれしいことはありませんし、もし支援しようという気持ちをもっていただけたら、とてもありがたいです。

この記事を読んでいるかたのなかにも、もしかしたらお子さんが成長するにつれて、いろいろなことができないと悩むようなことが出てくるかもしれませんが、喋れない、コミュニケーションも取れない娘の紗帆からしたら、できることばかりです。「可能性に満ちあふれている」と思いながら子育てをすれば、ちょっとしたことでイライラしなくなると思います。

元気な女の子なら、15歳にもなると男親を毛嫌いする年頃かもしれませんが、紗帆は僕がどんなにベタベタしても怒りません。話すことができませんから感情は表情から読み取るしか方法はないんですね。でも、「レット症候群」の子は表情がとても豊かで、笑顔が素晴らしいんです。僕も、紗帆の笑顔でもう毎日「うれしい」の連続です。


文/米谷美恵 取材/米谷美恵、たまひよ編集部 写真提供/谷岡哲次さん

たまひよオンラインでの取材を通じて、障がいをもっていたり、難病だったりする子どもの親御さんにお話を聞く機会があります。そのたびにみなさんが強く、子どもへの眼差しがとても優しいことを感じます。人というものは、そんなに強くはないのだと思います。きっと、想像を超えるようなつらい残酷な出来事を、ときには挫折しそうになりながら、それでも、目の前の子どもを愛おしく思う気持ち、子どもの幸せを祈る気持ちで乗り越えて来たから、強く優しくなれたのでしょうか。「どんな子どもの未来も可能性に満ちあふれている」そう話す谷岡さんの眼差しの先にはいつも笑顔の紗帆さんがいて、誰よりも谷岡さんを勇気づけているのだと思いました。


●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

谷岡哲次さん

PROFILE
2002年 大阪府門真市の工務店に就職
2011年 2歳の娘がレット症候群という不治の難病である事をきっかけにレット症候群の治療薬開発を目指して研究支援を目的としてNPO法人レット症候群支援機構を設立、代表理事に就任。サラリーマンとの2足の草鞋のスタート。
2013年  国際ソロプチミスト枚方中央「リジョナルプロジェクト国内奉仕先賞」受賞
2017年  京都大学ips細胞研究所倫理審査委員会委員就任
2020年  社会貢献支援財団より社会貢献賞受賞
2022年  時計メーカーのシチズンより市民社会に感動をあたえたとしてシチズンオブザイヤーを受賞

認定NPO法人 レット症候群支援機構

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